発表

1C-085

女性は化粧をすべきか

[責任発表者] 山下 海:1
[連名発表者・登壇者] 矢野 円郁:2
1:神戸女学院大学, 2:神戸女学院大学

問 題
 「化粧は女の身だしなみ」と言われることがある。化粧をしないことは,マナー違反であり,女性なら化粧をして当然だ,このように考えている人は少なくないだろう。女性を対象とした調査では,18歳から24歳は魅力の向上や顔を創造する楽しみを目的として化粧を行なっている一方,25歳から34歳は仕事や立場上,化粧をしなければならないという義務感で化粧を行っていることや,必要がなければ化粧はしたくないという人が多いことなどが指摘されている(岡崎,1993:山本・加藤,1991)。しかし,化粧をしなければならないと考えているのは化粧をする女性自身だけかもしれない。そこで本研究では,男性も含め,女性の化粧を義務だと考える人がどれくらいいるのか,またそのような考えとジェンダー観や自己受容と関連しているのかどうかを調べ,女性の化粧義務を規定している要因を検討することを目的とした。

方 法
回答者
 社会人197名,うち女性は145名(42.7±12.2歳),男性は52名(43.7±9.8歳)。
質問紙の構成
 1.自身の化粧頻度や化粧理由を尋ねた。2.「社会人女性が化粧をすることは最低限のマナーである」などの化粧に対する意識(化粧義務得点),および,「したい人は男性も化粧をすればいいと思う」の男性の化粧に対する許容度を尋ねた。3.鈴木(1994)の平等主義的性役割態度スケール短縮版を用い,性役割態度を測定した。4.沢崎(1993)の自己受容測定尺度の身体的自己受容尺度を用い,身体的自己肯定感を測定した。

結 果
 化粧の頻度を尋ねた結果,女性の91.7%が「ほぼ毎日する」と回答し,一方,男性全員が「まったくしない」と回答した。また,男性は1名を除くすべての人が「化粧をしたくない」と回答した。女性が化粧をする理由は,気分高揚や自己アピール等も挙げられたが,義務感だけが理由である人が15%いた。
 性役割態度は男性よりも女性のほうが平等主義的であったが,化粧義務得点には性差がなかった(表1)。化粧義務得点と各尺度得点間の相関分析では,化粧義務得点が高い男性ほど性役割態度得点が低く(r=-.68,p<.01),身体的自己肯定感得点が低い(r=-.46,p<.01)という相関がみられた。一方,女性ではそのような相関はみられなかった。
 男性の化粧は,53%の人が肯定していたが,まだ否定的な人も多かった。男性化粧許容度と性役割態度得点,年齢との相関分析の結果(表2),性役割に関して平等主義的な人ほど男性の化粧を許容し,女性においては若い人ほど男性の化粧を許容していた。

考 察
 女性の中には,化粧をしたくないのに義務感のためだけに化粧をする人が少なからずいることが確認された。
 また,ジェンダーステレオタイプが強く,自身の身体における肯定感が低い男性ほど,女性に化粧を強要すること,ジェンダーステレオタイプが強い人ほど男性の化粧を否定することが明らかになった。女性を化粧義務から解放し,また男性でもしたい人が化粧をできるような社会にするためには,ジェンダーステレオタイプをなくしていく必要がある。

引用文献
岡崎晶子 (1993). 化粧の心理的効用 マーケティング・リサーチ, 21, 30-41.
沢崎達夫 (1993). 自己受容に関する研究(1) 新しい自己受容測定尺度の青年期における信頼性と妥当性の検討 カウンセリング研究,26, 29-37
鈴木淳子 (1994). 平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)の作成 心理学研究, 65, 34-41.
山本純子・加藤幸枝 (1991). 化粧に対する意識と被服行動 椙山女学園大学研究論集, 22, 251-264.

キーワード
化粧行動/ジェンダー/性役割態度


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