発表

2B-004

長所の自己開示が他者軽視傾向の低減に与える影響

[責任発表者] 三島 爽暉:1
1:立正大学

 仮想的有能感(Assumed-competence: AC)(速水,2006)は,その定義からしばしば自尊感情(Self-esteem: SE)(Rosenberg,1965)との高低による組み合わせで4タイプに分類されて検討され,中でもACが高くSEが低い「仮想型」とACとSEが高い「万能型」は,対人関係上での不適応などACの高さに起因する様々な問題を抱えている。そこで本研究では,速水(2006)が仮想的有能感の低減に関わる要因として指摘した親密な対人関係の促進に基づき,肯定的側面(強みへの焦点付け)を認識しあう相互理解状況を手がかりに,仮想的有能感(他者軽視傾向)の低減を目的とした集団実験を実施した。
方法実験参加者 参加者の募集は大学内で行なわれ,協力意向が示された者に第1質問紙を配布し回答を求めた。第1質問紙は他者軽視傾向尺度(速水(2006)の11項目)と自尊感情尺度(山本・松井・山成(1982)の10項目)から構成されていた。実験に参加した大学生・大学院生46名(男性11名,女性35名)のうち,回答項目に無記入のある計5名の参加者は分析の対象から除外した。
実験手続き 参加者は一つのグループに男性と女性が混在しないよう統制され,3~4人のグループに分けられた。実験は,まず各参加者がワークシートに自由記述をしたのち,ワークシートの記述内容をグループで相互に開示およびコメント付けを行い,最後に第2質問紙に回答する形式であった。ワークシートの内容は,1.あなたが自分自身について良いと思うところはなんですか?具体的なエピソード付きで考えてみてください。どんなに些細なことでも構いませんので自由に書いてみてください。2.その良いところを生かして将来やってみたいことは何ですか?から構成されていた。コメント付けは,各参加者が開示内容を聞いて浮かんだ率直な感想や質問を簡単に一言程度で開示者に話すよう教示された。第2質問紙は,実験中および実験後に生起した気分に関する質問,他者軽視傾向尺度,自尊感情尺度から構成されていた。実験中および実験後に生起した気分に関する29項目は独自に作成され,「実験中,または実験終了後,あなたは以下の項目にどの程度あてはまりましたか」と教示し, 5段階で評定を求めた。
実験デザイン 実験前AC得点および実験前SE得点を独立変数,AC得点変化量を従属変数とする2要因混合計画であった。
結果 実験前SE得点,実験前AC得点,その交互作用項の3変数を独立変数,AC得点変化量を従属変数として,強制投入法による階層的重回帰分析を行った(Table1)。交互作用が有意であったため,単純傾斜検定を行った(Figure1)。その結果,実験前AC得点が高い場合(+1SD),実験前SE得点はAC得点変化量を高める効果を持っていることが示された(β=.526, p <.05)。
 実験中または実験後に生起した気分項目を得点化し因子分析を行い,解釈可能性から4因子解を採用した。以下,気分因子と実験前AC得点を独立変数とした場合に有意な結果が得られた分析に関して記述する。
 現在不安因子,実験前AC得点,その交互作用項,および実験反発因子,実験前AC得点,その交互作用項の3変数をそれぞれ独立変数,AC得点変化量を従属変数として強制投入法による階層的重回帰分析を行った(Table1)。どちらも交互作用が有意であったため,単純傾斜検定を行った(Figure1)。その結果,実験前AC得点が高い場合(+1SD),現在不安因子はAC得点変化量を低減させる効果を持つことが示され(β=-.693, p <.01),実験反発因子はAC得点変化量を低減させる効果を持っていることが示された(β=-.662, p <.05)。
考察 肯定的側面に焦点付けし認識しあう相互理解状況によって,ACとSEが高い参加者は,ACが高くSEが低い参加者に比べACが低減された。これまでのACに関する知見と同様に,ACの低減に関しても類型別に低減効果が異なり,「仮想型」は「万能型」に比べACの低減がされにくいことが示された。また,「仮想型」は実験に対するネガティブな反応がACの低減効果を妨げることが明らかになった。今後,「仮想型」のACの低減に関する知見の蓄積や経時的なACの低減効果について検討の必要がある。

キーワード
仮想的有能感/自尊感情


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