発表

2C-069

PTA活動における負担の公平性
専業主婦に焦点を当てて

[責任発表者] 有馬 明恵:1
1:東京女子大学

問題
 小学生の母親たちがPTA役員を引き受ける理由で群を抜いて多いのは「卒業までに一度は引き受けなければならないから」である(有馬・下島・竹下, 2017)。また,「役員負担は公平であるべき」「活動には消極的に関わるべき」という2つのPTA規範を母親たちは共有している(有馬・下島・竹下, 2018)。役員を免除してもよいと考える母親は非常に少なく,その傾向は有職の母親よりも専業主婦において顕著である(有馬他, 2018)。全ての母親に起こりうる健康上の問題や役員経験は一般役員(本部・執行部役員あるいは各委員会の委員長以外のクラス役員や各委員会の委員)の免除理由となりうるが,一部の母親にしか当てはまらない職業的地位やキャリアアップのための事情は,役員免除を考慮する要因にはなりにくい(有馬他, 2018)。
 本稿では,役員負担の公平性において頑なな態度を示す専業主婦の母親について,一般役員免除に対する考え方を詳細,およびどのような要因が彼女たちの強固な態度と関連があるのかを検討する。

方法
調査協力者 調査会社のモニター400名(Mean Age=41.22歳, SD=5.22,有職と無職各200名)。東京都在住で第一子が公立小学校の2~6年生の母親,公立小学校で1年以上継続してPTA役員を経験,小学生の子ども全員が公立小学校に在学していることを調査協力の条件とした。本稿では専業主婦で一般役員のみを経験したことのある142名のデータを用いる。
 手続き モニターが個別にサイトにアクセスし,研究に関する説明書を読み,研究に参加することに同意した上で,各自のペースで設問に回答し,回答後に送信した。
 調査内容 設問は次の4種類に大別される。
1)役員経験:役員経験の有無,役職と回数,直近の役員時の出校頻度(5択),役員就任理由(15項目,5件法)の計4問。
2)PTA活動に対する評価:役員就任時に感じたプレッシャー(7項目,5件法),役員経験に対する満足感(14項目,5件法),今後のPTA活動のあり方(10項目,6択),PTA活動を変える自信(2択。「はい」と答えた人のみ,難しいと感じる理由を200字以内で自由回答)の計4問。
3)PTA活動における公平性:有職の母親が望むPTA活動への携わり方/無職の母親が有職の母親に望む活動への携わり方(それぞれ8項目,5件法),役員を免除してもよい事情 (一般役員と本部・委員長それぞれについて家庭の事情12項目と本人の事情20項目の計32項目,3択),働いている母親もしくは働いていない母親と一緒に活動して良かったことといやだったこと(それぞれ200字以内で自由記述)の計4問。
4)心理的変数と個人属性:多次元共感性尺度(鈴木・木野, 2008; 24項目,5件法)や年齢,就労形態他計10問。
 なお,調査は東京女子大学女性学研究所(2014~2016年度)の助成研究の一部であり,東京女子大学と杏林大学の研究倫理審査で承認を得て行われた。

結果と考察
 一般役員を免除しても良い事情の各因子(職業的地位,キャリアアップ,家庭の事情,健康問題,役員経験)の平均値を標準化(z得点)したものを用いて階層的クラスタ分析(平方ユークリッド距離,Ward法)を行い,3つのクラスタを抽出した。各クラスタに分類されたのはCUL_1から順に29名,66名,47名であった。各因子の平均値について分散分析を行ったところ,クラスタの主効果が有意であった。CUL_1は役員免除において最も態度が寛容であり,CUL_3は最も厳しい(Fig. 1)。CUL_3は「健康問題」や「役員経験」など全ての母親に起こりうる事情に対しても厳しい態度を示した。一方,有職の母親にしか起こり得ない「職業的地位」と「キャリアアップ」については,CUL_1は他のクラスタよりも寛大であった。
 以上の役員免除に対する考え方の違いと関連がある変数を模索したところ,有職の母親に求めるPTA活動への携わり方で有意な差が見られた。「PTA活動優先」因子ではCUL_3(0.17) > CUL_1(-0.36) & 2(-0.01),「専業主婦の犠牲で」因子ではCUL_1(0.67) > CUL_2(-0.13) & 3(-0.27),「助っ人でよい」因子ではCUL_1(0.34) > CUL_2(-0.14) & 3(-0.24)であった。また,有職の母親と役員を一緒にやってよかったこと・いやだったことの自由記述では,CUL_1ではよかったこと(give & take,多様性,高度なスキルなど)の記述率が高かった一方で,いやだったことではCUL1は「人間関係のトラブル」「コミュニケーションがとれない」といった意思疎通に関する記入が多く,むしろCUL_3のいやだったことの記入率は「負担が不公平」「仕事が免罪符になっている」といったこと以外では少なかった。
 以上より,CUL_3は「負担は公平であるべき」という価値観が強く,それゆえ有職女性との活動に不満を覚えるが,CUL_1は一緒に活動することで経験したストレスからそれを避けるべく有職女性に仕事を理由に役員免除を認めても良いと考えているのではないか。

キーワード
PTA/専業主婦/公平


詳細検索