発表

1B-005

心理学的タイプの両義性と精神的健康,主観的適応との関連
―矛盾するパーソナリティ特性を共存させる両義性の検討2―

[責任発表者] 佐藤 淳一:1
1:武庫川女子大学

目 的
 矛盾するパーソナリティ特性を共存させる意義は心理臨床の実践において認められている。たとえばタイプ論(Jung, 1921)では対極性が働いているため,外向と内向は互いに両立しえないものとされているが,対立物が弁証法的に乗り越えられる個性化の過程では,対極性が働きながらも分化,発展する相補性が想定されている(河合,1982)。筆者はこうした対極性と相補性を両義性と呼び,心理学的タイプの両義性を捉えるため,心理学的タイプ測定尺度(Jung Psychological Type Scale,以下JPTS;佐藤,2005)をもとに,相補性を考慮に入れた心理学的タイプ測定尺度(Jung Psychological Type Scale for Complementary; 以下,JPTS-C)を作成した。回答はJPTSの文章対(a, b)を保持しつつも文章(a, b)それぞれに独立して行うもので,JPTS-Cの内的整合性や再検査法,JPTSとの併存的な妥当性,E-I間とS-N間の機能的対極性を確認した(佐藤,2017)。
 一般態度間や心的機能間という矛盾するパーソナリティ特性を共存させる両義性が高いものほどパーソナリティの幅や柔軟性を備えていると考えられるため,精神的健康や適応状態の良好さと関連すると予想される。そこで,心理学的タイプの両義性と精神的健康,主観的適応との関連を検討する。

方 法
 質問紙 
 1) JPTS-C 外向(Extraversion; E),内向(Introversion; I),思考(Thinking; T),感情(Feeling; F),感覚(Sensation; S),直観(Intuition; N) の9項目ずつ,計54項目。回答はJPTSの文章対(a, b)を保持しつつも文章(a, b)それぞれに独立して行うもので,「まったく当てはまる」から「まったく当てはまらない」までの7件法。両義性(K)得点は [a+b] - [a-b] の式(Kaplan,1972)によって求めた。K得点の大きいものほど両義性が高いことを示す。2) 日本版GHQ28項目(中川・大坊,1985)計28項目からなる。得点化はゴールドバーグのGHQ法に則って,回答が「全くなかった」「あまりなかった」場合は0点,「あった」「たびたびあった」の場合1点を与えた。3) 青年用適応感尺度(大久保,2005)「個人が環境と適合していると意識している」という主観的適応感を指す。居心地の良さの感覚10項目,被信頼・受容感6項目,課題・目的の存在7項目,拒絶感の無さ6項目。回答形式は,「全く当てはまらない」から「かなり当てはまる」までの5件法。
 調査協力者はJPTS-CとGHQ28が女子大学生165名(平均年齢18.0歳,SD=0.86)JPTS-Cと青年用適応感尺度は女子大学生180名(平均年齢19.4歳,SD=0.79)。うち77名が重複。必要な倫理的配慮を行ったうえで集団法により実施した。

結 果 と 考 察
 JPTS-Cの両義性尺度のα係数は.67-.85であった。次に,JPTS-Cの両義性得点とGHQ-28,大学生用適応感尺度の相関係数を求めた。JPTS-Cの両義性得点はGHQとの間で相関はみられなかったが,青年用適応感尺度との間でK(E-I),K(T-F)およびK(Total)と適応感尺度の合計との間で正の有意な相関がみられた(r=.237, p<.01; r=.340, p<.01; r=.240, p<.01)。そして,JPTS-Cの両義性得点K(E-I),K(T-F),K(S-N)およびK(Total)をそれぞれ高群・中群・低群にわけ,適応感尺度合計の1要因分散分析を行ったところ,K(T-F)の群において有意差が認められ(F(2,177)=6.81,p<.01),K(T-F)の高群は中群あるいは低群よりも適応感尺度合計を高く示した。
 思考機能と感情機能という対極する判断機能を共存させているものは主観的適応感を高く抱いていた。これは,意味や概念を判断する思考機能と価値や好悪を判断する感情機能を共存させることでパーソナリティの幅や柔軟性が広がり,不安や混乱に陥ることなく,むしろ個人の主観的体験と周囲や環境との調和を促したものと考えられる。一方,心理学的タイプの両義性は個人の神経症傾向を示す精神的健康まで反映してはいなかった。(SATO Junichi)

キーワード
心理学的タイプ/両義性/主観的適応


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