発表

1C-004

知覚された自尊感情の変動性尺度の日本語版作成と信頼性・妥当性の検討

[責任発表者] 小川 翔大:1
1:静岡福祉大学

 自尊感情研究では,状態自尊感情を複数回測定し,その標準偏差を変動性の指標とする(Gold standard)。この方法は協力者の途中脱落が生じるため,一試行で変動性を尋ねる尺度開発が試みられた。しかし,どの尺度もGold standardとの相関が得られなかった(Howard, 2017)。そのため,Howard (2018)は従来の変動性と区別し,尺度で測定する変動性を "知覚された自尊感情の変動性"(P-SEI)と呼び,資源保存理論に統合して理論的説明をした。そして,P-SEIが特性的な自己(中核的自己評価など)と強く関連し,ストレスや抑うつなどに影響することを示した。Gold standardとP-SEIの概念的違いとして,前者は短期間内の自尊感情の揺れを指標とするため特定の時点や場面での変動のしやすさ(状態的な性質),後者は自分を内省して評定した変動性を指標とするため比較的安定した性格(特性的な性質)をより反映していると考えられる。P-SEIは測定の簡便さや指標の性質から,長期に渡って自尊感情の変動性を測定する発達研究に適した尺度となる可能性がある。そこで本研究では P-SEI尺度(Howard, 2018)の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討する。方 法調査協力者 2校の大学生と1校の短期大学生の計116名(男性33名,女性83名)。平均年齢は19.67歳(SD = 1.50)。尺度 P-SEIは原著者の許可のもと作成した日本語版12項目を7件法で評定させた。Gold standardとして状態自尊感情尺度(阿部・今野, 2007)9項目をGoogle formから1日1回計7日間,5件法で評定させた。自尊感情の高さは7日分の尺度平均値(GSMean),変動性はその標準偏差(GSSD)を指標とした。他に, Rosenberg自尊感情尺度(RSES; Mimura, & Griffiths, 2007)10項目4件法と,精神的健康としてK-6(Furukawa et al., 2008)6項目5件法を評定させた。結 果 P-SEI項目は天井効果や床効果はなく,α係数で内的一貫性が,主成分分析で因子的妥当性が確認された(Table 1)。P-SEIとGSSD は無相関だった。P-SEIはRSES,K-6と中程度の相関がみられた(Table 2)。次に,K-6を目的変数とする階層的重回帰分析をした(Table 3)。その結果,Step 1・2はRSESがK-6へ有意に影響したが,Step 3はRSESの影響が消え,P-SEI, GSSD,GSMean がK-6へ有意に影響した。考 察 本研究ではP-SEIとGold standardの変動性に関連がみられず,Howard(2017)と同様の結果となった。階層的重回帰分析では,P-SEIがRSESの効果を打ち消し,K-6に最も強く影響した。つまりRSESとK-6の関連は疑似相関であり, P-SEIが真にK-6と関連した。以上より,P-SEIは精神的健康などの個人結果を予測する有用な指標であることが示唆された。今後はP-SEIの再検査信頼性や予測妥当性の検証,異年齢集団への調査,理論的拡張のための研究蓄積などが必要だろう。引用文献阿部 美帆・今野 裕之(2007). 状態自尊感情尺度の開発 パーソナリティ研究, 16, 36-46.Furukawa,et al.(2008).The performance of the Japanese  version of the K6 and K10 in the world mental health  survey Japan.Int J Methods Psychiatr Res,17,152-158.Howard, M. C. (2017).Measuring self-esteem instability  through a single-administration scale: Still a  fruitless endeavor? Pers Individ Dif,104,522-545.Howard,M.C.(2018).The measurement,nomological net,and  theory of perceived self-esteem instability: Applying  the conservation of resources theory to understand  the construct. Psychol Rep, 0033294118781319.Mimura, C. & Griffiths, P.(2007).A Japanese version of  the Rosenberg Self-Esteem Scale: Translation and  equivalence assessment. J Psychosom Res,62,589-594.付 記 本研究はJSPS科研費JP18K13308の助成を受けて実施した。

キーワード
P-SEI尺度/資源保存理論/ゴールドスタンダード


詳細検索