発表

2D-002

もういくつ寝るとアクセプト?(2)
心理学分野の過去10年の学術論文の本数と掲載までの日数

[責任発表者] 大上 真礼:1
[連名発表者・登壇者] 寺田 悠希#:2
1:東海大学, 2:東京大学

目 的
 世界における日本の学術研究は,質・量ともにプレゼンスの低下が指摘されている。一例として,文部科学省 科学技術・学術政策研究所(2017)の調査では,過去10年間で日本の学術論文数は伸び悩みが見られるとされている。しかしこれは主として自然科学分野の論文数についての調査であり,心理学分野においても同様であるかは明らかではない。
 ところで,大学院生・若手を含む研究者のキャリア形成に際しては,学術論文を執筆・投稿し業績を重ねていくことが重要である。論文業績の評価には研究テーマや調査・分析手法はもちろん,論文の質に相当しうる論文誌のImpact Factorや論文の量である執筆論文数なども評価に関わる。さらに,論文の執筆者・投稿者にとっては,論文投稿から掲載決定までの期間の把握も計画的なキャリア形成のために求められる。大上・寺田(2018)は2015年度に発行された心理学の主要27誌の原著論文の投稿(受稿)日から掲載決定(受理)日までの日数を調査したが,特定の1年間ではない時系列的な変化については把握できていない。
 以上を受け,本研究では過去10年間の心理学分野の主要な学術誌の論文数および受稿日から受理日までの日数について調査する。これにより,心理学分野の発展・衰退について考察するための一つの基礎的資料および,心理学研究者のキャリア形成に向けた有用な知見を提供する。

方 法
 2008年から2017年の間に発行された心理学分野の査読付き学術誌(加藤ほか(2013)の研究で用いられた学術誌27誌)に掲載されている原著論文およびそれに準じる区分の論文(例えば,精神医学の「研究と報告」,心理臨床学研究の「研究論文」など)を対象とした。なお,依頼論文,特集論文は除外した。
 調査内容は,各雑誌の年ごとの原著論文数と各論文の受稿日および受理日(論文誌本体,J-STAGEにてデータ取得)であった。

結 果
 対象となった論文誌のうち受稿から受理までの日数(以下,「平均掲載日数」)のわかった25誌の合計原著論文数は,過去10年間で減少傾向にあった(Figure 1)。対象期間内の原著論文数の平均が10本以上であった8誌(以下,「主要8誌」)の論文数と平均掲載日数の経年変化は,Figure 1およびFigure 2のようになった。平均掲載日数については,この10年間で主要8誌間のばらつきが小さくなっているといえる。

考 察
 心理学分野における合計原著論文数の減少の一因として,学術誌に論文を執筆・投稿する必然性のある大学院生(特に博士後期課程学生)の減少が考えられる。また,平均掲載日数のばらつきが小さくなっていたことには,論文投稿の電子化などの投稿や査読の手続きの変化が影響している可能性がある。
 今後,論文本数や平均掲載日数の予測やさらなる分析を行うために,雑誌ごとの論文採択率や投稿・査読の方法(査読者の人数,修正・投稿可能な回数等)といった個々の事情も加味した分析を行っていく必要がある。各雑誌・各学会についてのより詳細な情報の収集のため,編集委員へのヒアリングの実施などが求められる。

引用文献
加藤司・馬場真美子・太幡直也・下田俊介・福田美紀・大久保暢俊 (2013). インパクトファクターからみた“心理学研究”の評価 心理学研究, 84(2), 146-155.
文部科学省 科学技術・学術政策研究所 (2017). 科学研究のベンチマーキング2017 調査資料-262
大上真礼・寺田悠希 (2018). もういくつ寝るとアクセプト?: 心理学分野の学術論文の掲載までの日数についての分析 日本心理学会第82回大会論文集 https://www.micenavi.jp/jpa2018/img/figure/10207.pdf 

キーワード
査読/日数/論文数


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