発表

1B-003

日本語版3因子レベンソンサイコパシー尺度の作成

[責任発表者] 杉浦 光海:1
[連名発表者・登壇者] 杉浦 義典:1, 堀内 孝:2
1:広島大学, 2:岡山大学

目的
 サイコパシー (Psychopathy) とは,不誠実,自己中心的,感情の欠乏,良心の呵責がない,無神経,衝動的などを特徴とするパーソナリティ障害である (Cleckley, 1955) 。
 近年,サイコパシー尺度の因子構造の再検討がさかんに行われており,Levensonら(1995)が開発したLevenson Self-Report Psychopathy Scale(以下,LSRPとする)はその対象の1つである。LSRPは一般人のサイコパシー傾向を測定するのに適した尺度であり,当初は2因子構造を想定して作られた (Levensonら,1995) 。しかしながら,第2因子の信頼性の低さや2因子構造のモデル適合度の低さなどの問題が指摘されていた。そのため,Christian & Sellbom (2016) は,LSRPに新たな項目を追加したExpanded Version of the Three-Factor Levenson Self-Report Psychopathy Scale(以下,ELSRPとする)を作成した。その結果,モデル適合度の高い3因子構造と十分な信頼性・妥当性が示された。
 日本では,LSRPを邦訳した日本語版一次性・二次性サイコパシー尺度(以下,LSRP-Jとする:杉浦・佐藤,2005)がサイコパシー研究において一般的に使用されているが,LSRP-JはLSRPとほぼ同様の問題が指摘されている(大隈ら,2007)。そこで本研究では,ELSRPを邦訳し,信頼性と妥当性を検討することを目的とする。

方法
 調査対象者 大学生516名(女性68%)。平均年齢は19.45歳 (SD=1.10) 。
質問紙の構成
 ELSRP-Jの作成手順 ELSRPの原著者から,ELSRPの日本語への翻訳,日本語における調査研究での使用について許可を得た後,LSRP-Jと共通している17項目に関しては,そのまま使用してよいという承諾を得た。次に,残りの19項目に関して本研究の著者3名の合議を経て英文項目を日本語に翻訳した後,英文翻訳業者Editageに依頼して逆翻訳を行った。最後に,適切な翻訳がされているかどうか原著者に確認を求め,承認を得た。
 構成概念妥当性尺度 自己愛人格目録短縮版(以下,NPI-Sとする:小塩,1998b),活動性尺度 (Buss & Plomin, 1984) ,社交性尺度 (Cheek & Buss, 1981) ,恐怖心尺度 (Buss & Plomin,1984) ,衝動性尺度 (Buss & Plomin, 1975) ,日本語版対人反応性指標(以下,IRI-Jとする:日道ら,2017),青年用刺激希求尺度(柴田,2008),向社会的行動尺度(大学生版)(菊池,1988)を使用した。
手続き 
 質問紙の回答は任意であり拒否しても構わないこと,無記名であること,回答途中であっても中断することができること,回答を拒否や中断しても不利益が生じないことといった倫理的な配慮について調査用紙の表紙に明記し,また口頭でも説明した。

結果と考察
 因子構造 原版 (Christian & Sellbom, 2016) に従い,因子数を3に指定して因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った。その結果,いずれの因子に対しても負荷量が.30未満であった5項目を除去して再度因子分析を行い,最終的に3因子構造を得た。したがって,第1因子を「自己中心性」,第2因子を「冷淡さ」,第3因子を「反社会性」と命名した。
 信頼性 ELSRP-Jの各下位因子のα係数を算出した結果,「自己中心性」は .83,「冷淡さ」は .74,「反社会性」は .69であり,おおむね良好な信頼性が示された。
 妥当性 ELSRP-Jと関連尺度の相関係数をTable 1 に示す。まず,NPI-Sの全下位尺度と正の相関が示されたのはELSRP-Jの「自己中心性」のみであった。これは「自己中心性」の構成概念が妥当であることを示すと同時に,他の2因子との弁別性を示すものである。次に,「冷淡さ」はIRI-Jの全下位尺度および恐怖心尺度と負の相関を示した。これらの尺度が,情動反応の低さを特徴とする「冷淡さ」と負の相関を示したことは妥当である。特にIRI-Jとの負の相関が顕著であることは,他の2因子との弁別性を示すものである。さらに,「冷淡さ」は向社会的行動尺度とも負の相関を示した。向社会的行動が他人を思いやる態度だと解釈すると,他人に関心がなく親切心を示さない「冷淡さ」と負の相関を示したことは妥当である。次に,「反社会性」は,衝動性尺度および個人的苦痛尺度と正の相関が示された。これらの尺度が,自己制御ができず衝動的な側面を特徴とする「反社会性」と正の相関を示したことは妥当である。最後に,抑制の解放尺度は,ELSRP-Jの全下位因子と正の相関を示した。この結果は,サイコパシー特性の高い人が短期的な性行動を好む傾向にある (Jones & Paulhus, 2011) ことを示唆する結果である。以上より,十分な妥当性が示された。

キーワード
サイコパシー/因子構造


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