発表

1A-007

新たな向社会的行動尺度作成の試み(1)

[責任発表者] 津川 秀夫:1
[連名発表者・登壇者] 寺田 和永:2, 谷 英俊:3
1:吉備国際大学, 2:広島文教大学, 3:日笠クリニック

 目 的
 思いやり行動や親切に関して,向社会的行動(prosocial behavior)や利他的行動(altruistic behavior)という概念から研究がなされてきた。しかし,これら概念は輸入されたものであり,本邦独自の向社会性を検討する必要性が指摘されてきた(山本・加藤・菅村, 2014)。また,既存の尺度は主にパーソナリティ指標として作成および活用されてきた。そこで本研究は,東洋的思想や価値観を取り入れるとともに行動指標として使用できる向社会的行動尺度の作成を目的とした。
 方 法
対象者:岡山・広島県内の大学生151名(男性36名,女性115名,平均年齢19.29才,SD=1.06)ならびに岡山県の地方公務員63名(男性37名,女性26名,平均年齢41.79才,SD=9.76)。
実施時期:2018年10月~12月。
質問紙の作成:大学教員2名と精神科クリニックの心理職1名(3名とも公認心理師)が作成した。本邦で作成された向社会的行動を測る6尺度(菊池, 1988; 村上ら, 2016; 西村ら, 2012; 小田ら, 2013; 横塚, 1989; 吉村, 2003)の項目に,布施の三種,無財の七施を参考に考案した項目を加えてKJ法をおこなった結果,26項目を選出した。回答形式は,各項目について,この2週間の行動を「よくした(2点)」~「しなかった(0点)」の3件法で回答するものとした。
 結 果
1.向社会的行動尺度の因子分析
 向社会的行動尺度26項目について探索的因子分析(最尤法, プロマックス回転)をおこなった。スクリープロットと固有値の減衰状況から3因子構造が妥当と判断した。そして,いずれの因子にも負荷量が.40以下であった項目および複数の因子に.35以上の負荷量を示した項目を削除し分析をおこなった。その結果,4項目が削除され,3因子22項目が抽出された。
 第Ⅰ因子は「困っている人の話を聞いたり助言したりする」「困っている人の手助けをする」「人が喜んでくれることを進んでする」「自分の知識や情報を人に伝える」「相手の立場に立って行動する」「自分の経験から得た教訓を人に伝える」など12項目からなり,〈親切〉と命名した。
 第Ⅱ因子は「地域や社会のために役立つことをする」「ボランティア活動に参加する」「地域や社会のために力を尽くす」「金銭や食料などを必要としている人に提供する」「ゴミ拾いや清掃などの奉仕活動をおこなう」「有意義な活動をしている人や団体に募金や寄付をする」の6項目からなり,〈社会奉仕〉と命名した。
 第Ⅲ因子は「不機嫌な顔や冷たい表情をしないようにする」「にらんだり冷たい眼差しで見たりしないようにする」「悪口や粗暴な言葉をつかわないようにする」「うそをつかないようにする」の4項目からなり,〈不機嫌の抑制〉と命名した。各因子のα係数は,それぞれ.86,.77,.74,であり,内的整合性のあることが認められた。また,因子間相関は,.16~.46であった。
2.性別による比較
 尺度の各因子得点について性別による比較をおこなった(Table 1)。その結果,〈社会奉仕〉において男性の方が女性より有意に得点が高かった(p<.01)。
3.年代別の比較
 学生,20~30代,40~50代の3群に分け,因子ごとに一要因分散分析をおこなった(Table 2)。主効果が有意であった因子について多重比較検定をおこなった結果,〈親切〉において学生の方が40~50代よりも得点の高い傾向が示された(p<.10)。また,〈不機嫌の抑制〉において40~50代の方が学生よりも有意に得点の高いことが示された(p<.05)。
 考 察
 結果から,〈親切〉〈社会奉仕〉〈不機嫌の抑制〉の3因子からなる向社会的行動尺度が作成された。なかでも〈不機嫌の抑制〉は,本邦独自の文化が反映された新たな因子と考えられる。つまり,ネガティブな感情表出を抑え,粗暴な言動や他人を欺く言動を控えることも,本邦においては向社会的行動に数えられることが示された。また,〈不機嫌の抑制〉は,学生よりも年齢を重ねた社会人において,多くおこなわれていることが示された。

キーワード
向社会的行動/利他的行動/親切


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