発表

1D-002

他者からの評価・受容は自己不一致を縮小させるのか?
―理想自己・義務自己・望ましくない自己の比較―

[責任発表者] 能渡 綾菜:1
[連名発表者・登壇者] 能渡 真澄:1, 望月 聡:2
1:筑波大学, 2:法政大学

目 的
 自己に関する目標は自己指針と呼ばれ(Vergana & Roberts, 2012),自己指針と実際の自分が乖離している状態を自己不一致という。自己不一致は抑うつや不安と関連するため(Higgins, 1987),小さくすることが望ましい。Atwater et al.(1995)は,他者から肯定的に評価されることで,自己評価が高まることを示している。そこで本研究では,他者からのFBが自己不一致を緩和するかどうかを検討する。
 しかし,他者からのFBを受け取る個人が持つ特性によって,他者からのFBが持つ効果が異なることが予測される。そこで本研究では,評価懸念を取り上げる。評価懸念が高い場合,他者からの評価あるいは受容に対して疑念を抱いてしまうことによって,他者からの評価や受容が本来持つ効果が十分に発揮されないと考えられる。
 以上より,本研究では,他者からの評価と受容が,理想自己と義務自己,望ましくない自己の3つの自己指針における自己不一致に及ぼす影響を検討することを目的とする。

方 法
 調査対象者 大学生193名(男性72名,女性121名,M=20.31±3.07歳)が,3つの自己指針のうち,いずれかの質問紙に回答した。
 測定内容 (1)評価懸念:評価懸念尺度(山本・田上, 2001)を使用した。(2)自己指針の内容:水間(1998),小平(2002),Ogilvie(1987)を参考に,自己指針の内容を1つ自由に記述するよう求めた。(3)自己不一致:自己指針について,“現在のあなたにどの程度あてはまりますか”という教示のもと,自己不一致の程度を9段階評定で回答を求めた。
 質問紙の構成 はじめに,評価懸念,自己不一致(ベースライン)への回答を求めた。続いて,絵を用いた場面想定法により,他者からのFB (他者からの受容・他者からの評価)の操作を行った。設定した場面は,自己不一致について重要他者に相談する場面であり,他者からの評価条件では,「全然そんなことないよ,私は真逆の印象を持っていたよ」,他者からの受容条件では,「そんなところもあなたらしくていいと思うよ」,と言われる場面を提示した。場面の提示後に,自己不一致(FB後) について操作前と同様に回答を求めた。
 分析内容 評価懸念(高・低)を参加者間要因,他者からのFB(評価・受容)を参加者内要因,自己不一致得点を従属変数として,自己指針ごとに分散分析を行った。

結 果・考 察
 Figure 1より,理想自己条件では,評価懸念およびFBの主効果が認められた(F(1, 69)=5.27, p<.05, F(2, 138)=13.82, p<.01)。FBについて多重比較を行ったところ,ベースラインと他者からの評価後の間,ベースラインと他者からの受容後の間の理想自己との不一致得点に有意な差が認められた(t(69)=4.63, p<.01; t(69)=5.01, p<.01)。このことから,理想自己との不一致については,評価懸念の高さにかかわらず,他者からの評価・受容が有効であることが示された。また,Figure 2より,義務自己条件では,有意傾向ながらも評価懸念およびFBの主効果が認められた(F(1, 59)=3.04, p<.10, F(2, 118)=2.98, p<.10)。このことから,義務自己との不一致は,評価懸念の高さによって,他者からのFBの効果が異なることが示された。そして,Figure 3より,望ましくない自己条件では,評価懸念×FBの交互作用が認められた(F(2, 118)=4.93, p<.05)。単純主効果の検定を行ったところ,評価懸念低群では,ベースラインと他者からの受容後の間に有意傾向ながら差が認められた(t(59)=-2.29, p<.10)。また,評価懸念高群では,他者からの評価後と他者からの受容後の間に有意な差が認められた(t(59)=2.47, p<.05)。このことから,望ましくない自己との一致に対しては,評価懸念の高さにかかわらず,評価の方が有効であり,受容は逆効果であることが示された。

キーワード
自己不一致/他者からのフィードバック/評価懸念


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