発表

3A-004

決められないと不幸になる?(2)

[責任発表者] 斎藤 聖子:1
[連名発表者・登壇者] 三浦 大志:1
1:杏林大学


目 的
 何かを決定する場面で,決定までにどのくらい時間をかけるかには個人差があり,迷ってなかなか決められない人は「優柔不断」な人と呼ばれる。荒井(1988)は日本における優柔不断は常に悪い意味で使われていると指摘しており,優柔不断は社会的に望ましくない特性という認識であると考えられる。人生は選択の連続であり,良い意思決定を行うことは幸福感に繋がると考えられるが,優柔不断という特性と主観的な幸福度の関連を直接検討した研究は少ない。優柔不断特性と幸福度に関連があるかどうかを検討した三浦(2017)では,日本語版不決断傾向尺度および GPS日本語版と幸福度に負の相関が見られたことから,決められない個人ほど主観的な幸福度が低いことを明らかにした。しかし本邦における優柔不断にはいくつかの側面があることが指摘されており(斎藤・緑川,2016),幸福度に影響を及ぼしている優柔不断特性の側面を明らかにすることは,意思決定における幸福感の向上にとって重要であると考えられる。
 そこで本研究では,優柔不断特性と幸福度に関連があるかを検討する。また決定時の感情や決定後の満足感に関与すると考えられる運に対する認識との関連も検討する。優柔不断な人は主観的な幸福度が低く,運も悪いという認識であることが予測される。
方 法
 参加者:関東地方の私立大学の講義中に質問紙188部を配布し,その場での回答を求めた。欠損値を含むデータを除いた大学生182名(男性51名:平均年齢19.77 歳(SD = 1.21),年齢範囲18 ─ 24 歳)を分析対象とした。
 調査内容:質問紙は次の3つの尺度とフェイスシート(年齢,性別,学年)から構成された。
1.主観的幸福度:「全体としてみて,あなたは現在,幸せです か?」という質問に対して 11 段階 (0: 非常に不幸せ~10: 非常に幸せ) で評定を求めた。
2.運についての認識:「あなたはどの程度運が良いですか?(運の良さ)」という質問に対して5段階(1: かなり悪い~5: かなり良い)で,「運の良さには個人差があると思いますか?(運の個人差)」という質問に対して7段階(1: 全くそう思わない~7: 完全にそう思う)で評定を求めた。
3.優柔不断尺度(斎藤・緑川, 2016): 熟慮,先延ばし,他者参照,不安の4因子を持つ16項目(例えば,「重要なことを決めるとき,些細な問題にこだわり多くの時間を費やす」)に対し5段階で評定を求めた。
 手続き:決断力と幸福度についての調査を行う旨を説明した後に,主観的幸福度,運についての認識,優柔不断尺度の順で回答を求めた。
結 果
 優柔不断と主観的幸福度および運についての認識について

の関連を検討するために,下位尺度である熟慮,先延ばし,他者参照,不安と4つの得点を合計した尺度得点を算出し,幸福度および運についての認識との相関を求めた。その結果,表1に示した通り,尺度得点と幸福度には負の相関が認められた(r= -.17, p< .05)。4つの下位因子と幸福度の関連では,熟慮(r= -.18, p< .05)と不安(r= -.18, p< .05)に負の相関が認められた。また尺度得点と運の良さには負の相関が認められた(r= -.20, p< .01)。4つの下位因子と運の良さの相関では,他者参照(r= -.17, p< .05)と不安(r= -.31, p< .01)に負の相関が認められた。優柔不断と運の個人差には相関は認められなかった。
考 察
 本研究では,優柔不断尺度と主観的幸福度および運に対する認識の相関を検討した。その結果,優柔不断尺度と主観的幸福度の間に負の相関が見られ,優柔不断な人ほど主観的幸福度が低いことが示された。この結果は日本語版不決断傾向尺度と幸福度に負の相関が見られた三浦(2017)と一致する。また優柔不断尺度と運の良さの間に負の相関が見られたことから,優柔不断な人は運が悪いと思っていることが示された。しかし一方で,優柔不断の下位因子である先延ばしと他者参照では相関が認められなかった。三浦(2017)では全般的な先延ばしを測定する日本語版GPSと幸福度の関連も検討しており,負の相関があることを明らかにしている。幸福度と先延ばしの相関が異なる結果になった理由として,先延ばしにある適応的な面が関係している可能性が挙げられる。近年,先延ばしには課題達成のために意図的に行う能動的先延ばしがあると言われており,能動的先延ばしは効力感の高さと関連している(Chu & Choi, 2005)。すなわち本研究で用いた優柔不断尺度の先延ばしは日本語版GPSで測定した先延ばし特性と異なる側面を測定していた可能性が考えられる。
 本研究は質問紙を用いた相関研究であるため,優柔不断と幸福度および運の良さについての因果関係は明らかでない。決定に対する熟慮や不安を操作することによって,幸福度や運に対する認識が変化するかを検討するといった今後の研究が期待される。

キーワード
優柔不断/主観的幸福度/運


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