発表

1C-003

サイコパシーと欺瞞時における心理的負荷の関連
―ダウトゲーム課題を用いた検討―

[責任発表者] 和島 弘晃:1
[連名発表者・登壇者] 田中 恒彦:1
1:新潟大学

目的
サイコパシー(Psychopathy)とは,感情的浅薄さ,自己中心性,共感性の欠如,衝動性などの特徴や行動によって定義されるパーソナリティである(Hare & Neumann, 2009)。サイコパシー傾向者は,利己的な欺瞞との親和性が高いことが知られている(Jonason, Lyons, Baughman, Vernon, 2014)。また,一般的に人々が欺瞞を行うことを妨げる要因には不安や罪悪感などの感情的要因が関与しているとされる(Porter & Woodworth, 2007)。しかし,サイコパシー傾向者にはこれらの感情が欠如しているとする指摘があり(e.g., Ekman, 2002; Lykken,1995),このことから,サイコパシー傾向者はその感情機能の特異性によって欺瞞的行動が抑制されないことが考えられる。そこで本研究では,サイコパシー傾向の高低と,欺瞞時に伴う不安感などの感情的要因との関連について検討する。

方法
対象:新潟県内の大学生24名
手続き:心理学の講義を受講している大学生に事前調査として質問紙を配布し回答を求めると同時に実験参加の募集を行った。参加に同意を得られた者を実験室に呼び出し,実験課題の説明および同意の取得を行った。同意取得後,欺瞞課題および質問紙による感情状態の測定を実施した。欺瞞課題は,話し手役となった実験参加者が,定められたテーマについて真実と嘘両方の内容を含めたスピーチを行い,その内容について聴衆から真偽の評価がなされ,嘘の露見率によって報酬が変動するという仕組みのダウトゲーム課題を用いた。実験課題は,①実験手続きの説明と同意取得(ディセプション),②出題内容の構想,③実験参加者によるスピーチ,④真偽の評定,⑤結果のフィードバック,⑥課題中の主観的な感情状態の測定,⑦デブリーフィングといった計7段階から構成された。なお,②~⑤の手続きは,一人の参加者につき2試行行うこととした。実験開始時,参加者には虚偽の手続きとして,⑴ビデオカメラを介して別室に待機している評定者役の学生に対してスピーチを行ってもらうこと,⑵嘘の露見率に応じて報酬の額が変動することを伝えた。感情状態の測定が終了した後,参加者にはデブリーフィングとして,真の実験の目的と手続きが説明された。デブリーフィング終了後,再度同意の取得を行い,改めて同意が得られた者のみ分析対象とした。
質問紙:サイコパシー傾向の測定には,日本語版一次性・二次性サイコパシー尺度(Primary and Secondary Psychopathy Scale, PSPS ; 杉浦・佐藤 , 2005)を用いた。感情面の特徴を表す一次性サイコパシー(PP)尺度16項目,行動面の特徴を表す二次性サイコパシー(SP)尺度10項目の計26項目について,「1. 全く当てはまらない」から「4. 非常に当てはまる」の4件法で評定を求めた。
課題中の主観的な感情状態の測定には,多面的感情状態尺度(寺崎・岸本・古賀,1992)を用いた。本来は8つの下位尺度で構成されるが,本研究では藤原・大坊・酒井(2011)において欺瞞との関連が示唆された「抑うつ・不安」および「非活動的快」を使用し,それぞれ10項目ずつ計20項目について,「1. 全く感じていない」から「4. はっきり感じている」の4件法で評定を求めた。本実験では実験課題の手続き上課題中の感情状態について尋ねる必要があったため,教示文と評価に関する文言を変更したものを用いた(「1. 全く感じていない」→「1. 全く感じていなかった」)。
分析:PSPSによって測定されたPSPS,PP,SP得点それぞれについて平均値を基準に高群・低群に群分けを行った。各群の「抑うつ・不安」得点および「非活動的快」得点について,対応のないt検定による平均値差の検定を行った。

結果
実験参加者は大学生24名(男性13名,女性11名:平均年齢21.12(sd=1.42))であった。PSPS得点の高低による「非活動的快」得点の平均値差において,5%水準で有意差が認められた(t(22)=0.024, p<.05)。その他,PSPS得点の高低による「抑うつ・不安」得点の平均値差,PP得点,SP得点の高低による「抑うつ・不安」得点および「非活動的快」得点の平均値差においては,統計的に有意な差は認められなかった。

考察
サイコパシー傾向の高低によって「非活動的快」得点に差が生じたことには,欺瞞時に起きる緊張感の上昇の抑制にサイコパシー傾向の高さが影響した可能性がある。高サイコパシー傾向者は,嘘の露見を意識することによって喚起される欺瞞時の緊張感の上昇が抑制されることで,何らかの目的を達成するための戦略的な欺瞞を躊躇なく,より効率的に行うことができた可能性がある。「抑うつ・不安」得点に関して,サイコパシー傾向の高低による差は見られなかった。このことには,本実験において設定した欺瞞事態が,直接的に不安を生起しうるものではなかったことが影響した可能性がある。

キーワード
サイコパシー/欺瞞


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