発表

2D-085

怒りの表し方と夫婦関係満足度
-夫と妻の違いについて-

[責任発表者] 森 菜津子:1
[連名発表者・登壇者] 矢野 円郁:2
1:神戸女学院大学, 2:神戸女学院大学

目 的
 怒りは日常でしばしば経験する感情であるが,対人場面では怒りを感じても,表出しないように努力することが多い。また,怒りは,喜びなどのポジティブな感情と比べ攻撃行動と結びやすく,自分を見失うリスクが高いため,表出の仕方などを自覚することが重要であると考えられる。本研究では,怒り表出の自覚と夫婦関係満足度の関係について検討し,自己の評価と配偶者からの評価の比較を行った。仮説は配偶者自身が怒り表出の多さを自覚していないと夫婦関係満足度は低いだろうとした。

方 法
調査対象者
 女子大学生の両親(夫婦) 46組を対象とした(男性53.8歳,女性51.2歳)。
質問紙の構成
 (1)自分の特性怒りと怒りの表出(鈴木,1994),(2)配偶者の特性怒りと怒りの表出(鈴木,1994),(3)夫婦関係満足度(諸井,1996)。(1)と(2)は鈴木1994の尺度から一部抜粋し,特性(T)10項目,表出(O)9項目,抑制(I)8項目,制御(C)7項目から構成されていた。

結 果と考 察
 男性が評価した配偶者の怒り表出と男性の夫婦関係満足度の間に負の相関,女性が評価した配偶者の怒り表出と女性の夫婦関係満足度の間に負の相関が見られた(表1)。したがって,男女ともに,配偶者の怒り表出が少ない方が満足度高いということが明らかになった。怒りの抑制について,女性においてのみ配偶者の怒りの抑制と女性の夫婦関係満足度の間には負の相関が見られた。この結果から,妻は,夫が怒りを抑制していると認識すると満足度が低くなるという事が明らかになった。夫は妻に対して怒りを抑制すればよいというわけではない事が考えられる。
 怒り表出の自覚と夫婦関係満足度の関係について調べるにあたり,配偶者の自覚のあり方によって3群にわけた。自覚高い群は,配偶者が評価した自分の怒り表出が高いかつ,自分の怒り表出が高い群とした。自覚低い群は,配偶者が評価した自分の怒り表出が高いかつ,自分の怒り表出が低い群とした。表出低い群は,配偶者が評価した自分の怒り表出が少ない群とした。分散分析の結果,夫の満足度に妻の怒り表出の自覚は影響されなかったが(図1),妻の満足度には夫の怒り表出の自覚の影響が見られた(図2)。よって,妻の夫婦関係満足度は,夫の怒り表出が多くても,夫自身が怒り表出が多いことを自覚していれば,怒り表出が少ない人と同様に高いことが明らかになった。このことから,女性の満足度においてのみ仮説が支持された。以上の結果から怒りに対する対応には性差があるのではないかと考えられる。夫は妻に対し怒りを完全に抑制するのではなく,適度に表出し,さらにどのように怒り表出しているか自覚することが,妻の満足度を高めるために重要であると考えられる。

引用文献
諸井克英(1996). 夫婦関係満足度尺度 吉田富二雄(編) 心理測定尺度集Ⅱ―人間と社会 のつながりをとらえる「対人関係・価値観」― サイエンス社 149-152.
鈴木 平(1994). STAXI日本語版 吉田富二雄 (編)心理測定尺度集Ⅱ―人間と社会のつ ながりをとらえる「対人関係・価値観」― サイエンス社 208-213.

キーワード
怒り/夫婦関係満足度/ジェンダー


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