発表

1C-083

小学生から高校生までの生活習慣とレジリエンスとの関連(1)
スマートフォンの使用と使用時間に焦点をあてて

[責任発表者] 小林 朋子:1
1:静岡大学

目的
 様々な危機的な状況におかれても,精神的健康の維持および傷ついても回復できる力を養っておくことが求められてきている中,近年注目されている心理変数に,「レジリエンス(resilience)」がある。最近のレジリエンス研究は脳科学に関連した研究がトッピクとなっており(O’Dougherty et al,2013),視床下部-下垂体-副腎系が過反応を示す者はレジリエンスが弱い(作田ら,2016)など様々な知見が得られている。 このことからレジリエンスは身体的な要因と関連があり,身体を維持するために必要な生活習慣とも密接に関連していると考えられる。そこで本研究では,小学校4年生から高校3年生までを対象とし,生活習慣の中でも近年,急速に子どもたちの生活の中に浸透している「スマートフォン」に着目して,レジリエンスとの関連について明らかにした。

方 法
1.調査対象 A県の小学4年生から高校3年生までを対象とし,回答に不備がなかった小学生1844名,中学生4146名,高校生1320名の計7310名の回答を用いた
2.調査内容 
子ども用レジリエンス尺度(小林ら,2018):10因子30項目について5件法で回答を求めた。因子は「つながり」「援助行動」「ルーティン行動」「気持ちのコントロール」「セルフケア」「目標達成行動」「自己肯定」「客観的な捉え方」「自己理解」「変化への捉え方」であった。
生活習慣に関する項目:堀田ら(2001),松浦ら(2008),小杉ら(2008),服部(2012),中村ら(2012)の調査項目から,「睡眠」「食事」「運動習慣」「スマホの使用」に関する項目を用いた。
3.調査時期および実施方法 時期は2018年9~10月で,学級単位で,授業時間を用いて集団で実施された。統計処理には,SPSS(Ver24.0)を使用した。
4.倫理的配慮 本研究は静岡大学倫理審査委員会で承認されており,承認された手続に沿って実施した。

結 果 および 考 察
1.スマートフォンの使用の有無
自分で自由に使えるスマートフォンの有無について尋ね,校種ごとに「スマートフォンの有無」を独立変数,レジリエンス尺度の各下位尺度得点を従属変数としたt検定を行った。その結果,小学生と高校生では差が認められなかったが,中学生では「ルーティン行動」(p<.001)で「持っている生徒」よりも「持ってない生徒」の方が高く,「気持ちのコントロール」(p<.05)では,「持っている生徒」の方が,「持ってない生徒」のよりも気持ちのコントロールが高いことがわかった。このことから中学生ではスマートフォンによって気分転換している可能性が考えられた。
2.スマートフォンの使用時間
 スマートフォンの使用時間を尋ね,校種ごとに一元配置分散分析を行った。その結果,小学生と中学生ではすべての下位尺度で有意差が認められたが,高校生では「つながり」と「気持ちのコントロール」で有意ではなくそれ以外の下位尺度で有意であった。例えば,「つながり」では,小学生では30~1時間未満,中学生では30分未満が一番高く,1時間未満でスマートフォンを使用している子どもの方が「つながり」が高い傾向であった。しかし3時間以上の使用になると得点が低くなった。一方,高校生では有意差がなかった。また「気持ちのコントロール」でも同様に小学生では30~1時間未満が最も高かった。中学生では30分未満が一番高く,1時間未満でスマートフォンを使用している子どもの方が「持っていない」子どもより「気持ちのコントロール」が高い傾向であった(p<.05)。一方で,高校生では有意差がなかった。
1時間以内の子どものレジリエンスの得点が高い水準であったことから,適度な使用により,友達とのつながりや気分転換などが行われていると考えられる。そのため,「スマホを持たせない」ではなく,スマホといかに上手に付き合うか,さらに1時間くらいになったらそこでやめられることを育てていくことが必要である。

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