発表

2A-003

移民に対する寛容性とパーソナリティ特性の関連
外国人居住割合に着目して

[責任発表者] 吉野 伸哉:1
[連名発表者・登壇者] 小塩 真司:1
1:早稲田大学

問題
 労働目的や難民などの理由から,開発途上国から先進国への人口移動がおこなわれている。日本においても外国籍人口は1980年から2015年までに2.6倍も増加しており(中川,2019),1年間に移住した外国人の数はOECD加盟国のうちドイツ,アメリカ,イギリスに次ぎ4番目に多かった(2015年のデータ; 西日本新聞,2018)。今後も外国人居住者や移民は継続的に増えていくと考えられている。
 このような状況のなか,居住地に外国人が増えることにともなう影響は,経済(Powell, 2015)や政策(鈴木,2019)などさまざまな角度から検討されている。なかでも,近隣の外国人に対する住民たちの反応に関しては,排外意識や偏見,寛容性の観点から,どのような要素がこれらの意識と関連するかについての知見が蓄積されている。たとえば,年齢が若い,高学歴(山本・松宮,2010),ホワイトカラー(濱田,2010)といった人々のほうが外国人居住者に対する寛容性は高い傾向にあることが明らかになっている。また,中澤(2007)は外国人との接触と偏見の関連について,外国人と深い関わりがあると偏見は少ない傾向にあるが,表面的な接触しかないと偏見を持ちやすい傾向を示唆した。
 本研究では個々人の行動や思考の傾向,すなわちパーソナリティ特性に着目し,外国人居住者への寛容性との関連を検討する。パーソナリティ特性にはこれを包括的に捉えたBig Fiveパーソナリティ特性(Goldberg, 1990)を用いる。先行研究では,開放性が高い人々は自由主義的で多様性を好み,実際に,開放性が高い地域には外国人居住者が多いことが示されている(Rentflow et al., 2008)。
 また,個人のパーソナリティ特性と周辺環境のフィッティングが幸福感や人生満足度,自尊感情,仕事におけるパフォーマンスなどと関連することが指摘されている(Person-Environment Fit 理論; e.g., Schmader & Sedikides, 2017)。これまで,職場環境(渡辺ほか,2009)や近隣住民(Jokela et al., 2015)などと,自身のパーソナリティ傾向の関連が検証されているが,居住地域における外国人居住者の多さという観点からもフィットする,あるいはしないパーソナリティ特性があると考えらえる。
方法
 データは,「人間情報データベース FY18-02」を使用した。使用にあたり,調査実施機関の株式会社NTTデータ経営研究所より承諾を得た。調査対象者は満15歳から99歳の20,160名 (うち女性9,668名) であった。そのうち,特定の回答をするように教示した項目に従わなかった調査対象者,分析に必要な項目に回答しなかった調査対象者を除く17,689名 (うち女性8,665名,平均年齢47.86歳,SD = 14.89) を分析対象とした。
 パーソナリティ特性の測定はBig Five尺度のTIPI-J (小塩・阿部・カトローニ,2012) を用いた。外国人居住者に対する寛容性は著者らが作成した5項目(うち3つは逆転項目)の合算平均を用いた(α=.77)。これらは先行研究で用られることの多い,居住地に外国人が増えることへの賛否や(永宮,2008; 山本・松宮,2010),コミュニケーションへの積極さ(濱田,2010),さらに政治的寛容性を尋ねる際に用いられる「異なる価値観を持って生活していても受け入れるべきである」という趣旨の項目により構成された。また,分析対象者の居住する市区町村の外国人居住割合や,他の社会生態変数は政府統計の総合窓口e-stat(https://www.e-stat.go.jp/)より最新のデータを収集した。
結果・考察
 各Big Five得点と外国人居住割合,これらの交互作用項を独立変数,寛容性を従属変数とする重回帰分析をおこなった。なお,年齢,性別,教育レベル,今の居住地が地元かどうか,居住年数,結婚状況といったデモグラフィック変数,さらに居住地が東京都や政令指定都市かどうか,人口密度,転出超過率,65歳以上の人々が占める割合,単身世帯割合といった社会生態変数を統制した。
 分析の結果,各Big Fiveとはそれぞれ有意な関連が見られた(外向性B=.072;協調性B=.068;誠実性B=-.040;神経症傾向B=-.057;開放性B=.064; ps <.001; R2 = .072)。外国人居住割合との交互作用項で有意な関連を示したパーソナリティは誠実性であった(B=-.542,95%Cl [-1.073, -.011],β=-.017)。単純傾斜の分析の結果,誠実性が高い人々において,居住地に外国人の割合が多いほど寛容さが低いことが明らかになった(B =-1.30, p <.01; Figure 1)。
 誠実性は規範やルールを順守する傾向にあるが(Soto & John, 2017),そのような規範やルールを把握していない外国人居住者を目の前にすると寛容になれないというプロセスが考えられる。

謝辞:分析に当たり,株式会社NTTデータ経営研究所から「人間情報データベース FY18-02」のデータの提供を受けました。

キーワード
寛容性/移民/Big Fiveパーソナリティ特性


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