発表

3A-002

ベイズファクターを用いた1要因分散分析における逐次解析の検討

[責任発表者] 馬 景昊:1
1:早稲田大学

目的
 近年,研究の再現可能性問題が注目され,多くの心理学研究の再現可能率が低ことが報告された(Open Science Collaboration, 2015)。John et al. (2012) は再現可能性が低い原因として,好ましくない研究行為 (Questionable research practices, QRPs) を挙げている。QRPsとは,論文を発表するために研究実施中に行われた様々な問題行動のことである。
 QPRsの一つとして,John et al. (2012)は「望ましい結果がえられた時点で,計画より早くデータ収集を中止すること」を挙げた。こうすることにより,偽陽性の可能性が有意水準を上回る恐れがあるとされている(Simmons et al.2011; 豊田, 2018)。偽陽性の結果の割合は期待値以上で,研究の追試が失敗する一つの原因と考えられる。この問題は,ベイズ統計学の視点を入れることによって回避する可能性がある。ベイズ統計学にはベイズ更新という概念が存在し,データを集めながら,結果を検討するのは自然的なこととされている。Schönbrodt(2017)はベイズファクター(Bayes factor, 以下BFと記す)を用いた逐次分析が一定条件を満たせば,対応のないt検定でも利用可能と指摘した。本研究では,BFを利用した1要因分散分析における逐次解析が可能となる条件を検討する。
方法
 BFによる逐次解析では,解析解を求めることは極めて困難である。そのため,本研究ではモンテカルロ法で,近似的な数値解を求めた。統計解析言語R(version 3.4.4)を利用して,スクリプトはSchönbrodt(2017)がOpen Science Framework(OSF)で公開したスクリプト(https://osf.io/qny5x)に基づいて,作成した。条件別にシミュレーション50004回(マルチコアを利用するため,シミュレーション回数は筆者のcpuコアに合わせて,6 x 8334 = 50004であった)を行った。
 シミュレーションの疑似コードを以下に示す
1. BFの事前分布尺度r;水準数C;効果量ES;初めて停止する際の標本量N;停止ラインbfを決める
2. 効果量ESに従って母集団の乱数列Pを作る
3. 母集団の乱数列PからN 個のサンプルを抽出する
4. 事前分布rの元BFを計算,もしBF>bfあるいはBF<1/bfなら,中止して,この時のサンプルサイズ,BFを記録する,そうでなければ,5を進む
5. 水準数に応じて母集団からさらにx(通常x = 1)個の標本を抽出,各水準の標本に加えて,4に戻る
結果
 (Open Science Collaboration, 2015)の追試結果の平均効果量はr = .20(η2 = .04に相当する)であったため,本研究もη2 = .04を用いて結果を検討した。1要因3水準,BFの事前分布r = 1の時,各停止辺界での第Ⅰ,Ⅱ種の誤りの割合を表1に示した。
考察
 BF = 3の場合,第一種の誤りの割合は.04であった。これもすでに従来の方法で良く使われる.05以下であった。しかしη2 = .04,BF = 3の場合,第Ⅱ種の誤りの割合は.82(検定力 = .18)であって,圧倒的に検定力不足であった。検定力を.08以上に上回るため,停止辺界は約25以上であることが明らかにした。Johnson(2013)は結果が有意と主張してよいの,BFの値が20以上であることが望ましいと指摘したため,BFによる逐次解析を利用する際,20以上のBFが望ましい。
 同じ検定力の元に,普通の分散分析で必要なサンプルサイズ(計算はG*Power 3.1.9.2を利用した)を比較したところ,検定力 = .18(BF = 3)の時,逐次法のサンプルサイズn = 35に対して,分散分析n = 52であった。一方,検定力 = .87(BF = 30)の時,逐次法のn = 299に対して分散分析n = 279であった。逐次法の場合,検定力の増加に伴い,必要なサンプルサイズがより早く増加することが示唆された。しかし,逐次解析のサンプルサイズは非固定のため,検定力 = .87(BF = 30)の時,停止する際のサンプルサイズは279以下である確率は53%であった。
 以上の結果から,BFを用いる1要因分散分析の逐次解析は可能であることが示された。また,ある範囲,同じ検定力において,逐次法は普通の分散分析より必要なサンプルサイズが少ないことが示された。
 今回のシミュレーションはバランスデザイン(各水準の人数が等しい)であり,アンバランスデザインの時結果は変わる可能性がある。また,要因数,水準数の変化によって,結果が変わる可能性がある(本研究は1要因3水準のみを取り上げた)。これらの変化は逐次法の結果に如何なる影響を及ばすのかを検討することが今後の課題である。
謝辞
 本研究は,立教大学現代心理学部心理学科に提出した卒業論文の一部である。本研究にご指導いただいた小口孝司氏(立教大学),豊田秀樹氏(早稲田大学)及び大橋洸太郎氏(文教大学)に心より感謝申し上げます。

キーワード
ベイズファクター/逐次解析/停止ルール


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