発表

3B-002

Likert法における適応型選択肢実用化に向けた取り組みー評定尺度表現が回答に与える影響ー

[責任発表者] 脇田 貴文:1
1:関西大学

問題と目的
 心理学では,扱う構成概念を測定するために,回答者に複数の項目と1セットの選択肢を提示して回答を求めるLikert法を用いた心理尺度を用いることが多い。しかし,実際の測定場面において生じる問題の1つとして,尺度得点が極端に高いもしくは低くなる天井効果もしくは床効果により個人差が適切に測定されないことが挙げられる。解決策としては,理想的には,より高い(もしくは低い)レベルを測定する項目を多数用意することが望まれるが,構成概念の測定上,より多くの項目を作成する,測定レベルを項目内容で調整することは難しい。
 本研究が念頭におく適応型選択肢は,回答者の潜在特性レベルに応じて,選択肢表現を変化させることにより,得点の天井効果や床効果を生じにくくするというアイデアである。本研究ではこのアイデアを実現するための基礎的なデータを報告する。

方法
 質問紙 中・高校生を対象とした,学びに関する項目を用いた。2回の調査のうち,項目内容が同一の項目23項目に関して,因子分析を行い,最終的に14項目を抽出した。項目は「学習を進める中で,関連しそうな様々な情報を収集している」などであった。本研究では2種類の評定尺度表現,A:「1. まったくあてはまらない」「2. あまりあてはまらない」「3. どちらともいえない」「4. ややあてはまる」「5.とてもよくあてはまる」,B:「1. あてはまらない」「2. どちらともいえない」「3. ややあてはまる」「4. ある程度あてはまる」「5.とてもよくあてはまる」を用いた。
 対象者と実施時期 中学1年生から高校3年生を対象とし,A:2015年,B:2016年に質問紙調査を実施した。
 分析方法 IRTモデルはGeneralized Partial Credit Model(Muraki, 1992)を用い,パラメタ推定には,PARSCALE(Muraki & Bock, 2003)を用いた。本研究では,両パターンのcategoryパラメタの比較に関心があるため,slopeおよびlocationパラメタに関して等値制約を置くDIF分析の方法を用いた。評定尺度間の心理的距離の検討にはWakita, Ueshima, & Noguchi(2012)による方法を用いた。

結果 
 尺度構成を行うために23項目に対して因子分析(主因子法)を行った。因子負荷量が.50を下回る項目を削除し,最終的に14項目を選択した。信頼性係数の推定値としてCronbach’s αを求めたところ,いずれも.900であった。
 14項目による尺度得点を算出したところ,A: 3.48 (SD=0.67),B: 3.35 (SD=0.82)であり,評定尺度表現を厳しめにしたパターンBで尺度得点が低く,標準偏差は大きかった。また尺度得点の分布をFigure 1に示した。また,選択肢間の心理的距離として,IRTのcategoryパラメタの値から計算される変換後尺度値をFigure 2に示した。

考察 
 本研究では,評定尺度表現が異なることの影響を検討することが目的であった。尺度得点の平均,標準偏差の比較から,Bの方が個人差の測定という点で望ましい結果であるといえる。評定尺度表現をBのようにすることは,必ずしも一般的ではなく,従来のLikert法の評定尺度表現とは異なるものである。このような場合に懸念されるのが,選択肢間の等間隔性だろう。しかし,必ずしも心理的距離が崩れることも無く,むしろAよりもBの方がより等間隔性がみたされていると考えられる。
 本研究では,評定尺度表現の違いにより尺度得点の分布が変わること,必ずしも一般的な評定尺度表現でなくても,選択肢間の等間隔性が満たされたことが示された。本研究の限界としては,同時期に収集されたデータではないため,尺度得点の分布の違いが必ずしも評定尺度表現の違いからのみ生じたとはいえない点が挙げられる。

キーワード
Likert法/項目反応理論


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