発表

3B-086

大学生におけるハーディネスがネガティブ経験後の成長感に与える影響

[責任発表者] 高島 啓志:1
[連名発表者・登壇者] 山本 博樹:1
1:立命館大学

 目的
 ストレス社会に生きる我々は,様々なネガティブな経験に遭遇するが,その経験に肯定的意味づけを行うことによって成長感を獲得する。その成長感のことをTedeschi & Calhoun(1996)は外傷体験後成長感(Posttraumatic growth:PTG)と呼んだ。さらに宅(2016)は近親者の死や学業上での不振,人間関係でのトラブルといったネガティブ感情を伴うような経験は全てPTGに関連すると述べている。
 また三好・井上(2008)によると,Kobasa(1979)はコミットメント・コントロール・チャレンジの三つの特性によって構成され,この3つの要素がストレッサーに抵抗のあるパーソナリティ特性としてハーディネスという概念を提唱した。コミットメント・コントロール・チャレンジはそれぞれ「人生の様々な状況に自分を十分関与させる傾向」「個人が出来事の推移に対して一定の範囲内で影響を及ぼすことができると信じ行動する傾向」「安定性よりも予期せぬ事態などを自分が成長する機会と捉える傾向」と定義されている。ハーディネスは認知的な特徴として,ストレスの原因となるストレッサーをポジティブなもの,あるいはコントロールが可能なものであると見なすため,ハーディネスの高い人はストレッサーをストレスの高いものとして知覚しにくい傾向があるとされている。
 さらにストレス反応軽減にはハーディネスだけでなく,個人的側面としてのコーピングや環境的側面としてのソーシャル・サポートも同様に効果があると考えられており,要因は様々である。
 そこで本研究では,上記のハーディネス,コーピング,ソーシャル・サポートがそれぞれどの程度ネガティブ経験後のPTGに影響を与えているのかを調査することを目的とする。

 方法
参加者 京都府の私立大学に通う,男性83名,女性127名に質問紙調査を行った。参加者の平均年齢は21.01歳,SD=1.80であった。
質問紙構成尺度
 個人のハーディネスの程度を測定するために,Kobasaによって作成され,東條・佐々木(2004)によって27項目に厳選された大学生用ハーディネス尺度を使用し4件法による回答を求めた。
 また個人のコーピングを測定する尺度として,神村・海老原・佐藤・戸ヶ崎・坂野(1999)の3次元モデルにもとづく対処方略尺度(TAC)24項目を用い5件法による回答を求めた。
 さらに家族や身の回りからの情緒的なサポートを中心としたソーシャル・サポートの程度を測定するために久田・千田・箕口(1989)によって作成された学生用ソーシャル・サポート尺度(SESS)を用い4件法による回答を求めた。
 そして個人の心的な外傷体験を経験したことによってどのような成長が見られたのかを測定するために宅(2017)によって作成された日本語版外傷体験後成長感尺度(PTGI-J)を用い6件法での回答を求めた。

 結果と考察
1)尺度の信頼性の検討
 それぞれの尺度の尺度構成を調べるために,主因子法,プロマックス回転による因子分析を行い,その後抽出された尺度得点の信頼性を確かめるために Cronbachのα係数を算出し,内的整合性を確認した。その結果いずれの項目においてもα係数は.71以上であったことから信頼性は妥当であったと考えらえる。
2)各尺度からPTGへの重回帰分析
 ハーディネス,TAC,SESSがそれぞれPTGにどの程度影響を与えているのかを検討するためにハーディネス,TAC,SESSを説明変数とし,ネガティブ経験後のPTGを従属変数とする重回帰分析をSPSSを用いて行った。その結果,ハーディネス(β=.23,p<.01),TAC(β=.17,p<.05),SESS(β=.18,p<.01)のすべての項目がPTGに対して有意な正の影響を与えており,中でもハーディネスがもっともPTGに影響を与えていることが明らかとなった。また3つの説明変数においてVIFが2未満であったことから多重共線性は発生しなかったと言える(Table1)。
 また今回の重回帰分析の結果における効果量についてはR2=.15(p<.001)であったことから,この効果は中程度であったことが分かった。一方でPTGを決定づける要因は本調査において用いた三要因だけでなく,より多くの要因がPTGの獲得に影響を与えているということも示された。したがって,他にどのような要因がPTGに影響を与えているのかについては今後調査していくことが必要となるだろう。さらに環境的要因についてのソーシャル・サポートについては具体的にどのような支援によってより高いネガティブ経験後の成長感を得ることができるのかについても今後調査していく必要があるだろう。

キーワード
ハーディネス/外傷体験後成長感


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