発表

3A-005

タイプDパーソナリティの心臓血管系反応に対する影響
‐受動的対処ストレス課題を用いて‐

[責任発表者] 石原 俊一:1
1:文教大学

 目 的
近年,新たなる冠状動脈性心疾患(CHD)の心理・行動的危険因子としてタイプD パーソナリティ(タイプD)が注目されるようにあった。心疾患患者の心臓死に対してタイプDが運動耐用能の低下や3枝病変の有無などの危険因子よりも大きく関係すると報告されている(Denollet et al.,2008)。タイプDは,①怒り,攻撃性,敵意,抑うつなどのネガティブ感情(Negative Affectivity : NA),②社会的抑制(Social Inhibition : SI)の2つの構成要素からなる。2000年以降,CHDの発症,再発とタイプDとの関連についての研究が増え,新たなパーソナリティの注目されている1つではあるが,ほとんどの研究が心疾患患者を対象とした疫学データであり,CHD発症のメカニズムを検討した研究は,ほとんど認められない。そこで,本研究では,受動的対処事態におけるタイプDの心臓血管系反応におけるDBPを主とする血圧の増加・維持,および心理反応におけるネガティブ感情の増加・維持が予測されることを仮説とし,その検証を目的とした。また,実験前後の気分についてProfile of Mood State(POMS)を用いて感情の状態を測定し,タイプDとの関連性についても検討した。
 方 法
実験参加者:同意の得られた男子大学生109名(平均19.20歳,SD=1.09歳),女性大学生189名(平均19.10歳,SD=0.93歳),計298名(平均19.20歳,SD=0.99歳)に対し,日本語版タイプDパーソナリティ尺度(DS-14)を配布し,回答を求めた。DS-14の各下位尺度の粗点を合計し,それぞれの平均値(NA:14.2,SI:17.4)両方とも+1SDを超えた高得点者をタイプD群として15名(平均19.00歳,SD=1.19歳),-1SDを下回る低得点者を非タイプD群15名(平均19.47歳,SD=0.93歳),計30名(平均19.23歳, SD=1.07歳)を選出した。なお,両群とも心疾患や高血圧傾向のない健常者を対象とした。
倫理的配慮:実験者による研究に関するインフォームド・コンセントを実施し,研究への参加に同意し,同意書に署名した対象に実験および質問紙への回答を求めた。
質問紙:日本語版DS-14(石原・今井・内堀・牧田,2015)および日本語版POMS(横山・下光・野村, 2002)を施行し,それぞれ5段階評定で回答を求めた。
心臓血管反応の測定:心拍(HR),低周波成分(LF),高周波成分(HF)および,LF/HF比については,両前腕部ほぼ中央にディスポーザブル電極(積水化成品工業株式会社製)を装着し,コーリン生体情報モニタ(BP-608 EvolutionⅡCS: オムロンヘルスケア社製)で増幅した心電図を導出した。導出された心電図信号から,オフライン処理によりTonam2C(GMS社製)を用いてHR,LF,HFおよび,LF/HF比を算出した。また,血圧については,トノメトリック法による圧脈波センサを左橈骨動脈上に装着し,コーリン生体情報モニタ(BP-608 EvolutionⅡCS: オムロンヘルスケア社製)により非観血的に1拍ごとに測定した。得られた圧脈波からオフライン処理によりTonam2C(GMS社製)を用いて収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)を算出した。心臓迷走神経興奮のパラメータである圧受容体反射(baroreflex sensitivity: BRS)は,生体情報モニタでBP-608 EvolutionⅡCS:オムロン社製)で導出された心電図波形と圧脈波形をオフライン処理によりTonam2C(GMS社製)を用いて算出した。
手続き:実験参加に関しては実験参加者の同意を得た上で実験を実施した。実験課題は,心的回転課題をコンピュータモニタで提示した。心的回転課題は,事前に予備実験を行い,課題へのモチベーションを高めるとともに受動的対処事態を構成するために,成功率が40%となるよう課題の難易度をコントロールした。モニタ画面の上部に標準図形が,下部にA~Dの選択図形が配置され,標準図形と同様の図形を選択し,手元のスイッチで反応する課題であった。課題は,20試行,約5分間行い,実験参加者の前反応±0秒以内に回答かつ正解した場合に成功とし,その他は失敗とした。その際,できるだけ速い反応をし,正解するよう教示した。課題の正誤は,反応ごとにモニタ表示と効果音でフィードバックされた。5分間のベースライン(BL)測定後,教示を与え,ストレス課題および5分間の回復期を施行した。また,ストレス課題前・後にPOMSへの回答を求めた。
 結果と考察
BL測定の最後の3分間の平均値をBL値とし,ストレス課題,回復期について1分間ごとの平均値(ブロック)を算出し,各ブロックからBL値を減じて変化値を算出した。生理反応ごとに条件を級間要因とし,ブロックを級内要因とした2×30の2要因の分散分析を行った。
その結果,生理指標ではタイプD群と非タイプD群で統計的な差はみられなかったが,心理指標にはタイプDパーソナリティのネガティブ感情の高さと,実験前後の課題の効果がみられた。課題の成功率とSBPの結果から,受動的対処事態は再現できたと考えられる。統計的な差はみられなかったが,タイプD群は自律神経系の機能低下が示唆されるDBPやLF/HF比の心臓血管反応の回復の遅れがみられた。心理指標では,タイプDの特徴と同様にタイプD群はネガティブ感情が高く,ポジティブ感情は低かった。これらの結果から,タイプDは自律神経系の機能低下による回復の遅延およびネガティブ感情の高さが,心臓血管系に悪影響を及ぼし,心疾患発症の危険因子となり得ることが示唆される。
利益相反開示;発表に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはりません。
 (ISHIHARA Shunichi)

キーワード
タイプDパーソナリティ/受動的対処/心臓血管系反応


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