発表

2A-004

有難くないソーシャルサポートはむしろ逆効果
ソーシャルサポートに感じる期待と効力感がその効果に与える影響

[責任発表者] 中島 実穂:1,2
[連名発表者・登壇者] 丹野 義彦:3
1:国立精神・神経医療研究センター, 2:東京大学駒場学生相談所, 3:東京大学

 ソーシャルサポートとは,個人が活用できる(できると感じる),家族や友人などの専門家以外の他者から与えられる社会的資源である (Gottlieb & Bergen, 2010)。ソーシャルサポートは,感情制御に有益な効果をもたらすとされている (e.g. 堀田・大塚, 2015)。
しかし,ソーシャルサポートがどの程度有効に作用するかは,その状況によって異なるといいうことが多くの研究で示唆されている。受け取り手側の性別やパーソナリティといった要因も,ソーシャルサポートに影響を与えることが示されてきた (e.g. 原田ら, 2017)。一方ソーシャルサポートによる効果は,受け取り手がどの程度その価値を認め,求めているかによって大きく異なることが予測される。しかし,そうした受け取り手の認知的要因が,ソーシャルサポートにどのような効果を与えるかについては,明確に検討されていない。
 そこで本研究では,ソーシャルサポートによる感情制御への効果が,受け取り手側のソーシャルサポートへの価値観 (i.e. ソーシャルサポートにどの程度価値を感じ,求めるか) によってどのような影響されるかを,2時点縦断調査によって検討する。
方法
手続き
 1ヶ月間隔の2時点縦断調査をインターネット上で実施した。
参加者
 20歳~71歳の男女107名であった (男性54名,女性53名,平均年齢 = 37.72歳,SD = 8.50)。
尺度
 ソーシャルサポートへの価値観 日本語版Interpersonal Regulation Questionnaire (IRQ; Williams et al., 2018) を使用した。16項目から成り,回答形式は7件法とした。
 感情状態 日本語版The Positive and Negative Affect Schedule (PANAS; 川人ら , 2011) を使用した。20項目から成り,回答形式は6件法とした。
 ストレス 日常苛立事尺度 (宗像, 1996) を使用した。34項目から成り,回答形式は3件法とした。
結果と考察
 ソーシャルサポートへの価値観 (IRQ得点) の違いによる,ソーシャルサポートの効果を検討するため,重回帰分析を行った。この重回帰分析では,従属変数を「ネガティブ感情T2」にした式と,「ポジティブ感情T2」にした式の2つをそれぞれ分析した。共変量として性別,年齢,ネガティブ感情T1(ポジティブ感情T1)を投入し,主効果としてストレス,IRQ,ソーシャルサポート を投入した。またIRQ×ソーシャルサポートの交互作用も投入した。その結果,ネガティブ感情T2を従属変数とした式において,IRQ×ソーシャルサポートの交互作用が有意となった (Table 1)。よって,Cohen & Cohen (1983) に従い,単純傾斜の検定を行った (Figure 1)。その結果,IRQが高い場合 (+1SD) は,ソーシャルサポートがネガティブ感情の低減に寄与することが示された (β = -.23, p < .05)。一方,IRQが低い場合 (-1SD) は,ソーシャルサポートがネガティブ感情の増強に寄与することが示された (β = .26, p < .01)。この結果から,受け取り手がソーシャルサポートを有難いものであると認識していない場合,ソーシャルサポートはむしろ感情制御に悪影響をもたらすということが示唆された。

キーワード
ソーシャルサポート/感情制御


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