発表

3B-005

攻撃行動について攻撃性と衝動性が持つ予測力の検討

[責任発表者] 三村 遼平:1
[連名発表者・登壇者] 若林 明雄:1
1:千葉大学

序論 攻撃行動は,他の個体に対して危害を加えようと意図された行動であり,攻撃性はその内的過程である.本研究では,認知的制御の欠陥によって表出される直接的攻撃行動を扱った(Duran-Bonavila et al., 2017).よって刺激に対する反応の抑制に関わる衝動性も,直接的攻撃行動に対する予測力を持つと考えられる.本研究では,直接的攻撃行動について,内的過程としての攻撃性と衝動性が持つ予測力を検討した.
 攻撃性の質問紙法による測定では,社会的望ましさに沿った回答が意識的になされることが危惧されている(山脇ら,2013).測定時に意識が介在する顕在的態度と介在しない潜在的態度を攻撃性と衝動性について測定した.これらを用いて直接的攻撃行動の説明モデルを検討した.
方法 分析対象者 千葉大学の学生39名を分析の対象とした(女性: 23名,男性16名; Mage=19.7,SD=1.0). 質問紙 顕在的衝動性をBIS-11で測定した(小橋・井田,2011).顕在的攻撃性を日本語版BPAQ(安藤ら,1999)及び敵意的攻撃インベントリー(HAI; 秦,1990)で測定した. 攻撃性IAT 「攻撃的―非攻撃的」及び「自己―他者」の概念を用いた.各概念に四つの刺激語を用いた.320試行を個人の連合課題の分析に用いた.自己概念と攻撃的概念の連合を潜在的攻撃性として測定した. Go/ NoGo課題 一桁の数字とその着色の組み合わせでGo試行とNoGo試行をわけた.合計96試行におけるFalse Alarm率(以下FA)を個人の潜在的衝動性として測定した(Pandey et al., 2016). 直接的攻撃行動 Point Subtraction Aggression Paradigmを用いた(Cherek et al., 1997).相手と対戦し,できるだけ多くのポイントを獲得するよう教示した.実験の最後に,対戦相手が架空であるとデブリーフィングを行った.「得点の獲得」ではなく,「相手の得点を減らす攻撃」であると教示された攻撃ボタンの総打数を個人の直接的攻撃行動の頻度として測定した. 説明モデル 説明モデル式(1)を定義した.
直接的攻撃行動=A×攻撃性+B×衝動性+C×交互作用+定数項 (1)
 予備実験より,態度の種類に関係なく,攻撃性と衝動性に弱い相関が得られた.よって交互作用も説明変数に加えた.説明モデルの検定にブートストラップ法を用いた.モデルの評価にAICを用いた.
結果 本実験で使用した質問紙の信頼性係数αはそれぞれ,BIS-11(.31),HAI(.84),BPAQ(.67)であった.BIS-11では信頼性が得られなかったため,顕在的衝動性の分析を以降では除外した.
 検定の結果,BPAQ以外の変数の予測力が有意となった(表1).潜在的攻撃性の予測力が最も大きかった(表2).次にAICを用いた説明モデルの検討を行った.直接的攻撃行動の説明モデルは,顕在的攻撃性(HAI)と潜在的衝動性(FA),及びその交互作用が最もよく説明変数として適合していた.説明モデルでは,交互作用の推定量が負となった(表3).
考察 説明モデルでは,攻撃性と衝動性が直接的攻撃行動を予測した.また顕在的攻撃性と衝動性について,検定よりも,説明モデルにおける推定量の方が大きくなった.つまり,攻撃性と衝動性の両者が説明モデルとして同時に考慮された時の方が直接的攻撃行動の予測力が高まると考えられる.以上から,攻撃性だけではなく認知的制御の欠陥が攻撃行動を予測することが示唆された.
主な引用文献 ◆ Duran-Bonavila, S., Morales-Vives, F., Cosi, S., & Vigil-Colet, A. (2017). How impulsivity and intelligence are related to differences forms of aggression. Personality and Individual Differences, 117, 66-70. ◆ 山脇望美・山本雄大・熊谷智博・大渕憲一(2013).攻撃性の顕在的・潜在的測度による攻撃行動の予測 社会心理学研究,29,25-31.

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