発表

1A-089

30歳前後の未婚女性における未婚の理由について
「自由や気楽さを失いたくない」の意味に着目して

[責任発表者] 永久 ひさ子:1
1:文京学院大学

問題と目的 晩婚化・未婚化は日本の少子化の主要な要因である。未婚女性の89.3%は「いずれ結婚するつもり」であるものの,25歳から29歳では25.7%が「まだ結婚するつもりはない」と考え,結婚が先送りされている。25歳から34歳の女性が独身にとどまる主な理由は「自由や気楽さを失いたくない」であるが(第15回出生動向基本調査),なぜ「自由や気楽さ」が家族形成よりも優先されるのかについての心理学的研究は少ない。
 女性の高学歴化や社会進出あるいは性の自由化など,日本社会が急激に変化する一方で,結婚や家族に関する価値観はほとんど変化しないという歪みが,晩婚化・未婚化・少子化の要因であるとの指摘が多く見られる(例えばRetherford・Ogawa・Matsukura,2004)。しかし,それについての実証的研究は少ない。そこで本研究では,30歳前後の未婚女性が未婚である理由について,当事者へのインタビュー調査から検討した。
方法 2018年8月から2019年3月に,30歳前後の未婚女性10名を対象に半構造的面接調査を行なった。質問内容は,仕事の状況・子育て観・結婚意欲・交際相手などである。面接により得られたデータは,M-GTA法により分析を行なった。
結果と考察 結婚に消極的ではない7名について,仕事の状況と子育て観および結婚意欲を分析した。仕事の状況は,「忙しさ:忙しい・大変・残業はない」「仕事のやりがいや楽しさ:やりがいがある・面白い・つまらない・合わない」「働きやすさ:人間関係がいい・給料がいい・休みが取れる・一人前になるのが大変・仕事に慣れない」「コミットメント:キャリアアップのため勉強中・一人前になるため勉強中・もう少し頑張ってみたい・ルーティン・経済的基盤」「継続意思:定年まで継続・もう少しやってみてだめなら転職・結婚を機に退職や転職」に分類された。子育て観は「子育てへの関心:教育熱心になる・さほど関心はない」「子育て方針:モデルは母親・母親がやってくれたように習い事をさせる」「担い手:保育園・祖父母の支援・子育て中は子育て専業」に分類された。結婚時期・意欲は「仕事を持ち続ける方が重要・やりたいことをやってから結婚・仕事に慣れてから結婚・子どもを持つために結婚・年齢の制約から結婚」に分類された。
 ケース2と6は,仕事の状況が「一人前になるのが大変」で「合わない」と感じており,いずれも「子どもを持つために結婚」を望んでいた。ケース3と4と7は,仕事の状況が「人間関係も給料もよく残業がない」職場で長期就業を望み,子育ては「祖父母の支援」を期待していた。一方でコミットメントが「経済的基盤」であるとしたケース3と4は,「結婚より仕事を持ち続ける方が重要」で「子育てにさほど関心がない」ため,ケース4は結婚意欲が低かった。ケース1は,仕事の状況が「忙しいが,やりがいがあって面白く,キャリアアップを目指して勉強中」であるが,同時に子育て方針は「母親がやってくれたように,教育ママになる」ことであった。これらは両立不能なため,「35歳までやりたいことを全部やってから退職か転職して結婚する」と35歳以降の晩婚を選択していた。ケース5の子育て観はケース1と同じであったが,仕事の状況は対照的で「ルーティンでつまらない」ため「結婚したら退職・転職したい」と考えている。さらに「できれば結婚までに,自分に合う,やりがいのある仕事を探したい」と考え,恋人と結婚予定ではあるものの,時期は「2,3年して相手の収入が安定したら」と曖昧であった。子育てに関心がない2名以外は,母親の子育てに言及しており,母親をモデルとしていた。
 以上から,30歳前後の未婚女性には,個人としての生き方の追求と子育てという2つの目標があり,それら両方を遂行していく方略が,結婚意欲や時期の選択に関与するものと推察される。コミットメントと継続意思は,「やりたいことを全部やる」「キャリアアップのための勉強」「もう少しやってみてだめなら転職」など,生き方の自由な追求や探索として表現されていた。ここから,未婚理由の「自由や気楽さ」とは,個人としての生き方の探索や追求であろうと推察される。また,子育ては母親がモデルであるとの回答から,日本の家族が変化しにくい理由の一端は,子育てのモデルを母親に求めることにある可能性が示唆された。つまり,女性の社会進出が進み,30歳前後の時期が個としての生き方の探索や追求の真最中の時期となる一方で,子育ては今もなお,子育てに多くの時間を使った伝統的母親がモデルという矛盾が,個としての生き方の追求と結婚の同時進行のハードルを高めているのではないだろうか。
引用文献 
Ratherford,R,D., Ogawa,N.,Matsukura,R.(2004). Late Marriage and Less Marriage in Japan.
Population and Development Review 27(1) Retrieved from https://doi.org/10.1111/j.1728-4457.2001.00065.x (May 03,2019)
謝辞:本研究はJSPS科研費JP 18k3045の助成で行われたものです。 

キーワード
未婚の理由/自由や気楽さを失う/子育て


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