発表

3B-003

感覚処理感受性と抑うつ傾向における因果関係の推定
2時点の短期的縦断データを用いた検討

[責任発表者] 矢野 康介:1,2
[連名発表者・登壇者] 遠藤 伸太郎#:3, 坂内 くらら#:1, 大石 和男#:1
1:立教大学, 2:日本学術振興会, 3:国立青少年教育振興機構

目 的
 近年の本邦では,大学生における抑うつなど精神的健康の問題が盛んに議論されてきた。この問題に関連する個人要因の一つに,感覚処理感受性(sensory-processing sensitivity;以下,SPSとする)がある。SPSとは,種々の刺激に対する感覚閾値の低さや反応の大きさ,美的な感受性を表す生得的な特性である(Aron & Aron, 1997;Smolewska, McCabe, & Woody, 2006)。先行研究において,SPSが高い大学生は,高い共感性(Acevedo et al., 2014)などの適応的側面を有する一方で,抑うつなどの健康上の問題を抱えやすいことが指摘されている(e.g., Yano & Oishi, 2018)。
 しかしながら,これらの研究ではすべて横断的なデータを用いており,両者の詳細な関連は明らかとなっていない。そこで本研究では,大学生を対象とした縦断データから,SPSと抑うつ傾向における因果関係について検討することを目的とした。
 
方 法
調査対象者と手続き 首都圏の大学に所属する大学生198名(男性89名;女性109名;平均年齢18.8歳,SD=1.3)を対象に,2回の質問紙調査を実施した(以下,それぞれをTime 1,Time 2とする)。調査の間隔は約3ヶ月であった。なお本研究は,立教大学コミュニティ福祉学部倫理委員会の承認を得て実施された。
調査内容 1)SPSの測定には,HSPS-J19(髙橋,2016)を7件法で用いた。2)抑うつ傾向の測定には,日本語版CES-D(島・鹿野・北村・浅井,1985)を4件法で用いた。
分析方法 交差遅延効果モデル(cross-lagged effects model)を用いて,SPSと抑うつ傾向の縦断的な関連について検討を行った。
 
結 果
 交差遅延効果モデルでは,Time 1における両変数がTime 2におけるそれぞれに関連を持つことを想定して,検討を行った。なお,性別の影響を統制するため,男性を0,女性を1にダミー変数化して,モデルに投入した。分析の結果,モデルは飽和モデルとなったため,有意な関連を示さなかった抑うつ傾向(Time 1)からSPS(Time 2)へのパスを削除したうえで再度分析を行った。最終的なモデルをFigure 1に示した。モデルの適合度を示す各指標は,x2(1)=0.35(p = .55),GFI=1.00,AGFI=.99,RMSEA=.00であり,良好な値が得られた。
  
考 察
 本研究の結果から,SPSから抑うつ傾向に対する正の因果関係が示された一方で,抑うつ傾向からSPSに対する有意な因果関係は示されなかった。これらの結果は,両者の理論的背景から推測される関連性を支持するものである。
 今後は,SPSが抑うつ傾向を高める詳細な機序について知見を積み重ねることにより,高いSPSを持つ大学生の抑うつ傾向の低減を目的とした具体的な支援策の策定に迫っていくことが求められる。
 
引用文献
Acevedo, B. P., Aron, E. N., Aron, A., Sangster, M., Collins, N., Brown, L. L. (2014). The highly sensitive brain: An fMRI study of sensory processing sensitivity and response to others’ emotions. Brain and Behavior, 4, 580-594.
Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73, 345-368.
島 悟・鹿野達男・北村俊則・浅井昌弘(1985).新しい抑うつ性自己評価尺度について 精神医学,27, 717-723.
Smolewska, K. A., McCabe, S. B., & Woody, E. Z. (2006). A psychometric evaluation of the Highly Sensitive Person Scale: The components of sensory-processing sensitivity and their relation to the BIS/BAS and “Big Five”. Personality and Individual Differences, 40, 1269-1279.
髙橋亜希(2016).Highly Sensitive Person Scale日本版(HSPS-J19)の作成 感情心理学研究,23, 68-77.
Yano, K., & Oishi, K. (2018). The relationships among daily exercise, sensory-processing sensitivity, and depressive tendency in Japanese university students. Personality and Individual Differences, 127, 49-53.

キーワード
感覚処理感受性/抑うつ傾向/縦断データ


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