発表

2A-001

ソーシャルスキル生起過程モデルにおけるスキルに潜在ランク理論を適用した段階的評価

[責任発表者] 酒井 智弘:1
[連名発表者・登壇者] 相川 充:1
1:筑波大学

目的
 ソーシャルスキル生起過程モデルには,「相手の反応の解読」「対人目標と対人反応の決定」「感情の統制」「対人反応の実行」の各過程があり(相川, 2009),これらの各過程では,順に,「解読」「意思決定」「感情統制」「記号化」の4つのスキルが求められる(相川, 2013)。本研究では,ソーシャルスキル生起過程モデルに基づき,以上の4つのスキルの測定に潜在ランク理論(荘島, 2010)を適用する。これにより,ソーシャルスキル生起過程モデルのどの過程において,個人のスキルがどのような状態にあるのかを評価できる尺度を開発することが本研究の目的である。

方法
 ソーシャルスキル生起過程モデルに基づくスキル尺度 「解読」「意思決定」「感情統制」「記号化」の各スキルの状態を測る項目は,それぞれ15項目(計60項目)を作成した。教示は,「あなたが,日常生活で人と関わる時についてお聞きします。以下の各項目にあることは,あなたにどの程度,あてはまりますか?以下のそれぞれの項目に対して最もあてはまると思う数字の,いずれかに◯をつけて答えてください。」であった。回答は,8件法(1:全くあてはまらない,2:ほとんどあてはまらない,3:めったにあてはまらない,4:あまりあてはまらない,5:少しあてはまる,6:まあまああてはまる,7:とてもあてはまる,8:必ずあてはまる)で求めた。

結果と考察
 分析対象者 大学生286名の調査回答に不備があった欠測データを除外した268名(Mage=19.59±1.26)であった。
 高次因子分析 Hair et al.(2014)を参照して,4つのスキルそれぞれの確認的因子分析を行い,標準化係数.70を基準に項目を選定した。その結果をもとにFigure 1の高次因子モデルを構築した。このモデルの適合度指標は,GFI=.87, AGFI=.83, CFI=.93, RMSEA=.08であった。この結果から,ソーシャルスキル生起過程モデルにおける4つのスキルを測れる信頼性の高い項目を選定したといえる。
 双因子分析 松田・狩野(2005)を参考にして,Figure 1の結果から,ソーシャルスキルを「一般因子」,4つのスキル因子それぞれを「グループ因子」とする双因子分析を行った。分析の結果,「項目24」の標準化係数が有意でなかったため除外し,モデルの適合度の相対的指標であるAICの値を規準にモデルを比較した。最終的に採用したモデルの適合度指標は,GFI=.90,AGFI=.86,CFI=.95,RMSEA=.07であった。この結果から,ソーシャルスキル生起過程モデルにおける4つのスキル因子を含む「ソーシャルスキル全般」を一因子で測れる信頼性の高い項目を選定したといえる。
 潜在ランク分析 双因子分析の結果から,ソーシャルスキル全般は一因子と仮定できるため,ソーシャルスキル全般の潜在ランク構造を検討した。潜在ランク分析は,Exametrika (Shojima, 2008)を用いて,潜在ランクの推定を,LRT-SOM,段階モデルに設定し,事前分布と単調増加制約を仮定せずに,ランク2から10までのそれぞれのモデルを分析した。分析の結果,AICの値が最も低かった「ランク4」のモデルを採用した。ランク4のモデルは,潜在ランクの順序配置条件が満たされており,適合度は十分に高かった(RMSEA=.00)。そこで,ランク4の項目参照プロファイルとIRP指標を算出した(Table 1)。ランクごとの特徴は,ランク1が「ソーシャルスキル全般を発揮するのが苦手なランク」,ランク2が「解読スキル以外のスキルを発揮するのが苦手なランク」,ランク3が「感情統制スキル以外のスキルを発揮するのが得意なランク」,ランク4が「ソーシャルスキル全般を発揮するのが得意なランク」と解釈できる。

主要引用文献
相川 充 (2009). 新版 人づきあいの技術―ソーシャルスキルの心理学―サイエンス社
荘島 宏二郎. (2010). 第4章ニューラルテスト理論――学力を段階評価するための潜在ランク理論―― 植野 真臣・荘島 宏二郎(著) 学習評価の新潮流 (pp.83-111) 朝倉書店.

キーワード
ソーシャルスキル生起過程モデル/潜在ランク理論/自己評定尺度


詳細検索