発表

2D-082

学年別の歩行中・自転車運転中の交通事故死傷者数に関する一考察

[責任発表者] 矢野 伸裕:1
[連名発表者・登壇者] 森 健二#:1
1:科学警察研究所

【目的】
 年齢と歩行中死傷者数の関係では,小学1~2年生に該当する7歳が突出して多いことが知られている。これは,一般的には,小学校入学までは親・大人と一緒に行動することが多いのに対し,小学生になると児童だけで行動することが多くなるが,しかし7歳ではまだ経験不足や交通安全意識の未成熟のため事故に遭いやすいからと説明されている(*1*2など)。就学・進学などによる環境変化と心理的発達の段階が学童~青年前半期の交通事故に関係していることが考えられる(関連*3)。本研究では,基礎データとして,小学生~高校生の各学年の歩行中・自転車運転中の事故件数について調べ,この問題について若干の検討を加える。

【方法】
 警察庁の交通事故統計データベースを利用し,平成27年4月~平成30年3月(平成27,28,29年度に該当)に発生した小学生,中学生および高校生の歩行中・自転車運転中の事故死傷者数を学年別,性別および通行目的別に集計した。通行目的は「登下校」と「私用(アルバイト勤労を含む)」の2種に分けた。歩行中死傷者には車椅子やスケートボード等の使用は含まれない。自転車運転中死傷者には二人乗りの同乗者は含まれない。また,学年別の在学者数を政府統計の学校基本調査より取得した(*4)。義務教育学校,中等教育学校,特別支援学校については,各学年を通常の小学1年~高校3年生に対応させた。そして,平成27,28,29年度の各学年の在学者数を学年別に合計して,これらの値を用いて学年別の在学者1万人当たりの事故死傷者数を算出した。

【結果】
 図1の歩行中事故死傷者数の結果より,(1)小学生では,女子は男子よりかなり少ないが,中学生,高校生と進むと,女子が増加し男子を上回る,(2)小学生では「私用」のほうがかなり多いが,中学生や高校生女子では「登下校」のほうが多い,(3) 「登下校」では,小学・中学・高校のいずれも1年生が最も多くしかも進学前の最終学年を上回るが,学年が上がるほど減少する,などの点が指摘できる。
 図2の自転車運転中事故死傷者数の結果より,(1)小学生~中学生では女子は男子のほとんど半数以下と少ないが,高校生では男女差が小さい,(2)「登下校」では,中学・高校のいずれも1年生が最も多くしかも進学前の最終学年を上回るが,学年が上がるほど減少する,この傾向は高校生で顕著である,(3)さらに中学生男子や高校生では「私用」の場合も(2)と同様の傾向が見られる,などの点が指摘できる。

【考察】
 図1と図2より,小学生の自転車運転中など例外はあるものの,死傷者数が進学直後の1年生で進学前の最終学年を上回って増加し,その後,学年が上がるほど減少する,という現象がしばしば見られる。この理由の仮説の一つとして,進学によって通学路や活動範囲など社会環境が変化したため,進学前と異なる不慣れな交通行動をとることがいったん増加し,その後,新しい交通行動に徐々に慣れてくる,ということが考えられる。また,性差もうかがわれ,年齢が上がるほど死傷者数に占める女子の割合が増加する傾向は,心理的発達や成熟と絡めて検討する必要があろう。

参考文献
*1イタルダ・インフォメーション, No.116(子供の歩行中事故), 2016
*2 年道路交通研究会. 共有しておきたい小学1年生の歩行者事故の実態, 月刊交通2017.11, 76-81
*3 山口直範. 児童の歩行中事故と就学前後の行動範囲の変化, 平成30年度交通科学研究会研究発表会, 2018
*4 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400001&tstat=000001011528

キーワード
進学/一年生/性差


詳細検索