発表

1A-088

性役割態度と人権意識が女性リーダーに対するフォロワーの認知に及ぼす影響

[責任発表者] 武藤 麻美:1
1:大阪経済法科大学

問題
 本研究では,フォロワー (成員) の性役割態度 (ジェンダー観) や人権意識や性別が,組織の管理的立場に就く女性リーダー (e.g., 女性管理職) に対する認知にどのような影響を及ぼすかを検討する。
 近年,日本では男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法が制定され,女性の社会進出が進む契機となった。今後,少子化・超高齢化社会に突入し,労働力人口の減少が懸念されるなかで,社会における女性の就労への期待はますます高まるだろう。それとともに,伝統的な性役割にとらわれない女性・男性の生き方や働き方が,選択肢のひとつとして求められるようになると考えられる (武藤・桂田, 2018)。政府も,2020年までに社会のあらゆる分野において,女性が管理職などの指導的地位に占める割合を少なくとも30%程度とする目標を打ち出しており (内閣府男女共同参画局, 2013),今後女性管理職の割合が高まると考えられる。
 しかし,日本は2009年度ジェンダー・エンパワーメント指数 (GEM指数: 経済参加と意思決定,政治参加,経済資源に関する意思決定と権力における,ジェンダー不平等性を測定する総合指数をいい,値が高いほど男女間の平等を示す) が世界第57位となっており (United Nations Development Programme, 2009),先進諸国では下位に位置し,男女平等主義が浸透していない国といえる。また,2017年度の男女格差を示す指数であるジェンダー・ギャップ指数 (Gender Gap Index) で,144カ国中114位と下位にあり (World Economic Forum, 2017),依然として男女間の不平等が存在していることを示している。こうした日本社会において,今後社会人となる可能性がある現代の若者が,女性リーダーに対してどのような認知を抱いているのか,またその認知にどのような個人の内的要因が影響しているのかを探ることは,翻って今後女性リーダーの社会的・心理的受容を阻害または促進する要因の解明にも寄与すると考えられる。
 そこで,本研究では女性リーダーとして,具体的には女性の管理職を採り上げ,彼女に対して若者が抱く認知と,そこに影響する要因として性役割態度や人権意識などに焦点を当て検討することにした。性役割態度とは,性役割に対し一貫して好意的もしくは非好意的に反応する学習した傾向のことをいい,個人としての男女の平等を信じる傾向が強い人は平等主義的であり,その傾向が弱い人は伝統主義的とされる (e.g., 鈴木, 1991; 1994)。性役割態度は,結婚観・男女観,教育観,職業観,社会観に影響を及ぼす (e.g., 武藤・桂田, 2018)。一方,人権意識の高さは,橘川 (2009) も指摘するように,人々の出自や人種,年齢に関する差別や,宗教的背景や経済的状況,職業の貴賎や外国人・難病患者への差別や偏見を否定するといった,他者の基本的人権の尊重や公平性,社会正義に通底する。これより,高い人権意識を持つ者ほど,男女平等というリベラルな価値観を有するため,女性管理職に対する態度も公平で,受容的であると考えられる。
 以上の議論より,「高い人権意識を持ち,平等主義的性役割態度の保持者は,女性管理職に対する認知が肯定的となるだろう」という仮説を設け検証する。
方法
 男女大学生44名を対象に質問紙調査を実施した。平均年齢は19.70歳 (SD = 1.13) であった。男女の内訳は男性が32名,女性が12名であった。調査は2018年12月に実施した。調査の手続きは,講義後に質問紙を用いた集合調査を実施した。質問紙では,女性管理職に対する認知については,若林・宗方 (1985) の「女性管理職に対する態度尺度 (日本語版WAMS) 」19項目 (α = .84) を用いた。人権意識については,橘川 (2009) の「人権感覚尺度」11項目 (α = .84) と,性役割態度については,鈴木 (1987; 1991; 1994) の「平等主義的性役割態度スケール短縮版 (SESRA-S) 」15項目 (α = .86) を用いた。
結果と考察
 性別や年齢などの統制変数が従属変数に影響を及ぼすかを確認したうえで,仮説検証を行うための共分散分析を実施した。分析にあたっては,性役割態度得点と人権感覚得点を独立変数,女性管理職への態度得点を従属変数,性別を共変量として分析に投入した。
 その結果,人権意識が高いほど,女性リーダーに対する肯定的・好意的認知が高まることが示された。人権意識の高さは,社会における公平性や平等性,社会正義を重んじる価値観に繋がるものである。こうした価値観は,性差別否定に関する考え方にも般化し,女性リーダーに対する肯定的・受容的認知を高めることに寄与したと考えられる。人権意識の高さは,男女の区別なく相手を一人の人間として尊重し,関わろうとする態度にも繋がると考えられる。
 また,性役割態度が平等主義であるほど,女性リーダーに対する肯定的・好意的認知が高まることが示された。平等主義的性役割態度の保持者は,個人としての男女の平等を信じる傾向が強いことから,こうした態度が職業観や社会観に影響を及ぼした結果 (武藤・桂田, 2018),女性リーダーを肯定的・受容的に認知したと推察される。
 本研究では人権意識と性役割態度の交互作用効果は確認されなかったが,平等主義的性役割態度群・人権意識高群において,最も女性リーダーに対する態度得点が低くなっており,肯定的な認知をしていることが示唆された。一方,伝統主義的性役割態度群・人権意識低群において,最も女性リーダーに対する態度得点が高くなっており,否定的な認知をしていることが示唆された。これより,保有する性役割態度と人権意識の内容によって,女性リーダーに対する認知が変化することが確認されたといえ,仮説は一部支持されたといえよう。

キーワード
性役割態度/人権意識/女性リーダー


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