発表

2D-086

「性的マイノリティ」の語りにおける言語表現,ジェンダー,セクシュアリティ
共起ネットワーク分析とテーマ分析を用いて

[責任発表者] 薛 小凡:1
[連名発表者・登壇者] 青野 篤子:2
1:お茶の水女子大学, 2:福山大学

目的
 社会構成主義によれば,セクシュアリティやジェンダーが言語表現を規定するのではなく,言語表現がセクシュアリティやジェンダーを規定すると考えられる(Cameron,2009;Crawford, 2001;中村,2012)。薛(2017)は,1人のゲイのライフストーリーにより,個人の言語表現は直接セクシュアリティから影響をうけるのではなく,ジェンダー(社会のジェンダー規範や個人のジェンダー観)が介在していることを見出し,その特徴は自称詞が顕著にあらわれる。本研究は,いわゆる「性的マイノリティ」を自称する人たちの語りをもとに,共起ネットワーク分析とテーマ分析により,言語表現,ジェンダー,セクシュアリティ(性自認と性的指向)の関連をさらに検討する。

方法
 協力者 性的マイノリティを自認する5名の協力を得た。その内訳は,Xジェンダー1名,トランスジェンダー(FTM)2名,バイセクシュアル1名,ゲイ1名であった。
インタビューの方法 各人に対して1時間半程度の半構造化インタビューを2回行い,自身のセクシュアリティ,言語表現,ジェンダー観について自由に語ってもらった。
 分析方法 インタビューで聞き取った内容を逐語録に起こし,協力者の語りで明らかに省略されたと思われる語句を補い,テキストデータを作成した。
 分析では,まず,計量的テキスト分析ソフトKH Coder(樋口,2014)を用いて,出現パターンの似通った語を線で結んだ共起ネットワーク分析を行った。次に,インタビューデータに立ち返り,テーマ分析を行った。共起ネットワークにより見出された言語表現,ジェンダー,セクシュアリティの関連に即して,帰納的にテーマを抽出し,命名と解釈を行った。

結果
 以下に,抽出されたテーマを<>で表し,解釈の内容を示す。
 <父親に対する反発> 父親の暴力的な行為や乱暴な言葉づかいは父親の権威を表しており,ジェンダー規範を体現した伝統的な男性の象徴である。それに対する恐怖や嫌悪は性的指向と言語表現に影響を与える。
 <母親への親近感> 母親に対する親近感と母親からの理解は,個人の性的指向の受容と確立に影響を与える。
 <性自認と性的指向の揺らぎと確立> 恋愛相手の性別,身体への違和感,ジェンダー規範への抵抗,他の性自認と性的指向の排除がセクシュアリティの確立に影響する。
 <ジェンダー規範へのとらわれ> 性自認の基準となるのは男性か女性,求める相手は男らしい男・女らしい女,またパートナーとの関係では性別役割分業に従いたいという気持ちがある。
 <服装による主張> 個人の性自認がジェンダー規範に合致しない場合,ジェンダー規範に反する服装などを通して個人の性自認を主張する傾向がある。
 <家族との葛藤> 家族のジェンダー観に対する反発はセクシュアリティの形成あるいは現在のセクシュアリティと家族との関係に大きな影響を与える。
 <自称詞へのこだわり> 性自認に合わせて自称詞を選択し使用する。ジェンダーに合致した自称詞を使用する傾向が強い。
 <マイノリティ・ストレス> ジェンダー規範にとらわれた言語表現,個人のセクシュアリティに関する会話内容,人との付き合いがマイノリティ・ストレスになる。
 <家庭の構築と社会の認可> 社会に認められ,マジョリティーの異性愛者と同じように普通に生活したい希望が強い。
 以上のように,セクシュアリティは人間関係から影響を受けながら,ジェンダー規範の一部を受け入れた結果であることが示唆された。ジェンダーにとらわれた自称詞と服装の選択はセクシュアリティと相互に関連しており,セクシュアリティを作り上げる重要な要因になっているとみなすことができた。

考察
 5名の性的マイノリティの語りをもとに共起ネットワーク分析とテーマ分析を行った。結果をさらにまとめると,Figure 1のように示した関連がみられた。
 すなわち,性的マイノリティは人間関係の影響を受けながら,ジェンダー規範に抵抗する一方,セクシュアリティの揺らぎに応じて言語表現を選択して使用する。そして,ジェンダー規範への抵抗ととらわれからマイノリティ・ストレスが生まれ,セクシュアリティを揺らがせ,人間関係に影響を及ぼす。言語表現はジェンダー規範への抵抗ととらわれ,セクシュアリティを反映すると同時に,ジェンダー規範やセクシュアリティに影響を与えている。

キーワード
言語表現/ジェンダー/セクシュアリティ


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