発表

2A-002

事例問題は何を測定しているのか?(1)
大学生における公認心理師国家試験事例問題の正答率

[責任発表者] 高坂 康雅:1
1:和光大学

問題と目的
公認心理師法が施行され,2018年9月(本試験)と12月(追加試験)に第1回国家試験が実施された。国家試験は154問で構成され,その問題は一般問題と事例問題に大別される。一般問題は1問1点であるのに対し,事例問題は1問3点とされた。事例問題は臨床的センスを問うものと位置づけられているが,正解の根拠は不明であり,共感に関わるワードを見つけることができるなど,国語力があればある程度解けると指摘されている(丹野, 2018)。
そこで,本研究では,実際に国家試験で出題された事例問題を臨床的なトレーニングを受けていない一般の大学生がどの程度正答できるかを把握することを目的とする。

方 法
調査対象者 東京都内の大学2~4年生46名(男性28名,女性18名)を対象者とした。いずれも心理学を学ぶコースに在籍しているが,臨床的な専門的トレーニングは受けていない。
調査内容 本試験・追加試験における事例問題のなかから,「助言」「支援」「対応」「提案」「言葉かけ」の方法・内容を尋ねる問題を抽出した。このうち①適切な文を1つ選択する問題(本試験17問,追加試験10問)から6問,②不適切な文を1つ選択する問題(本試験3問,追加試験6問)から3問,③適切な文を2つ選択する問題(本試験1問,追加試験3問)から1問,計10問をランダムに選択し,使用した。
調査方法 講義時間の一部を用いて,調査を実施した。その際,国家試験の問題であることなどは説明せずに,思った通りに解答するよう求めた。実施時間は25分程度であった。

結果と考察
各問題の正答率 各問題の解答の分布と正答率をTable 1に示した。①適切な文を1つ選択する問題の正答率は,87.0%~39.8%であった。特に,追問149,本問72,本問139,本問70は正答率60%を大きく超えており,大学生がもつ一般的な感覚と国語力があれば,ある程度正答を導き出せることが明らかとなった。②不適切な文を1つ選択する問題の正答率は30.4%~17.4%と,①よりも低かった。ただし,追問147はストレスチェック制度に関する問題,本問75は障害者の就労支援に関する問題であり,制度を理解していなければ正答に辿り着くことは難しかったため,正答率が低くなったと考えられる。③適切な文を2つ選ぶ問題において完全正答できた者は45.7%であり,約半数が正答できた。
 これらから,本研究で抽出した問題については,一部は専門的な知識が必要であり,そのために正答率も低下するが,そのような専門的な知識を必要としない問題であれば,一般の大学生であっても,半数以上(中には90%近く)が正答できる問題であったことが確認された。
対象者の正答数 対象者ごとに全10問の正答数を算出したところ(Figure 1),5問が15名(32.6%)と最も多く,4問(12名,26.1%),6問(11名,23.9%)が続いた。最小は2問(3名,6.5%)であり,最高は9問(1名,2.2%)であった。
 本研究で抽出した問題においては,一般の大学生であっても約半数は正答できることが明らかとなった。
まとめ これら結果は,「『事例問題を臨床センスを計れる』というのは幻想」(丹野, 2018)という指摘をある程度支持するものであるといえる。実際の国家試験受験者の正答率が明らかでないため,本研究における大学生の正答率が高いのかどうかを明らかにすることはできないが,少なくとも,一般の大学生であっても用意に正答できる問題が出題されており,それに対して1問3点という配点がなされていることの適切さについては,今後検討していく必要があると考えられる。

キーワード
事例問題/国家試験/公認心理師


詳細検索