発表

1C-001

「心理学研究」の研究 (3)

[責任発表者] 小野寺 孝義:1
1:広島国際大学

 本研究では日本心理学会が発行している機関誌「心理学研究」について分析を行った。「心理学研究」は創刊された1926年以来,日本語で書かれた日本の心理学を代表するジャーナルとして機能してきた。個別の専門学会としては会員数がより多い学会も存在するが,多くの異なる専門分野の研究者が投稿・発表できる共通の場を提供してきたという意味では,日本心理学会が日本を代表する心理学研究の学会がであり,その機関誌「心理学研究」が日本の心理学の発信場所であるとみなしてもよいであろう。
 これまでの一連の研究で「心理学研究」に投稿する著者の出身大学や投稿した論文の種別,被験者の属性について分析を行ってきた。それにより,ジャーナル全体としてみたときの日本の心理学の特徴と時代的な変遷を明らかにすることを目指してきた。本研究では引き続き,マクロ的な分析を行い,今回はキーワードについて分析した。なお,今回の分析においてキーワードの持つ内容については扱わず,キーワード自体を対象とした。キーワードの内容まで踏み込むことはデータベースが完成した時点で行う今後の課題としたい。

 方 法
 対象とするのは2001年から2011年までに「心理学研究」に載った557本の論文である。この期間に限ったのは「心理学研究」の投稿においてキーワードが必要とされるようになったのは2001年からであることと,現在も入力継続中のデータベースで10年間が利用可能だったからである。なお,データベースは個人的に構築されたものである。
 キーワードの総数は2382個であった。

 結 果
 表1には出現度数上位のキーワードと出現度数,累積%を示している。最も出現回数が多いキーワードは15回現れている。出現度数7回までが示されているが,6回までの累積%は6.68%,5回は9.82%,4回は13.01%,3回は18.05%であり,2回は30.56%である。これにより,出現度数が1回であるキーワードは全体の全体の69.44%で約7割はユニークなキーワードが採用されていることがわかる。
 それぞれの年で2回以上出現した上位キーワードのみを取り出し,出現した西暦に対応させてみた。すると限られた期間にのみ上位に挙がるキーワードと恒常的に現れるキーワードがあることがわかった。恒常的に上位を占めるのは depression,working memory,mental health であり,10年間で4~5回は上位を占めていた。
 一方で上位にあるが,出現する西暦が1年だけの集中型のキーワードは structural equation modeling,Big five,
aging などであった。structural equation modeling が上位にくるのは2004年だけであり,Big five は2005年,
aging は2011年だけである。最後の aging は,今回のデータで利用したデータの制約で集中しているように見える可能性がある。データの最後の年だからである。もし,そうであるならば高齢化社会に関心が向いた研究が今後,増加する流れを示している可能性も考えられる。structural equation modeling については共分散構造分析が一気に広まり,一過性の流行があったことを示している。Big five についても同様である。
 1年限りの集中した流行ではないが,2~3年間ある程度の集中した流行を示したキーワードは validity と reliability である。いずれも統計的な概念と関わり,妥当性と信頼性はセットとしてキーワードとして採用された可能性が高いが,
validity は2003年と2005年,reliability は2002年,2003年,2005年に上位に現れている。次々と生み出される妥当性概念の混乱に,当時,大きな修正が加えられたことも影響している可能性があるが,論文の詳細まで立ち入らないと,結論は出せない。
 集中した期間に現れるわけではないが,ある程度コンスタントに現れているキーワードは social support と visual search である。social support は常に上位に来る depression や mental health と関わりが深いことを考えると精神健康に関わる研究が心理学研究では主流になっていることがわかる。一方で visual search や working memory が挙がってくることから,視知覚のような基礎研究の投稿も多いことがうかがえる。

 考 察
 本研究ではキーワードについて焦点を絞った分析を行った。キーワードが研究論文のカテゴリー化に役立つような共通のものではなく,ユニークなものが多くを占めることがわかった。それにも関わらず,キーワード自体だけからでも研究の流行について示唆が得られることがわかった。キーワードの内容分析まで進むことで,個別の研究からだけでは見えてこなかった全体としての心理学研究の方向性が見えてくることが期待される。

キーワード
ジャーナル分析/データベース/書誌情報分析


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