発表

3C-005

「いい子」の失敗・挫折経験の認知とストレス対処方略

[責任発表者] 江藤 有里:1
[連名発表者・登壇者] 向山 泰代:2
1:京都府宇治児童相談所, 2:京都ノートルダム女子大学

目 的
 近年,摂食障害や自傷行為などの問題行動の背景として「いい子」であるということが示唆されている。江藤・向山(2019)は「いい子」について,必要以上に周囲に合わせようとする「過剰適応」,自分の意思よりも他者の視点を優先しがちな「他者志向性」,いい子でいるために自身の感情を抑制する「自己抑制」,社交的で周囲から求められることを受け入れ実行する「優等生」という4つの特徴を見出した。
 「いい子」は傷つくことを恐れ,失敗や挫折を極端に回避する傾向があると推察される。本研究では,「いい子」の4つの特徴ごとに失敗・挫折経験とその捉え方,ストレス対処方略を検討し,結果をもとに「いい子」が破綻した際に呈する問題行動への介入や支援の手がかりを得たいと考える。
方 法
1)研究協力者:江藤・向山(2019)の研究協力者(関西圏の四年制大学の学生275名,平均年齢20.57歳,SD=0.68)のうち,女性(N=251)を本研究の対象とした。
2)調査時期:2014年7月下旬から10月上旬。
3)質問紙:①フェイスシート(回答日,年齢,性別),②「いい子」尺度(江藤・向山, 2019):59項目,過剰適応,他者志向,自己抑制,優等生の4下位尺度に対し,「あてはまらない(1)」~「非常にあてはまる(5)」の5件法で回答。③コーピング尺度(尾関, 1994):14項目,問題焦点型,情動焦点型,回避・逃避型の3下位尺度に対し,「まったくやらない(1)」~「いつもしている(4)」の4件法で回答。④過去の失敗・挫折経験:今までに失敗・挫折経験をどの程度経験したか,その中でつらかったことはどの程度つらかったか,その経験をどの程度乗り越えたか,の3つの問いにVisual Analogue Scale(100㎜の線分上に×印)で回答。
結 果
1 「いい子」の特徴別にみた失敗・挫折経験とその捉え方
 「いい子」の特徴ごとに,失敗・挫折経験の程度やその捉え方が異なるか検討するため,「いい子」の下位尺度の得点と失敗・挫折経験の得点との相関を調べた。結果,失敗・挫折経験の程度は,過剰適応r=.14(p<.05),自己抑制r=.14(p<.05)と正の,つらかった程度は,過剰適応r=.18(p<.01),他者志向性r=.16(p<.05),自己抑制r=.17(p<.01)と正の有意な相関がみられた。乗り越えた程度は,過剰適応r=-.25(p<.01)と有意な負の相関がみられた。結果をTable1に示した。
2 「いい子」の特徴別にみたストレス対処方略について
 「いい子」の特徴とストレス対処方略との関連を検討するため,「いい子」の下位尺度を独立変数,コーピング尺度の下位尺度を従属変数として重回帰分析を行なった。結果,情動焦点型は他者志向性(β=.30,p<.01),優等生(β=.19,p<.01)から正の影響が,過剰適応(β=-.34,p<.01)から負の影響が確認された。問題焦点型は,他者志向性(β=.18,p<.05),優等生(β=.28,p<.01)から正の影響が,自己抑制(β=-.18,p<.05)から負の影響が確認された。回避・逃避型については,有意な影響はみられなかった。結果をFigure1に示した。
考 察
 結果より,優等生以外の「いい子」については失敗・挫折経験をつらいと認知していた。特に過剰適応が高い場合,失敗・挫折経験を乗り越えていないと認知することで以後のさらなる失敗や挫折を恐れ,必要以上に周囲に合わせることで適応しようとするのではないだろうかと考えた。
 また,ストレス対処方略については,いずれも消極的コーピング(尾関, 1994)である回避・逃避型への影響は見られず,情動や問題に焦点づける積極的コーピングへの影響がみられた。「いい子」は,問題を先送りにすることや適度なところであきらめるよりも,問題を解決せねばならないものと感じて考え過ぎることがあるかもしれない。
引用文献
江藤有里・向山泰代(2019). Big Fiveとの関連から見た「いい子」の特徴と親からの期待 京都ノートルダム女子大学現代人間科学部・心理学研究科研究紀要プシュケー,18,37-48.
尾関友佳子(1994). 大学生の心理的ストレス過程の共分散構造分析 健康心理学研究,7,20-36.

キーワード
いい子/挫折経験/ストレス対処方略


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