発表

1C-005

嘘による罪悪感と嘘のつきやすさに影響を及ぼすパーソナリティ特性

[責任発表者] 後藤 理咲子:1,2
[連名発表者・登壇者] 箱田 裕司:2
1:名古屋大学, 2:京都女子大学

問 題
 欺瞞と関連するパーソナリティ特性として,過去の研究でしばしば取り上げられてきたのがマキャベリアニズム,ソーシャルスキル,セルフ・モニタリングである。これらの特性は,適切に自分の行動や態度を統制するなど嘘をつくときに有利にはたらき,嘘をつきやすくなることが示されてきた。本研究では,これらのパーソナリティ特性と嘘をつくときに生じる心的負荷である罪悪感,嘘のつきやすさの関係を明らかにすることを目的とする。これまでの実験より,嘘をつくときの注意資源の分配に,罪悪感と嘘のつきやすさが影響を及ぼすことが示された。そこで,罪悪感と嘘のつきやすさに関連するパーソナリティ特性を明らかにすることで,嘘をつくときの心的負荷の個人差をより理解することができると考える。まず,各尺度の因子構造について因子分析を用いて検討する。次に,各尺度と嘘をつくときの罪悪感および嘘のつきやすさとの関係性について検討する。
方 法
対象者 大学生312名(平均年齢:19.38歳)
調査内容および手続き 調査は集団で行われた。マキャベリアニズム20項目,セルフ・モニタリング25項目,ソーシャルスキル35項目,「嘘をつくとき罪悪感を抱きやすい。」「良くも悪くも嘘をつくことが多い。」の2項目について1:まったくあてはまらない~5:よくあてはまるの5件法で評価するよう求められた。尺度は,Machiavellianism Scaleの第Ⅳタイプの日本語訳(中村陽吉,2000:58),セルフ・モニタリング尺度(岩淵・田中・中里,1982),ソーシャルスキル自己評定尺度の構成(相川・藤田,2005)を使用した。
結果
 分析を行うにあたって,「嘘をつくとき罪悪感を抱きやすい。」を“罪悪感”,「良くも悪くも嘘をつくことが多い。」を“嘘のつきやすさ”と定義した。
①マキャベリアニズム 20項目の測定値をもとに因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った結果,「非道徳性」「懐疑性」「狡猾性」の3因子が抽出された。α係数は,非道徳性因子でα=.68,懐疑性因子でα=.60,狡猾性因子でα=.54の値が得られた。各因子を独立変数,罪悪感を従属変数として強制投入法で重回帰分析を行った(R²=.09,p<.01)。非道徳性,狡猾性は罪悪感にそれぞれ影響を及ぼしており(b=-.26,p<.01;b=-.13,p<.05),有意な係数であった。特に非道徳性は,嘘をつくときの罪悪感に負の影響を与えているといえる。続いて,嘘のつきやすさを従属変数として重回帰分析を行った(R²=.14,p<.01)。非道徳性,狡猾性は嘘のつきやすさにそれぞれ影響を及ぼしており(b=.20,p<.01;b=.29,p<.01),有意な係数であった。したがって,非道徳性と狡猾性が嘘のつきやすさに正の影響を与えているといえる。
②セルフ・モニタリング 25項目の測定値をもとに因子分析を行った結果,「外向性」「他者志向性」「他者迎合性」「演技性」の4因子が抽出された。α係数は,外向性因子でα=.80,他者志向性因子でα=.66,他者迎合性因子でα=.61,演技性因子でα=.61の値が得られた。各因子を独立変数,罪悪感を従属変数として重回帰分析を行った(R²=.08,p<.01)。演技性は罪悪感に影響を及ぼしており(b=-.28,p<.01),有意な係数であった。したがって,演技性が罪悪感に負の影響を与えているといえる。続いて,嘘のつきやすさを従属変数として重回帰分析を行った(R²=.25,p<.01)。演技性,外向性,他者迎合性は嘘のつきやすさにそれぞれ影響を及ぼしており(b=.46,p<.01;b=-.22,p<.01;b=.14,p<.01),有意な係数であった。したがって,演技性と他者迎合性は嘘のつきやすさに正の影響を,外向性は負の影響を与えているといえる。
③ソーシャルスキル 35項目の測定値をもとに因子分析を行った結果,「関係開始」「解読」「主張性」「感情抑制」「関係維持」の5因子が抽出された。α係数は,関係開始因子でα=.92,解読因子でα=.86,主張性因子でα=.78,感情抑制因子でα=.72,関係維持因子でα=.58の値が得られた。各因子を独立変数,罪悪感を従属変数として重回帰分析を行った(R²=.15,p<.01)。主張性,感情抑制,関係維持は罪悪感にそれぞれ影響を及ぼしており(b=-.22,p<.01;b=-.35,p<.01;b=.29,p<.01),有意な係数であった。したがって,主張性と感情抑制は罪悪感に負の影響を,関係維持は正の影響を与えているといえる。続いて,嘘のつきやすさを従属変数として重回帰分析を行った結果,有意な値は得られなかった。
考察
 結果より,非道徳性や狡猾性,演技性,主張性,感情抑制の低い人,そして関係維持の高い人は嘘をつくときに罪悪感を生じにくいことが示された。また,非道徳性や狡猾性,演技性,他者迎合性の高い人,そして外向性の低い人は嘘をつきやすいことが示された。これまで,外向性や関係維持などの向社会的な態度を示す人は,他者との関係を良好にするために嘘をつきやすいと考えられてきた。しかし,結果はこれまでの研究に反するものであった。本調査において,彼らは嘘を悪いものとして見なしやすく,社会で必要とされる社会的な嘘を嘘として認識していないといった可能性が考えられる。本研究で得られた値はそれほど大きいものではなかったが,罪悪感や嘘のつきやすさに影響を及ぼす因子を明らかにすることができた。

キーワード
嘘/パーソナリティ


詳細検索