発表

1A-003

親子のモバイル端末利用に関する研究 (1)
モバイル端末利用が幼少期の自己制御に与える影響

[責任発表者] 浅野 良輔:1
[連名発表者・登壇者] 徳田 智代:1, 園田 直子:1, 浦上 萌:2
1:久留米大学, 2:椙山女学園大学

問 題
 スマートフォン・タブレット利用と子どもの発達に関する議論はいまだエビデンスに乏しく,巷には養育者の不安をいたずらに煽る言説も多く流布している。本研究の目的は,スマートフォン・タブレット利用と2–6歳児における自己制御の関連を実証的に検討することであった。
 日本における子どものスマートフォン・タブレット利用に関するデータとして,ベネッセ教育総合研究所 (2014, 2018) による調査がある。測定内容としては,子どもがスマートフォンやタブレットを (a) 1週間,および1日にどのくらい使っているかを問う利用頻度,(b) どのような目的で使っているかを問う利用用途,(c) どのような場面で使っているかを問う利用状況,(d) どのようなルールの下で使っているかを問う利用規則が含まれている。本研究では,ベネッセ教育総合研究所 (2018) を参考に,スマートフォン利用頻度,タブレット利用頻度,スマートフォン・タブレット利用用途,スマートフォン・タブレット利用状況,スマートフォン・タブレット利用規則という5つの指標を測定した。
 子どもの自己制御を気質的特徴からとらえた概念として,エフォートフル・コントロール (EC) がある。ECとは,顕在的な反応を抑制して非顕在的な反応を促進させる注意制御システムと定義され,注意や行動の意図的ないし自発的な調整に関わる個人差である (Rothbart et al., 2000; 山形他, 2006)。多くの母親は子どものスマートフォン・タブレット利用に抵抗を感じており (それぞれ,76.4%,70.4%),その原因として,“夢中になり過ぎる”,“長時間の視聴や使用が続く”,“次のことに切り替えしづらい”,“大きくなったとき依存しないかが心配”といった自己制御の問題を挙げている (ベネッセ教育総合研究, 2018)。したがって,スマートフォン・タブレット利用が自己制御の個人差を表すECに与える影響を検討することは重要といえよう。
方 法
 倫理的配慮 本研究は久留米大学御井学舎倫理委員会より承認を得て行われた (研究番号346)。
 参加者 株式会社クロス・マーケティングを通じて,長子の年齢が2–6歳であり,スマートフォンかタブレットの少なくともどちらかを所有するモニタとその配偶者に対し,インターネット調査を実施した。リクルート調査 (2018年7月) において調査協力に同意したモニタとその配偶者に対し,本調査 (2018年7月–8月) の依頼メールを個別に配信した。回答が得られた647組のうち,本調査時点で長子の年齢が7歳に達していたカップル,性別や婚姻年数の回答に夫婦間で齟齬がみられたカップル,両者の回答時間が平均±3SDおよび項目数×2 秒以上に含まれなかったカップルを除外した。最終的なサンプルサイズは455組 (70.3%) であった。
 測定内容 (1) スマートフォン・タブレット利用:ベネッセ教育総合研究所 (2018) に基づき,子どものスマートフォン利用頻度 (1週間あたりの利用回数 [5件法],平日1日あたりの利用時間数 [7件法]),タブレット利用頻度,スマートフォン・タブレット利用用途 (9項目4件法; αs = .78 [夫], .79 [妻]),スマートフォン・タブレット利用状況 (9項目4件法; αs = .85 [夫], .85 [妻]),スマートフォン・タブレット利用規則 (10項目7件法; αs = .88 [夫], .87 [妻]) を測定した。(2) EC:Putnam & Rothbart (2006) が作成し,草薙・星 (2017) が日本語訳した尺度を用いた (12項目7件法; αs = .80 [夫], .81 [妻])。
 分析計画 ロバスト最尤推定法による構造方程式モデリングを用いて,共通運命モデル (Ledermann & Kenny, 2012, 2017) による分析を行った。説明変数間に中程度以上の相関が予想されたため,モデルを3つに分割することで多重共線性のリスクを回避した。子どもの性別と年齢の影響を統制するため,それぞれECに対するパスを仮定した。
結果と考察
 モデル1 (CFI = .984, RMSEA = .047, SRMR = .028),モデル2 (CFI = .992, RMSEA = .034, SRMR = .026),モデル3 (CFI = .992, RMSEA = .032, SRMR = .027) は,いずれもデータに対する良好なあてはまりを示していた。Table 1に,それぞれのモデルの推定値を記す。モデル1では,ECに対するスマートフォン利用頻度,タブレット利用頻度,スマートフォン・タブレット利用用途の影響は認められなかった。モデル2でも,ECに対するスマートフォン利用頻度,タブレット利用頻度,スマートフォン・タブレット利用状況の影響は認められなかった。モデル3では,スマートフォン・タブレット利用規則のみがECに対して有意な弱い正の影響を与えていた。なお,全モデルを通じて,ECに対して子どもの性別が非常に弱いものの有意な正の影響を与えており,同じく子どもの年齢も有意な弱い正の影響を与えていた。
 スマートフォン・タブレット利用を幅広くとらえ,2–6歳という幼少期における自己制御との関連を検討したのは,われわれが知る限り本研究が初めてである。本知見は,モバイル端末利用が子どもの自己制御に悪影響を及ぼすという懸念に対して,科学的根拠に基づいた一石を投じるものとなる。

キーワード
スマートフォン/タブレット/自己制御


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