発表

1A-001

回答形式の違いが項目間相関に与える影響

[責任発表者] 増田 真也:1
[連名発表者・登壇者] 坂上 貴之:1
1:慶應義塾大学

目 的
 全く同じ文言からなる質問項目であっても,回答形式が異なると回答が変化することがある。例えば,回答カテゴリ数が奇数の場合には,ちょうど中間に位置するカテゴリがよく選ばれるという中間選択傾向がしばしば見られる。また,視覚的に先に呈示された選択肢の選択率が高くなるという,初頭効果(primacy effect)が生じることがある。
 したがって,回答形式の違いによって,回答分布の変化だけでなく,項目間の相関関係も変わることが予想される。実際に,Rammstedt & Krebs(2007)の,同一尺度を用いた,時間をあけて2回行われた測定において,言語と数値のラベルの昇降順が一致しているときの方が,そうで無いときよりも相関が高かった。このことは1回の測定における異なる2項目間の相関についても,回答形式の類似度の影響を受ける可能性があることを示唆している。そこで本研究では,回答形式の言語ラベルの昇降順が同じかどうかや,回答内容のフレームがポジティブかネガティブかによって,項目間相関に違いが生じるかどうかを検討した。

方 法
 30—49歳の正規雇用されている800人に,調査会社を通じて協力の依頼をした。回答者は,「職場の人間関係」や「給与」といった,仕事に関する10項目の満足度に関して,回答形式の異なるAからDの4条件のいずれかにランダムに割り当てられた。具体的には,Aでは「全く満足していない―非常に満足している」(P昇順),Bでは「非常に満足している―全く満足していない」(P降順),Cでは「全く不満はない―非常に不満である」(N昇順),Dでは「非常に不満である―全く不満はない」(N降順)で,それぞれ7件法で選択肢が並べられた。
 また各群の回答者は,「仕事を辞めたいと思うか(以下,離職意図)」と,「今の仕事にやりがいを感じているか(以下,やりがい)」に対して,いずれも「全くない―とても強く」の7件法で回答した。離職意図は,ネガティブな内容を昇順で尋ねていることから,CのようなN昇順と類似しており,最も関連が強くなるものと考えられる。また,やりがいについては,ポジティブな内容を昇順で尋ねていることから,P昇順であるAとの相関が最も高くなることが予想される。

結 果
 BとCの得点を逆転して,各条件の得点の方向を揃えた上で,項目間のポリコリック相関を算出した。すると離職意図と仕事満足に関する10項目との項目間相関の中央値は,Cで最も高く(-.487),Dで最も低かった(-.400)。すなわち,不満が高くなる方向で選択肢が並べられているときに,離職意図との関連が最も強かった。次に,やりがい項目と仕事満足との項目間相関の中央値は,Aで.363であり,言語ラベルの並び順が逆であるBの.237よりも高かった(図1)。さらにN降順で,フレームも昇降順も異なるD(.177)で,最も相関が低くなった。

考 察
 本研究では,回答内容や回答カテゴリの言語ラベルが全く同じであっても,昇降順が同じかどうかで.1程度の相関の差が生じることが示された。さらに,やりがいと満足というように共にポジティブなフレームであったり,離職と不満というように共にネガティブフレームであって,かつどちらも昇順で回答を求めたりするときに,最も高い相関係数が得られた。すなわち,類似した回答形式を持つ項目間の相関が高くなる傾向が見られた。ただし,どの条件での結果がより正しいかについては不明である。またこうした結果は単純に回答形式の影響というよりも,フレームの違いによって文脈効果が生じた可能性もある。
 いずれにせよ本研究の結果は,回答形式の違いによって項目間の相関係数が大きく影響され,そのために結果の解釈が変わる可能性があることを示している。それにもかかわらず,心理学の研究論文においては,どのような回答形式で測定がなされたのかについて,十分に記されていないことも多い。
 既存の研究結果が再現されなかったり,同一の研究テーマに関する知見が一致しなくて論争になったりするのは,測定の内容と直接関係しない,こうした要因のために生じている可能性がある。したがって,調査研究の結果に回答形式が及ぼす影響について,もっと注目する必要があるだろう。

引用文献
Rammstedt, B., & Krebs, D.(2007). Does response scale format affect the answering of personality scales? European Journal of Psychological Assessment, 23, 32–38.

キーワード
回答形式/項目間相関


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