発表

1A-002

Web調査における画面レイアウトの違いは回答姿勢に影響を与えるか?
同一の調査項目を調査会社1社のモニタに施行して

[責任発表者] 高橋 伸彰:1
[連名発表者・登壇者] 成田 健一:2
1:佛教大学, 2:関西学院大学

目的

 インターネットが普及するにつれて,Web調査を用いた学術的研究が増えてきた。しかし,その一方で,Web調査によるデータが毀損されている可能性が指摘されており,このような回答姿勢の問題は努力の最小限化 (Satisficing) により説明がなされている。高橋・成田 (2018) は同一の調査会社1社のWeb調査モニタを対象として,Web調査および郵送調査におけるSatisficing回答傾向を比較した。その結果,郵送調査におけるSatisficing回答はほとんどみられなかったことから,Web調査におけるデータの毀損は調査モニタによるものではなく,Webという回答方法によって生ずると考えられた。本研究では,同一の調査項目で構成されているがWeb画面の見た目が異なる2つの調査を施行して,画面レイアウトがSatisficing回答傾向に影響を与えうるか検討した結果を報告する。

方法

調査参加者・手続き
いずれの画面レイアウトでの調査でも,調査時期は2019年3月であり,同一の調査会社1社を通じて,参加依頼を行なった。また,調査対象者は,調査を委託した調査会社に登録する20歳以上のモニタとし,地域・人口動態を考慮した。画面1の調査では男性264名,女性284名が参加し,計548名が参加した (平均年齢49.90±15.66歳)。画面2の調査では男性198名,女性202名が参加し,計400名が参加した (平均年齢50.04±15.60歳)。

Satisficing回答の指標
 同一回答 精神的健康の指標であるK6とWHO-5の2尺度,計11項目とビッグファイブパーソナリティを測る尺度であるTIPI-Jの10項目を用いた。前者の2尺度では,回答者の精神的健康が低ければK6では高く,WHO-5では低くなる。また,後者のTIPI-Jでは5因子を仮定されており,かつ逆転項目を含むため,全ての項目において同一の選択肢が選択されることは考えづらい。本研究では,K6とWHO-5の2尺度,TIPI-Jそれぞれにおいて,標準偏差が0である場合に違反とみなした。
 指示項目 質問文にて特定の選択肢を選択するよう指示した項目への回答が誤っていた場合に違反とみなした。本研究では,選択肢の内容を示すもの (全くあてはまらない),選択肢の番号を示すもの (ここでは1),選択肢の位置を示すもの (4番目) を用いた。

結果と考察

 2つの画面レイアウトにおけるSatisficing回答傾向を表1に示した。概して,2つの画面レイアウトにおけるSatisficing回答傾向の違いは認められなかった。ボンフェローニの方法により有意水準を調整した上で,カイ二乗検定を行なったところ,全ての指標において有意な違反率の違いは認められなかった (内容指示違反χ2 = 0.69; 番号指示違反χ2 = 0.30; 位置指示違反χ2 = 7.43; 指示1つでもχ2 = 0.64; 指示2つ以上χ2 = 1.22; 指示すべてχ2 = 4.73; 同一WHO-5χ2 = 1.72; 同一TIPI-Jχ2 = 0.25; 同一1つでもχ2 = 0.12; 同一すべてχ2 = 3.06; 指示・同一1つでもχ2 = 0.39,すべてdf = 1,n.s.)。同様に,回答に使用したデバイスとしてパソコンを選択した者 (画面1: 358名; 画面2: 240名) とスマートフォン・ダブレットを選択した者 (画面1: 186名; 画面2: 160名),それぞれに分けて検討しても,2つの画面レイアウトにおけるSatisficing回答傾向の違いは全ての指標において認められなかった (パソコン:内容指示違反χ2 = 0.07; 番号指示違反χ2 = 0.16; 位置指示違反χ2 = 2.38; 指示1つでもχ2 = 0.17; 指示2つ以上χ2 = 0.28; 指示すべてχ2 = 1.57; 同一WHO-5χ2 = 4.19; 同一TIPI-Jχ2 = 1.14; 同一1つでもχ2 = 0.69; 同一すべてχ2 = 7.82; 指示・同一1つでもχ2 = 0.01,スマートフォン・タブレット:内容指示違反χ2 = 0.93; 番号指示違反χ2 = 0.16; 位置指示違反χ2 = 5.14; 指示1つでもχ2 = 0.56; 指示2つ以上χ2 = 0.87; 指示すべてχ2 = 4.06; 同一WHO-5χ2 = 0.73; 同一TIPI-Jχ2 = 1.07; 同一1つでもχ2 = 1.05; 同一すべてχ2 = 0.78; 指示・同一1つでもχ2 = 0.73,すべてdf = 1,n.s.)。なお,Web調査と郵送調査を比較した高橋・成田 (2018) では,同様の解析を行った結果,全ての指標において有意な違反率の違いが認められている。このことから,Webか紙筆かという回答方法の違いが注意資源の節約において重要であり,調査画面のレイアウトは大きな影響を与えないと考えられる。今後,なぜWebにおいて注意資源の節約が生じやすく,紙筆での調査では生じにくくなるのかを検討する必要があろう。

キーワード
努力の最小限化/オンライン調査/インターフェース・デザイン


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