発表

2B-089

母親による地域の安全性の知覚と地域への愛着

[責任発表者] 畑 倫子:1
[連名発表者・登壇者] 島田 貴仁:2, 本山 友衣:3
1:文京学院大学, 2:科学警察研究所, 3:日本大学

【目的】
 子どもが大人に付き添われることなく,公共空間内を自由に行動できることを子どもの移動自由性(children’s independent mobility,以後CIM)と言う(Crawford, et al., 2015)。保護者が子どもにCIMの許可を与えるかには,親と子どもの要因,地域の物理的な環境,地域の社会的な環境,何の活動をするためのCIMなのかなどが関わっている(Johansson, 2006)。本研究は,日本の多くの小学校で行われている防犯活動が,CIMの許可に影響を与えると考えられている地域の安全性と地域への愛着の知覚に対してどのような影響があるのかについて検討することを目的とする。
【方法】
 インターネット調査会社のモニターの中から,東京都とその周辺13市区に居住する20歳から49歳の女性10,000名に対して調査を実施した。そして,東京都に居住している小学校3年生から中学校3年生の女児がいる,あるいは子どものいない女性を抽出して調査を実施し,1021名から回答を得た。本稿では,調査対象の女児が現在住んでいる地域の公立小学校に通っている(いた)465名の母親の回答に対して分析を行なった。平均年齢は42.26(S.D.4.50)歳で,同居している子どもの人数は平均1.97(S.D.0.77)人であった。
【調査項目】
1.地域の社会的環境の知覚(安全性8項目,愛着3項目,社会的凝集性5項目(Sampson et al., 1997)),2.通っている(いた)小学校で実施されていた防犯活動(子どもへの防犯ブザーの配布/保護者が学校に入校するための名札などの配布・着用/自転車につける「パトロール実施中」ワッペンの配布・取り付け/不審者情報のメールサービスへの登録/子どもの登下校を知らせるメールサービスへの登録/地域の人やスクールガードなどによる登下校時の立ち番や見守り活動/教員による登下校時の立ち番や見守り活動/保護者による登校時の立ち番や見守り活動/保護者による下校時の立ち番や見守り活動/保護者による地域の防犯パトロール/地域の安全チェック(まち歩き)・地域安全マップの作成/保護者に対する防犯教室や防犯講演会/子どもに対する護身術などの防犯教室/わんわんパトロール・ジョギングパトロール/美化活動・落書き消し/フラワーポット活動),3.子ども/親のパーソナリティ(日本語版 TIPI (小塩・阿部・ピノ,2012)10項目)/刺激探求傾向(日本語版BIS/BAS尺度(髙橋・山形・木島・繁桝・大野・安藤, 2007)の刺激探求因子),4.保護者としての不安(全般的な不安/不審者不安(Bennetts et al., 2017)/留守番をさせることの不安),5.育児スタイル(親の保護傾向・自律促進傾向(田中,2012を参考に)/エフィカシー(伊藤,2000を参考に)/ジェンダー観(「女の子らしく」育ってほしい),6.子どもの犯罪被害体験,7.携帯電話・防犯ブザーの所持/セキュリティへの加入,8.居住地域の居住年数とWalkscore(Koohsari et al., 2018)。
【結果】
 安全性8項目はα=0.84,愛着3項目はα=0.66であった。小学校のおける各防犯活動の実施率は防犯ブザー配布70.5%,入校名札87.3% ,自転車ワッペン69.5%,不審者メール93.3%,登下校メール41.7%,登下校時見守り活動(地域の人)76.8%,登下校時見守り活動(教員)53.5%,保護者登校時見守り活動76.1%,保護者下校時見守り活動48.4%,保護者防犯パトロール77.0%,地域の安全チェック64.9%,防犯教室(保護者)61.5%,防犯教室(子ども)37.6%,犬・ジョギングパトロール19.1%,美化活動29.9%,フラワーポット活動26.7%であった。地域の安全性と愛着について,他の変数を全て投入した重回帰分析を行なった。そして,その結果を用いてAICが最小となるようステップワイズ法による変数選択(増減法)を行った。
 地域への安全性については,小学校で子どもに対する護身術などの防犯教室が実施されていることと子どもを女の子らしく育てたいとする育児スタイル,母親の全般的な不安が高いこと,そして居住地のWalkscoreが高い(Walkscoreは高いほど歩いてどこにでも行くことができる場所)ことが,地域の安全性の知覚を下げており,子どもの勤勉性が高いことが安全性の知覚を上げていた(地域の安全性= 5.81*-0.18登下校時見守り活動(地域の人)+0.19保護者下校時見守り活動-0.21防犯教室(子ども)*-0.19美化活動+0.36セキュリティ加入-0.07親の刺激探求+0.11保護傾向*-0.08自律促進傾向-0.10ジェンダー観*+0.17きょうだいの有無+0.09子どもの勤勉性*-0.01Walkscore*-0.12全般的な不安;*p<.05;R2=0.09,AIC=35.86)。
 地域への愛着については,小学校で保護者による防犯パトロールが行われていることが愛着を下げていた。保護者の外向性と協調性,子どもの勤勉性,地域の社会的凝集性が高いことが愛着得点を高めていた(地域への愛着=0.73+0.15自転車ワッペン+0.16登下校時見守り活動(教員) -0.24保護者防犯パトロール*+0.19防犯教室(保護者) +0.08親の外向性*+0.10親の協調性*+0.06親の刺激探求+0.08子どもの勤勉性*-0.08子どもの刺激探求+0.51地域の社会的凝集性*;*p<.05;R2=0.30,AIC=-1.25)。
【考察】
 小学校で行われている防犯活動の種類によっては,CIMの許可に関連する地域の安全性や愛着の知覚を低めていた。島田・雨宮・菊池(2010)では車両パトロールを実施することで居住地区の愛着が下がっていた。これはパトロールが被害を連想させるからだと考えられているが,安全性や愛着の知覚を損ねない防犯活動のあり方について検討する必要があるだろう。今後は,小学校で実施されている防犯活動に実際に参加したかどうかとその負担感を分析に加味し,地域への安全性と愛着のCIMへの影響の与え方についての検討を行う。
*科研費(17H02467)の補助を受けて実施した。

キーワード
子どもの移動自由性/地域の安全性の知覚/地域への愛着


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