発表

3C-002

ワークライフバランスの定量化・可視化に関する研究

[責任発表者] 田畑 智章:1
[連名発表者・登壇者] 伊波 和恵:2, 篠﨑 香織:3
1:東海大学, 2:東京富士大学, 3:実践女子大学

研究目的
ワークライフバランス(WLB)の研究分野では,個人もしくは組織の WLBの状態そのものを定量的に捉える研究はほとんど見られない.これに対して田畑らはWLBの状態を定量的に捉えるモデルとして,貸借対照表を援用したワークライフバランスシート(WLBS)を提案した(図1).本研究ではこのWLBSをベースに,個人および組織(職場)単位でWLBを定量化・可視化するモデルを構築し,その妥当性・有効性を検証することを目的とする.

研究方法
貸借対照表における財務分析のアナロジーとして,WLBSからWLBの側面が表現可能な指標の作成を行う.これら指標群,特に「自身の持つ余裕時間」と「他者からの援助の度合い」をクロスさせたWLBポートフォリオに対して,質問紙調査より妥当性の検証を行う.

ワークライフバランスシート(WLBS)
ある個人に要求される必要時間を考え,これが個人の持つ24時間に収まるかどうかを検討する.その際.他者からの援助を「時間を借りている」と捉え,個人の持つ資産としての時間に対する配分と,他者からの時間の借り受けの状況に対して,貸借対照表の形式で表したものをワークライフバランスシート(WLBS)と呼ぶ(図1).

他者からの援助と自分の時間の余裕の関係
「自身の持つ余裕時間」と「他者からの援助の度合い」に対して次のように軸を設定し,2次元プロットを考える(図2).これをWLBポートフォリオと呼ぶこととする.

縦軸【剰余時間比率(剰余時間=-1×不足時間)】
剰余時間比率=((時間負債合計+自己時間資本)-総時間資産)/総時間資産

横軸【他者援助比率】
他者援助比率 =(時間負債合計-自己時間資本)/自己時間資本

データによる検証
神奈川県の自動車等部品メーカーE社の従業員19名(有効18名)に,要求時間項目や他者からの援助状況,仕事生活満足度,疲労度について質問紙調査を行った.調査期間は2018年9月10日~9月14日および12月10日~12月14日である(5日分を2回).

結果・考察
「育児をしていないケースよりもしているケースのほうがWLBはとりにくい」「仕事が忙しくなるとWLBがとりにくい」などが傾向としてみられ,過去の事例研究上の仮説と矛盾しないことから,本研究のモデルはWLBを適切に捉えているものと考えられる.ただし,今回サンプル数が少なかったため,統計上の有意差は得られないものもあった.

結論
本研究では,個人および組織の時間管理に対して貸借対照表をもとに作成したWLBSを利用して,他者からの援助とWLBについて定量化・可視化できるモデルを構築し,その妥当性・有効性を検討した.これにより個人や組織に対するWLBへの具体的な支援,指示が可能となろう.今までのWLBに関する議論を深める土台と成り得るものと考えられる.

なお,本研究は科学研究費18K01765の助成に基づくものである.

キーワード
ワークライフバランス/定量化/貸借対照表


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