発表

1A-009

愛着不安とDTDDはDaVの先行要因となり得るのか?

[責任発表者] 金政 祐司:1
[連名発表者・登壇者] 荒井 崇史:2
1:追手門学院大学, 2:東北大学

目 的
 内閣府(2018)が実施した調査によれば,交際相手から暴力被害(身体的暴行・心理的攻撃・経済的圧迫・性的強要)を受けた経験があると回答した者の割合は,女性で21.4%,男性で11.5%であり,女性で約5人に1人,男性で約10人に1人がデート暴力(DaV)の被害に遭っていることが報告されている。また,DaVは,関係破綻後のストーキング行為とも連関することを示す研究(Coleman, 1997, Katz & Rich, 2015)も存在し,交際時の,さらに交際後のカップル双方の心身の安寧のためには,いかにDaVのない関係を形成・維持していくかが重要であると言えるだろう。
 これまで愛着不安やDTDD(サイコパシー傾向・マキャベリアニズム・自己愛傾向)といったパーソナリティ特性は,親密な関係における暴力(IPV)を増大させる要因として扱われてきた。愛着不安(Godbout et al., 2009; 金政・浅野・古村, 2017; Ulloa et al., 2014),また,DTDDの中でも特にサイコパシー傾向と自己愛傾向(Carton & Egan, 2017; 金政ら, 2017; Kiire, 2017)が,IPVを増大させることはいくつかの研究において報告されている。しかしながら,それらの研究の多くは,横断研究であり,愛着不安ならびにDTDDとDaV(あるいはIPV)との因果関係については,未だ実証的に明確に示されたとは言い難い。それゆえ,本研究では,愛着不安とDTDDがDaVの先行要因となり得るのかについて,縦断的データを収集し,交差遅延効果モデルを用いてその検討を行う。先行研究で仮定されたように,それらのパーソナリティがDaVを増大させるという因果関係が成立するのであれば,交差遅延効果モデルにおいて,愛着不安ならびにDTDDから間接的暴力加害へのパスは有意となるが,その逆のパスは有意にはならないと考えられる。
方 法
回答者と実施方法―調査会社を利用したWeb調査を実施した。第一波の回答者は,15歳から39歳の調査当時に恋人がいる者,1551名(男性736名,女性815名; フィラー項目に誤反応をした249名は除外)であった。第二波は,第一波の半年後に実施され,第一波の回答者に再度調査の依頼を行った。第二波の回答者667名(男性310名,女性357名; フィラー項目に誤反応をした83名は除外)のうち,関係が継続している者は549名いたが,第一波と第二波で恋人が同一であることを確認するため,双方の調査で回答者に尋ねていた恋人のイニシャルについてのマッチングを行い,その結果,392名(男性152人,女性240人; 平均年齢30.01歳, SD= 6.24; 交際期間44.00ヶ月, SD=44.98)を分析対象とした。なお,調査時期は,第一波が2017年3月,第二波が2018年9月であった。
調査内容―第一波,第二波ともに,1. 恋愛における愛着不安項目(金政, 2006; 18項目,7件法),2. 日本語版Dark Triad Dirty Doze尺度(田村ら, 2015; 12項目,5件法),3. 交際相手への間接的暴力加害の測定尺度(相馬・具志堅・上田, 2007; 6項目, 5件法)-先の半年間の恋人に対する間接的暴力の加害行動を回答,4. 回答者の性別や交際期間といったデモグラフィック項目の測定を行った。
結果と考察
 愛着不安ならびにDTDDと交際相手への間接的暴力加害に関して,変数間の因果関係を明らかにするため,SEMによる交差遅延効果モデルを実施した。なお,その際,両分析において,回答者の性別ならびに交際期間の統制を行った(Figure 1, Figure 2)。
 その結果,愛着不安とDTDDの両モデルにおいて,許容範囲の適合度が示された。第一波の愛着不安ならびにDTDDから第二波の間接的暴力加害に対しては,双方ともに有意な正のパスが示された(β=.18, p<.001; β=.09, p<.05)。しかしながら,第一波の間接的暴力加害から第二波の愛着不安ならびにDTDDへのパスは有意とはならなかった(β=.04, n.s.; β=.06, n.s.)。これらの結果は,愛着不安とDTDDは後の間接的暴力加害を増大させるが,その逆の影響は見られないことを示すものである。つまり,愛着不安とDTDDというパーソナリティ特性がDaVを増大させる先行要因となり得ることが示されたと言える。
(Yuji Kanemasa & Takashi Arai)
*本研究は,平成30-34年度,科学研究費補助金(基盤研究(B),課題番号18H01080)の補助を受けて実施された。

キーワード
愛着不安/DTDD/デート暴力


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