発表

1A-087

パートナーによる被支配感と暴力行為被害の関連
──恋人と配偶者による違い──

[責任発表者] 上野 淳子:1
1:四天王寺大学

目的
 恋人に恐怖心を抱き,恋人に支配されていると認識する「恋人による被支配感」(上野他, 2018, 2019)は,暴力行為の内容や頻度と共にデートDV被害の指標となるが,暴力行為がなくとも被支配感が高い者も存在する。したがって,本研究の目的は,被支配感と関連する変数を明らかにすることである。また,男性の方が恋人に支配されやすいが(上野他, 2019),夫婦でもそうなのか検討する。なお,年代による影響を排除し,恋人か夫婦かという関係性の違いのみを検討できるよう,未婚者と既婚者の率が同程度となる25-35歳を調査対象とした。
方法
 調査会社に委託しインターネット調査を行った。2018年10月,25-35歳の恋人がいる400名,配偶者がいる(事実婚含む)400名を対象に調査を行った。トランスジェンダー1名(0.13%),同性パートナー13名(1.63%)が含まれており,異性の恋人のいる男性,異性の配偶者のいる男性の参加者が少なかったため,2019年5月に別の対象者に同じ調査を行い,25-35歳の異性の恋人のいる男性200名,異性の配偶者のいる男性200名のデータを収集した。恋人の場合は交際期間,配偶者の場合は結婚期間が1ヶ月に満たない者を除外し,異性の恋人のいる女性277名(年齢M=29.65, SD=3.41)・男性302名(年齢M=30.54, SD=3.19),異性の配偶者のいる女性327名(年齢M=31.34, SD=2.83)・男性271名(年齢M=31.97, SD=2.61)の計1,177名を本研究の分析対象者とした。調査内容は以下の通りである。
 自身およびパートナーのジェンダー 自由記述で回答を求めた。
 交際・結婚期間 現在のパートナーと恋人として交際している(していた)年月,既婚者には結婚している年月を尋ねた。
 パートナーによる被支配感 上野他(2018)の「恋人による被支配感」全8項目(5件法)の「恋人」を「パートナー」に置き換えて用いた。
 平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S) 全15項目,5件法(鈴木, 1994)。
 自尊感情尺度 全10項目,5件法(Rosenberg, 1965; 山本・松井・山成, 1982)。
 暴力行為被害 精神的暴力の束縛,軽侮,脅迫,身体的暴力,性的暴力にあたる行為各4項目,計20項目についてパートナーからされた頻度を尋ねた(「全くない」,「1度だけ」,「数回」,「たびたび」,「いつも」の5件法)。
結果
 パートナーによる被支配感(α=.86),SESRA-S(α=.85),自尊感情(α=.83),束縛(α=.84),軽侮(α=.85),脅迫(α=.86),身体的暴力(α=.92),性的暴力(α=.87)の合計得点についてジェンダー(女性・男性)×関係性(恋人・配偶者)の分散分析を行ったところ,被支配感は男性(F(1,1173)=29.30, p<.001, η2=.02)および既婚者(F(1,1173)=10.93, p<.001, η2=.01)が高く,自尊感情は男性(F(1,1173)=15.95, p<.001, η2=.01)および既婚者(F(1,1173)=4.25, p<.05, η2=.00)が高かった。暴力行為被害の束縛は男性(F(1,1173)=13.45, p<.001, η2=.01)および既婚者(F(1,1173)=4.12, p<.05, η2=.00)が高く,軽侮は男性(F(1,1173)=10.18, p<.001, η2=.01)および既婚者(F(1,1173)=9.46, p<.01, η2=.01)が高く,脅迫は男性(F(1,1173)=7.94, p<.01, η2=.01)および既婚者(F(1,1173)=8.07, p<.01, η2=.01)が高く,身体的暴力は男性(F(1,1173)=15.45, p<.001, η2=.01)が高かった。SESRA-Sと性的暴力のF値はいずれも有意でなかった。
 交際中の女性,交際中の男性,既婚女性,既婚男性別に,被支配感得点の最上位群,上位群,下位群,最下位群の4群(約25%ずつ)に分類した。交際期間,結婚期間(既婚者のみ),自尊感情,SESRA-S,各暴力行為被害(束縛,軽侮,脅迫,身体的暴力,性的暴力)得点について4群の間に差があるか,一要因分散分析,多重比較(DunnettのT3)を行った。その結果,交際期間と被支配感の関連は見られなかった。結婚期間は既婚女性においてのみ被支配感の最も低い群が他群よりも短かった。自尊感情は交際中の男性,既婚女性,既婚男性において被支配感が低いほど高かった。SESRA-Sは被支配感が低いほど高く,暴力行為被害は全て被支配感が高いほど高かった。
考察
 性的暴力を除いて男性の方が暴力行為を受けているというのはデートDV研究で度々見られる結果であるが,本研究ではDVでもそうであることが示された。予防教育や被害者支援を行う上では男性被害者も考慮する必要がある。束縛,軽侮,脅迫といった精神的暴力は婚姻関係にある方が生起しやすかった。しかし,男性や既婚者は暴力行為被害や被支配感が高いものの自尊感情も高かったため,精神的健康度にパートナー関係が与える影響についてはさらなる検討が必要である。ジェンダーや未婚・既婚,暴力の種類に関わらず,パートナーから暴力行為を受けると支配されていた。結婚期間の長い妻が支配されやすいのは,結婚生活では収入や役割における夫婦間不平等が拡大しがちなためだろう。平等主義的性役割と被支配感の関連からも,ジェンダーに囚われないパートナー関係の構築が重要であると言える。
引用文献
上野淳子・松並知子・青野篤子 (2018). 大学生におけるデートDV被害の男女差─恋人による被支配感と自尊感情に与える影響─ 四天王寺大学紀要, 66, 91-104.
上野淳子・松並知子・赤澤淳子・井ノ崎敦子・青野篤子 2019 青年後期と成人前期におけるデートDV被害─恋人による被支配感に与える影響─ 四天王寺大学紀要, 67, 33-43.

キーワード
IPV/ジェンダー/成人前期


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