発表

2A-006

擬態語で測定される性格特性を例示するエピソード構成の試み
「緩やかさ」「淡白さ」「軽薄さ」に焦点をあてて

[責任発表者] 小松 孝至:1
[連名発表者・登壇者] 西岡 美和:2, 向山 泰代:3, 酒井 恵子:4
1:大阪教育大学, 2:甲南女子大学, 3:京都ノートルダム女子大学, 4:大阪工業大学

目 的
 日本語には性格を表す擬態語(例:「ほんわかした人」「ちゃらちゃらした人」)が数多く存在する。小松・酒井・西岡・向山(2012)は,この性格を表す擬態語について,自己・他者の評定に使用可能な6下位尺度(緩やかさ・臆病さ・几帳面さ・不機嫌さ・淡白さ・軽薄さ/各10項目)からなる「擬態語性格尺度」を構成した。この尺度では,自己評定と親密な友人からの評定の一定以上の相関や,親密な友人関係でのリーダー/フォロワー役割に即した性格の傾向が示されている(小松・向山・西岡・酒井,2016)。
 さて,擬態語は広汎な内容を表現し,辞書的な定義も必ずしも明確でないため,それによる性格記述を具体的なエピソードと関連づけて理解することも重要となる。発表者らはこの点を女子大学生に対する面接調査の結果から議論した(2017年・18年日心発表)。本研究はこの結果をふまえ,特に擬態語性格尺度に特徴的と考えられる3つの特性(緩やかさ・淡白さ・軽薄さ)を例示するエピソードを構成し,対応する下位尺度による評定結果を検討する。この結果から,面接調査の分析結果の妥当性を検討するとともに,擬態語で記述される性格特性を典型的にあらわす行動の例を研究の素材として使用できるようになると考えられる。
方 法
調査協力者 関西圏の大学生85名の協力を得た,うち不備等のある5名を除く80名(1年生52,2年生2,3年生7,4年生16,不明3・男性17,女性59,不明4)の回答を分析した。
調査内容 上述の面接調査の結果をふまえ,各特性の本質の少なくとも一部を例示すると考えられる9エピソード(3エピソード×3特性)を作成した。(例(淡白さ):あなたと同じ学科に所属している同性の友人のHさんは,授業の前後などによく話をしている友人で,あなたが授業を休んだ時には配られたプリントを取っておいてくれたりします。ただ,Hさんは大学の帰りに駅まで一緒に歩きながら話がはずんでいても,駅に着くとすぐに「それじゃ」といって,あなたとは別方向の電車に乗って帰って行きます。Hさんから連絡をしてくることはあまりありません。また,大学では取り立てて別の友人と仲がいいわけではないようです。)いずれも協力者と同じ学科の同性の友人の行動とし,対応する下位尺度(短縮版,酒井・西岡・向山・小松, 2015)の項目が当てはまるかどうか5件法で評定を求めた。また,同じような状況で同様の行動を示す友人・知人(性別問わず)がいるかどうか,3段階(そのように行動する人が「いる」「いるかもしれない」「まったくいない」)で評定を求めた。以上は研究代表者所属大学の倫理審査を受審の上実施した。
調査時期 2018年7月~2019年2月
結果と考察
下位尺度による評定 3つの特性中「淡白さ」に関する3エピソードでは評定平均が1項目当たり3.3以上となったが(高い順に 3.61, 3.37, 3.31),「緩やかさ」(2.98, 2.78, 2.55),「軽薄さ」(3.12, 2.90, 2.22)は,平均値が3.0を下回るものが多かった。しかし次の点から,エピソードの多くは擬態語によって記述される性格特性を一定程度反映していると考えられる。
 1つは尺度自体の特性である。本研究で評定が高い「淡白さ」の自己評定と他者評定(同性同年輩の特定の親しい友人の評定)の比較では他者評定が有意に高く,「緩やかさ」「軽薄さ」は自己評定が有意に高い。また,他者評定の平均値は淡白さ・緩やかさ・軽薄さの順である(酒井ら, 2015)。本研究の結果もこれらを反映していると思われる。
 もう1つは,エピソードの限界として,下位尺度の5項目中,限られた項目を中心に高評定がみられることである。5項目中最も高い評定を得た項目の平均が3.7以上のものが9エピソード中7エピソードあり,うち2つは4.0以上であった。エピソードが人物の全体像を表せないことが,こうした結果の理由と考えられる。ただし,「軽薄さ」に関する1エピソード(平均値が最低のもの)は,評定平均がもっとも高い項目も3.1程度で,2.0を下回る項目も複数みられた。
同様の友人・知人の実在感 評定平均が低い軽薄さに関する1エピソードを除き,協力者の40%以上がそうした行動を示す友人・知人が「いる」と回答し,「まったくいない」という評定は高くても15%であった。それぞれの特性で下位尺度の評定が最高のエピソードでは「いる」の割合も高く,「淡白さ」「緩やかさ」の該当エピソードでは50%を超えた。
 以上の分析は,本研究で提示したエピソードの多くが,擬態語性格尺度で測定される特性を一定程度例示・反映すること,また,エピソード作成のもとになった各特性の本質的特徴にある程度の裏付けが示されたといえる。エピソードの多くでは,このような行動をする友人・知人が「いる」とする回答が40%から半数程度みられ,今後の研究で,特性を例示する行動としてある程度の実在感をもって提示できると考えられる。ただし,1つのエピソードが特性を全般的に反映するとは言い難い。下位尺度の評定平均が高いエピソードでは実在感の評定も高いことから,これらでは,周囲の特定の人物のイメージが惹起され,それによって比較的広範に高い評定がなされたのかもしれない。
引用文献
小松孝至・向山泰代・西岡美和・酒井恵子 (2016). 擬態語による性格認知と友人関係におけるリーダー/フォロワー役割 心理学研究, 86, 589-595.
小松孝至・酒井恵子・西岡美和・向山泰代 (2012). 自他の性格評定に使用可能な擬態語性格尺度の構成 心理学研究, 83, 82-90.
酒井恵子・西岡美和・向山泰代・小松孝至 (2015). 擬態語性格尺度短縮版の作成 パーソナリティ研究, 24, 163-166.
付記:本研究はJSPS科研費 JP17K04383の助成を受けた。

キーワード
擬態語/性格/エピソード評定


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