発表

1A-004

親子のモバイル端末利用に関する研究(2)
親の養育態度・育児ストレスとの関連

[責任発表者] 徳田 智代:1
[連名発表者・登壇者] 園田 直子:1, 浦上 萌:2, 浅野 良輔:1
1:久留米大学, 2:椙山女学園大学

問 題
 本研究の目的は,親子のモバイル端末利用と親の養育態度および育児ストレスとの関連を明らかにすることであった。
 2008年以降,我が国でもモバイル端末(スマートフォン・タブレット端末)が急速に普及し,2017年のスマートフォン世帯保有率は75.1%,タブレット端末は36.4%となっている(総務省,2018)。乳幼児の子育てにおいても,スマートフォンはさまざまな場面で利用されている(ベネッセ教育総合研究所,2018)。
 日本小児科医会(2013)はスマートフォンが子どもの健全な育児を妨げるおそれがあるとして「スマホに子守りをさせないで!」と題したリーフレットを作成し,親子でメディアを上手に利用するルールをつくることなどを提言している。また日本小児連絡協議会(2015)は,子どもに対する過剰なメディア接触に起因するさまざまな問題は乳幼児期から生じると指摘している。
 菅原(2018)も言うように,幼児の生活からスマートフォンを完全に切り離すことはもはや現実的ではなく,上手に活用することが重要である。大日向(2018)は夫婦や家族でスマートフォンをどう使うのか話し合う必要があるとし,佐藤(2018)は親のスマートフォンの使い方が子どもに与える影響が大きいことを指摘している。
 しかし,幼児のモバイル端末利用と親の利用の仕方や子どもへの関わり方には関連があるのか,また親自身のモバイル端末利用と子どもへの関わり方には関連があるのかについては明らかにされていない。さらに,負の育児感情を抱く親ほどインターネット依存度が高いことが示されているが(藤岡他,2015),モバイル端末利用と育児感情についての研究は数少ない。モバイル端末を幼児の子育てに上手に活用するために,親子のモバイル端末利用と親の養育態度,育児ストレスの関連を検討することは重要であろう。
方 法
 参加者 株式会社クロス・マーケティングを通じて,長子の年齢が2~6歳であり,スマートフォンかタブレットの少なくともどちらかを所有するモニタと配偶者に対し,インターネット調査を実施した。リクルート調査(2018年7月)において,調査協力に同意したモニタとその配偶者に対し,本調査(2018年7月~8月)の依頼メールを個別に配信した。回答が得られた647組のうち,本調査時点で長子の年齢が7歳に達していたカップル,性別や婚姻年数の回答に夫婦間で齟齬がみられたカップル,両者の回答時間が平均±3SDおよび項目数×2秒以上に含まれなかったカップルを除外した。最終的なサンプルサイズは455組(70.3%)であった。
 測定内容(1)子どものモバイル端末利用:ベネッセ教育総合研究所(2018)に基づき,スマートフォンおよびタブレット利用頻度(1週間あたりの利用回数[5件法]ならびに平日1日あたりの利用時間数[7件法]),スマートフォン・タブレット利用用途(9項目4件法),利用状況(9項目4件法),利用規則(10項目7件法)を測定した。(2)親のモバイル端末利用:スマートフォンおよびタブレット利用頻度を測定した。また,日常生活の中でモバイル端末の利用をどれくらい優先しているかを測定するため,Wakayama Smartphone Dependence Scale(戸田他,2015)の「スマホの優先と長時間使用」因子を抽出した。「スマホに熱中するあまり,学業や仕事に支障をきたすことがある」,「スマホに熱中するあまり,その日の予定が狂ってしまうことがある」などの項目からなる。「スマホ」を「スマートフォンやタブレット端末」と修正して用いた(7項目4件法)。以下,「モバイル端末利用優先」とする。(3)親の養育態度:養護と過干渉からなるParental Bonding Instrument(Parker,1979)を現在の自分の子どもに対する態度を測定するものに改変した尺度(菅原他,2002)を用いた(25項目4件法)。(4)育児ストレス:荒木他(2005)より「子どもの特徴に関するストレスの項目」を抽出して用いた(9項目5件法)。
 倫理的配慮 久留米大学御井学舎倫理委員会の承認を得て行われた(研究番号346)。
結果と考察
 子どものモバイル端末利用,親のモバイル端末利用,親の養育態度,育児ストレスの相関係数を算出した。
 子どものスマートフォン・タブレット利用頻度と父親および母親の利用頻度にはいずれも相関はみられなかった。子どもの利用状況と父親のモバイル端末利用優先にのみ弱い正の相関がみられた(r=.23,p<.001)。
 子どものモバイル端末利用と親の養育態度については,子どもの利用規則と父親の養護,子どもの利用規則と母親の養護に弱い正の相関がみられた(r=.26,p<.001[父]r=.28,p<.001[母])。
 子どものモバイル端末利用と親の育児ストレス,親のモバイル端末利用と育児ストレスについては,いずれも相関はみられなかった。
 親のモバイル端末利用と養育態度の関連について,父親母親ともにモバイル端末利用優先と養護に弱い負の相関がみられた(r=-.27,p<.001[父]r=-.27,p<.001[母])。また,母親のモバイル端末利用優先と過干渉に弱い正の相関がみられた(r=.27,p<.001)。
 つまり,親がスマートフォン・タブレットを頻繁に使っているからといって,子どもに頻繁に使わせるわけではないと考えられる。また,育児ストレスと親子のモバイル端末利用には関連がなく,従来の研究(藤岡他,2015;岡村,2017)とは異なる結果となった。子どもの利用規則をつくっている親は温かい養育をしていること,家事や仕事に支障をきたすほどモバイル端末に熱中している両親は,子どもに温かく優しい声で話しかけたりほほえみかけたりする養育をしていないことが考えられた。

キーワード
モバイル端末/養育態度/育児ストレス


詳細検索