発表

3C-001

成果に基づく創造性の定義に関する理論的考察

[責任発表者] 山口 洋介:1
[連名発表者・登壇者] 三宮 真智子:1
1:大阪大学

【問題】 「創造性とは何か」という問題は,創造性研究にとって出発点でもあり,最終的に目指すべき到達点でもある(恩田,1966)。「創造性」という言葉は,さまざまな対象に向けて用いられる(Rhodes,1961)。大別すると,おもに,1)人物や集団に備わった素質や能力を指す場合,2)成果を生み出す活動自体を指す場合,3)「創造性あふれる研究」といったように成果の性質を指す場合,が挙げられる。こうした各側面について検討することは重要であるが,なかでも基礎となるのが成果に関する側面である。なぜなら,創造的な人物に備わる特徴も,創造的なプロセスも,それらの内容はどのような成果が創造的とみなされるかという問題に依存するためである(Amabile,1982)。
【創造的な成果とは?】 成果に対して「創造的」という言葉が用いられる際,さまざまな意味が付与されてきた。例えば,「神秘的」「不思議な」のようなニュアンスの場合もあれば,「感情的」「即興的」といった言葉と同様の意味で用いられる場合も見受けられる。多様な用法を網羅する最大公約数的な定義を導き出すことは困難であるとともに,「創造的」の第一義ではなく,むしろ副次的な要素であるとみなした方がよいと考えられる内容も少なくない。近年の研究においては,「創造的」を「新しい(new)」という観点と「有用な(useful)」という観点の2つの軸で捉える見方が大勢を占める。前者の観点は,他に「新奇な(novel)」や「独自な(original)」「意外な(unexpected)」などの概念で捉えられることもある。後者の観点に関しては,「適切な(appropriate)」や「価値がある(of value)」「適合した(fit)」「有意味な(meaningful)」「効果的な(effective)」「満足できる(satisfying)」といった表現で称されることもある。この一方で,「新しい」「有用な」といった概念自体,厳密に定義することは難しい。つまり,一言に「新しい」といっても,誰にとって新しいことを意味するのか,また,すべての成果が何かしらの点で新しい部分も類似した部分も有しているため,どのような点においてどれほど新しければ,「創造的」とみなしてよいのかという問題など,これ以上の点において理解が進んでいないというのが現状である(Glăveanu,2014; 牧野,1964)。
 本研究では,まず「新しい」という観点に関して,「習慣的でない(unconventional)」という表現を用いることを提案する。「新しい」ことが創造的とみなすために必須の条件であるならば,あらゆる時代(世代)および社会(コミュニティ・国・文化)において,これまでにその成果が生み出されていないことを確かめなければならない。しかし,そのような作業を全ての成果に対して実施することは非現実的であり,そこまで行う必要性も小さいだろう。現実的には,成果が置かれる文脈において習慣的・支配的な考え方に沿ったものではないという程度の意味で機能しており,それが最小限の条件なのではないかと考えられる。習慣は,時代および社会によって変化するため,何が創造的であるかも変化する。いいかえれば,ある時点でありふれているとみなされた成果も,時代や文脈が変化すれば,創造的たり得るということである。「新しい」や「独自な」という表現では,この意味合いを十分にカバーできておらず,準拠枠によって変化するという点について曖昧さを残している。
 非習慣的であることは,少なくとも創造性の萌芽として認められるべきである。しかし,習慣的でなければ,どんな成果でもよいわけではない。単に価値や意義が乏しいという理由で,その成果がこれまで生み出されてこなかっただけかもしれない。そこで,「有用性」の観点を付加することが必要になる。創造性にはさまざまな程度が存在しており,有用性の高さが非習慣的成果の正当性を重みづけるような役割を果たしていると考えられる。有用性は,既存の成果との比較によって相対的に決定される。Figure 1は,その関係性を理解するための「的当て」の比喩である。的の中心に当たるほど価値があるが,それと同じくらい他の人が当てた場所との相対的な関係が重要である。つまり,他の人よりも内側に当てることができた場合には,大きな意味を持つ一方で,中心付近に当てることができたとしても,すでに他の人がより内側に当てていた場合,それほど価値が認められないということである。有用性もまた,絶対的な基準があるわけではなく,時代や社会によって規定されるという性質を有している。
【今後の課題】 成果に関する創造性の高さを,どう評価すればよいのだろうか。本研究で検討してきた定義に基づくならば,同じ成果であっても評価は変動するため,文脈から切り離して,成果に内在する性質として創造性を捉えることは困難だろう。Amabile(1982)は,主観的な基準に依存した手法として,CAT(Consensual Assessment Technique)を提案した。同様の立場に基づき,例えば,心理物理学的測定法における知見を適用することで,「非習慣性」および「有用性」の観点を丁度可知差異(Just Noticeable Difference)のような形で評価することもできるかもしれない。
【付記】 本発表は科学研究費(若手研究:18K13236,研究代表者:山口洋介)の補助を受けた。

キーワード
創造性/創造的思考/アイデア生成


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