発表

2D-004

一対比較法を用いたパーソナリティ特性の相対的重要性に関する調査

[責任発表者] 河村 壮一郎:1
1:鳥取短期大学

目 的
ビッグファイブ理論ではパーソナリティの主要な5つの特性がほぼ独立しているとされている.一方,私たちはそれらの特性が同じ程度の価値があると理解しているとは限らず,それぞれに異なった重要性を認識している可能性がある.
本調査では,大学生を対象にしてパーソナリティ特性をどのように重みづけているかを一対比較法によって調査した.そのため,日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)(小塩ら, 2012)で用いられている質問項目の間で相対的重要性を比較する質問紙を作成した.
方 法
調査対象者 大学1,2年生224名(男性59名,女性160名,不明5名)が調査に参加した.平均年齢は18.6歳 (標準偏差 1.46)であった.
調査時期 2018年7月.
調査内容 以下の調査項目を用いた.
1) TIPI-J 5つの特性ごとに正負の2項目から構成されている.
2) ビッグファイブ特性間の一対比較 TIPI-Jにある質問項目内容の相対的な重みづけを一対比較法によって回答する調査用紙を作成した.元の質問項目からそれぞれ「・・・と思う」の部分を削除し,形容詞や行動の特徴を示す内容を取り出して比較対象語句とした.TIPI-J の質問項目には一般に好ましいとされる内容と好ましくないされる内容があるとして10の対象語句を5つごとに二分した.それぞれのグループですべての対象語句間で一対比較を行うようにし,組み合わせは各10対になる.好ましいとされる語句(外向性大,勤勉性大,神経症傾向小,協調性大,開放性大)については大学生にとっての「重要性」の程度,好ましくないとされる語句(外向性小,勤勉性小,神経症傾向大,協調性小,開放性小)については「重大性」の程度が回答された.
調査はシェッフェの一対比較法(中屋の変法)によりなされ,重要性あるいは重大性について5段階両極尺度で評価がなされた.対象者は 各グループ10通りの語句の組合せをすべて評価する.語句の組合せの順序および各組合せにおける語句の左右の提示位置は平均化されるように4つのパターンの調査用紙を作成した.
4) 手続き 複数の講義において大学生に回答を依頼し,それぞれ一斉に調査を実施した.調査への参加は任意で,回答は無記名であった.回答用紙の冊子を対象者に配布した後,各自のペースで回答するように教示した.
結 果
一対比較の調査で左右の項目の重みづけに差がなく「どちらでもない」との回答を0とし,項目間に差があって「やや」との回答を±1,「とても」との回答を±2として数値化して集計した.統計解析ソフトのエクセル統計にある中屋の変法を用いて,比較対象語句の平均評価値を算出した.Figure 1は重要性,Figure 2は重大性に関する各語句に対する評価値をその特性値として一次元尺度上に示している.
各比較グループでの分散分析の結果,重要性の主効果(F(4, 2240)=47.60, p<0.01)および重大性の主効果(F(4, 2200)= 2.88, p<0.05)が有意となった.また,それぞれのグループでの組み合わせ効果も認められた(F(6, 2240)= 58.21, p<0.01 および F(6, 2200)= 20.99, p<0.01)
考 察
肯定的な意味をもつと考えられる比較対象語句間で重要性に差があると認められる結果になった.大学生はパーソナリティ特性に一定の価値づけを行っていると示唆される.共通する理想的な学生像があり,今回の結果はその反映であるのかもしれない.一方,否定的な意味をもつと考えられる語句の平均評価値は比較的狭い範囲にあって,明確な差異は認められなかった.なお,今回の調査では各特性について単独の調査語句になっていたため,個々の表現内容の影響が強い可能性がある.
引用文献
小塩真司・阿部晋吾・カトローニ ピノ(2012) 日本語版 Ten Item Personality Inventory(TIPI-J) 作成の試み,パーソナリティ研究,21, 40-52.

キーワード
ビッグファイブ/相対的重要性/一対比較法


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