発表

3A-003

Gritの2成分と活力との関連
パネル調査におけるPOMSの活力との関連

[責任発表者] 西川 一二:1
[連名発表者・登壇者] 猪伏 慶人#:2
1:京都大学, 2:関西大学

 問題
 Grit(やり抜く力・不屈の精神)には,根気(Perseverance of Effort)と一貫性(Consistency of Interest)の2成分がある。根気は,どんな状況でも自分の目標や課題に対して,持続的かつ積極的に挑んでいく成分であり,一貫性は自分の興味・関心を持ち続ける成分である(Duckworth at al., 2007)。しかし,Gritの個人差研究では,この2成分の違いについて実証的な研究はほとんどない。また尺度研究では,この2成分を合成したTotal-Grit尺度として展開されている。
 本研究では,Gritの2成分の個人差や違いについて,日々の活力気分の高さ,その安定性に要因があると考えた。Grit尺度を使用して,パネル調査をおこないGritの2成分の特徴や違いについて,検討してみた。
 方法
○参加者○関西地方の大学生271名(男性88名, 女性183名,年齢:平均19.2, SD=1.1)
○手続き○2018年11月から12月にかけて,同一調査参加者に対して1週間間隔で5回にわたるパネル(質問紙)調査を実施した。
尺度 
○POMSの活力尺度○日本語版POMS 短縮版(Profile of Mood States-Brief)(横山, 2005)の30項目から活力尺度の5項目を使用した。教示は“過去1週間のあいだの気分”とし回答形式は0~4の5件法である。
○日本語版Grit-S尺度○根気尺度と一貫性尺度の2つの下位尺度からなり,計8項目で回答形式は1~5の5件法(西川他, 2015)である。
分析方法 
 日本語版Grit-S尺度の因子構造の安定性と下位尺度の内部一貫性と安定性を調べるため,各調査間におけるα係数と再検査信頼性(ρ)係数を算出した。またPOMSの活力尺度と日本語版Grit-S尺度の下位尺度との関連を調べるため,潜在曲線モデルを実施した。潜在曲線モデルの分析対象者は,計5波の調査の内,3回の調査の参加者を対象とした。この分析対象者は計220名(男性70名,150名,年齢:平均=19.2, SD =1.2)であった。
 結果と考察
○因子分析の結果○計5波にわたる探索的因子分析の結果(表1),第1因子には根気,第2因子には一貫性とした安定した2因子構造が抽出された。また,因子相関がそれほど高くはなく,Gritを2因子で捉える必要性が高まった。
○尺度の信頼性○各下位尺度のα係数において(表2),根気尺度は.70を超えた値を示しているが,一貫性尺度は,第2波と第3波でやや低い値を示していた。1週間間隔ρ係数(n波とn波+1との相関)では,二下位尺度共に.70以上であった(表2)。パーソナリティ尺度としては,十分の再検査信頼性が確認できた。
○潜在曲線モデルの結果○計5回のパネル調査において,POMSの活力尺度の切片の平均推定値は,1.65(p<.001)で,傾きの平均推定値は,.01(n.s.)であった。またGritの根気尺度の平均推定値は,2.99(p<.001)で,傾きの平均推定値は,.01(n.s.)であり,Gritの一貫性尺度の平均推定値は,2.43(p<.001)で,傾きの平均推定値は,.03(p<.05)であった。3つの潜在曲線モデルの適合度は,CFIは.98以上,RMSEAは.07以下と良好であった。POMSの活力尺度とGritの根気尺度は,縦断的変化はみられなかったが,Gritの一貫性尺度では,わずかな上昇傾向が見られた。
 縦断的調査におけるPOMSの活力尺度とGritの2下位尺度の関係を検討するため,潜在曲線モデルの並行プロセスモデルを実施した(図1)。Gritの根気尺度の切片と傾きは,POMSの活力尺度の切片と傾きとの間で,高い正の相関(切片r=.35, p<.001 , 傾きr=.53, p<.001)が示された。またGritの一貫性尺度の切片は,POMSの活力尺度の切片との間で,正の相関(.15, p<.05)が示された。
 Gritの2成分共に,活力との関連が示された。Gritの根気は日々の活力気分と共変しあう一方で,Gritの一貫性は,日々の活力気分に影響しない。一貫性の時系列変化の理由は,わからなかったが,今後は,興味における一貫性(Consistency of Interest)の観点から,人の興味・関心の発達形成やその強さを調べて,検討する必要があるだろう。

キーワード
Grit/活力/パネル調査


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