発表

2C-068

アクティブラーニングを用いた暴力防止プログラムの効果
2コマ構成の高校生対象プログラムの効果

[責任発表者] 井ノ崎 敦子:1
[連名発表者・登壇者] 赤澤 淳子:2, 上野 淳子:3, 松並 知子:4, 下村 淳子:5
1:徳島大学, 2:福山大学, 3:四天王寺大学, 4:武庫川女子大学, 5:愛知学院大学

目 的
 恋愛は青年の重要な関心テーマの1つである(髙坂,2016)。しかし,青年のうち,6人に1人はデートDVの被害を経験しており(内閣府,2018),恋愛経験が決して青年にとって肯定的な体験となっていない現状がある。こうした現状を防ぐためにも,青年に対するデートDV予防活動は広く行なわれる必要がある。そこで本研究では,高校生を対象としたデートDV予防プログラムを開発し,その効果について検証することを目的とした。
方 法
(1)手続き 2018年7月に1コマ45分の2コマ連続プログラムを高校の授業内で実施した。プログラム前とプログラム後にアンケートを実施した。更に効果の長期的持続性を捉えるため,2019年3月にフォローアップ調査を実施した。
(2)参加者 公立A高校2年生313名であった。なお,社会的望ましさ得点(北村・鈴木, 1986)が18点以上だった者と,欠損値があったものを除いた134名を分析対象とした(平均年齢16.22歳,SD=0.44)。
(3)プログラム内容 1コマ目は「望ましくない関係性」の特徴を学ぶことを目的とした。「望ましくない関係性」の代表格としてハラスメントがあること,また,「望ましくない関係性」の共通点は,支配的関係性を形成する暴力が存在していることについて説明した。さらに,デートDVに見られる暴力の特徴や被害を受けたときに求められる対応方法について説明した。2コマ目は,「望ましい関係性」を形成する技術の習得によりデートDV予防を目的としたもので,アサーション・トレーニングを実施した。いずれのコマにおいても,アクティブラーニングの手法を取り入れ,個人によるワークシートへの記入,クイズへの回答,6-7名グループでの意見交換・ロールプレイなどを行うことで,生徒らが体験的に学べるように工夫した。
(4)効果検証アンケート内容 参加者はこのアンケートのみで用いるコードネームを作成し回答した。
効果検証では,他の高校での効果検証結果で有意差の出た,暴力観項目群を採用した。この項目群では,「けがをしない強さで叩く」(身体的暴力),「いやがっているのに身体的接触を求める」(性的暴力),「相手を否定したり,意見を認めなかったりする」(精神的暴力:軽侮),「別れるなら自分は何をしでかすかわからないと言う」(精神的暴力:脅迫),「交友関係や行動を見張るため相手のスマートフォンや携帯電話をチェックする」(精神的暴力:束縛)の5項目について,「完全に暴力にあたる」~「全く暴力にあたらない」の7件法で回答を求めた。
(5)倫理的配慮 本研究は福山大学学術研究倫理委員会の承認を得て実施した。
結 果
(1)プログラム実施時の様子 生徒らは,講義に熱心に耳を傾けるとともに,ロールプレイの全体での発表時には,自然発生的に発表者に対して賞賛の拍手を皆でするという行動が見られた。
(2)暴力観の変化 プログラム前とプログラム後,及びフォローアップ時の暴力観の間で一要因分散分析を行なったところ,Table 1に示す結果となった。性的暴力以外の暴力観において,事前と事後の間に有意な差がみられ,事後のほうが事前よりも適切な暴力観が示された。それらのうち,精神的暴力の脅迫以外で,事後とフォローアップ時との間に有意な差が見られ,フォローアップ時の暴力観の適切さの低下が見られた。ただし,暴力観全体と精神的暴力の軽侮では,事前とフォローアップ時の間で有意な差が見られ,フォローアップ時の暴力観は事前と同じ程度まで下がらずに,ある程度適切に保たれていたことがわかった。
なお,性的暴力においては,どの群間にも有意な差が見られず,事後もフォローアップ時にもプログラムの効果が見られなかった。
考 察
 プログラム後には,性的暴力以外の暴力観において効果が見られた。また,フォローアップでは,性的暴力と脅迫以外で事後からの低下が見られた。身体的暴力と束縛では事前と同程度に低下したものの,暴力観全体と軽侮では事前程度には低下しなかった。1回かぎりのプログラムでもある程度の長期的効果が見られるが,安定的ではない。また,性的暴力においては,プログラム前にすでに暴力認識度が高かったことから,プログラムの影響が出なかったと考えられる。安定的な効果を生み出すためには,プログラム内容の再検討と,時間をかけて複数回にかけてのプログラム実施が求められると思われる。
*本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得た。
引用文献
内閣府 2018 男女間における暴力に関する調査報告書
髙坂康雄 2016 恋愛心理学特論 福村出版

キーワード
デートDV一次予防プログラム/暴力観/アクティブラーニング


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