発表

1D-085

長期的課題遂行時のポジティブ・ネガティブ体験と情熱
楽観性,Grit,希望の関連

[責任発表者] 本多 麻子:1
1:東京成徳大学

 目的
 長期的目標の達成には情熱と粘り強さから構成されるGritが必要である。Gritは楽観性や能力観と関連し,興味,練習,目的,希望に特徴づけられ,長期的な目標追求やその結果と関連する(Duckworth et al., 2007)。希望(hope)は将来の目標達成への肯定的期待であり,肯定的な目標志向的計画と目標指向的意思を伴う認知的傾向である(Snyder et al., 1991)。希望は楽観性と類似しており,両者には正の相関がある。長期的な目標追求時には様々な困難に遭遇し,ときには達成感や喜びを味わう。本研究では長期的目標の達成における楽観性,Grit,希望の関連と,長期的な課題遂行に伴うポジティブ体験とネガティブ体験の構成要素の解明を目的とした。
 方法
 対象者 大学生249名(平均20.6±1.4歳)であった。長期的課題の継続年数は平均10.3±3.1年であった。研究実施に際し,大学内の研究倫理審査委員会の承認を得た。
 調査票 楽観・悲観性尺度(外山, 2013),日本語版Grit-S尺度(西川他, 2015),日本版ホープ尺度(加藤 & Snyder, 2005)を用いた。フェイスシートでは年齢,性別,長期的課題の遂行経験の有無,課題の内容,継続期間について記入を求めた。長期的課題の遂行時に体験したポジティブ体験とネガティブ体験の具体的内容について自由記述を求めた。
 手続き 授業中あるいは大学外で調査票を配布し,記入後に回収した。
 分析方法 各質問紙の得点を算出後,それぞれ相関係数を求めた。自由記述について,KH Coderを用いてテキスト分析を行い,Jaccard係数0.2以上を基準として共起ネットワークを求めた。
 結果
 楽観性得点は,根気(r = .15),Grit(r = .15),目標志向的計画(r = .28),目標志向的意思(r = .28)の各得点,継続年数(r = .13)とそれぞれ正の相関があった(p<.05)。悲観性得点は,目標志向的計画(r = -.20),目標志向的意思(r = -.20)の各得点とそれぞれ負の相関があった(p<.01)。
 長期的課題遂行時のポジティブ体験とネガティブ体験の共起ネットワークをそれぞれ図1と図2に示した。ポジティブ体験では,「自己」-「ベスト」,「シュート」-「入る」,「レギュラー」-「取れる」の共起関係がそれぞれ強かった。ネガティブ体験では,「レギュラー」-「外す」,「試合」-「ミス」,「シュート」-「入る」の共起関係がそれぞれ強かった。
 考察
 楽観性得点が高い者は情熱を持ち,根気強く,目標達成に到達可能な道筋を見出す能力と計画に沿って活動を起こし,維持する能力が高いこと,一方,悲観性得点が高い者は目標達成に到達可能な道筋を見出す能力と活動を起こし,維持する能力がいずれも低いことが明らかとなった。長期的課題遂行時のポジティブ・ネガティブ体験の自由記述の結果から,他者からの賞賛などよりもむしろ,自己ベストを更新した,レギュラーを取れたなどの自分の結果に対して達成感や喜びを感じること,一方,他者からの叱責などよりもむしろ,レギュラーを外された,シュートが入らなかったなどの自分の結果に対しいらだちや悔しさを感じることが判明した。
 引用文献
Duckworth et al. (2007). GRIT: Perseverance and passion for long-term goals. Journal of Personality and Social Psychology, 92, 1087-1101.
加藤 司・Snyder, C. R. (2005). ホープと精神的健康との関連性 心理学研究, 76, 227-234.
西川一二他 (2015). 日本語版Short Grit(Grit-S)尺度の作成 パーソナリティ研究, 24, 167-169.
Snyder et al. (1991). The will and the ways: development and validation of individual-differences measure of hope. Journal of Personality and Social Psychology, 60, 570-585.
外山美樹 (2013). 楽観性・悲観性尺度の作成ならびに信頼性・妥当性の検討 心理学研究, 84, 256-266.
本研究はJSPS科学研究費(16K01769)の助成を受けた。

キーワード
楽観性/情熱/希望


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