発表

2D-081

災害発生時の交通情報取得
大阪府北部地震時の大阪モノレール利用者調査

[責任発表者] 高原 龍二:1
[連名発表者・登壇者] 上田 真由子:2, 中村 志津香:3
1:大阪経済大学, 2:大阪大学, 3:関西学院大学

1.問題
 鉄道における災害時や異常時の情報提供については,質問紙調査などによって鉄道事業者に求められる情報やその有効性が検討されている(山内・菊地・藤浪・村越・小嶋, 2016)。しかし,情報とは必ずしも鉄道事業者から提供されるものだけとは限らない。特に近年では通信手段の発達により駅や車内においてもニュースや外部の交通情報にアクセスすることが容易となっている。また,鉄道事業からの情報提供であっても放送や車内モニタなど複数の媒体を用いることができる。そこで,実際に起きた災害時,鉄道利用者が次の行動を定めるにあたりどのような情報源を利用したのか,更にその情報源にどの程度期待をしていたのかについて明らかにすることを目的とした。この目的のため,2018年6月18日の大阪北部を震源とする地震発生時に大阪モノレールの駅や車内にいた利用者の意識を把握するための質問紙調査を行った。

2.方法
 対象者 大阪モノレール利用者900名に質問紙を配布し,地震発生時に駅や車内にいたと回答した利用者を対象とした。
 手続き 2019年3月11日の7:30から8:30にかけて大阪モノレールを利用する旅客に,全ての駅の改札にて調査依頼を行って質問紙を配布し,回答結果を駅内に設置された回収箱にて回収した。回収箱は5日間設置した。
 尺度 質問紙はデモグラフィックや日常の大阪モノレールに対する満足度の他,地震時の所在地や不安,情報取得に関する質問の計31項目から構成された。情報取得に関しては,公式HP,公式Twitter,放送・係員からの案内,案内モニタ,会社への電話問い合わせ,鉄道運行情報(アプリ,SNS等),TV・ラジオ等,友人・知人との情報交換,周囲の利用者,その他の10の情報源に対しする期待を「期待した」から「期待しなかった」までの7件法で,有用性を「役立った」から「役立っていない」までの7件法に「使っていない」を加えて尋ねた。

3.結果
 配布数に対する回収率は43.0%であった。
 有用性の評定の内「使っていない」を「役立っていない」に変換した上で各情報源に対する期待と有用性について分析を行った。評定は7件法1項目で行っていることから,整列ランク変換による分散分析を行ったところ,認知(期待・有用性)の主効果(F(1, 130) = 84.77, p < .001, ωp2 [95%CI] = .39 [.26, .51]),情報源の主効果(F(8, 1040) = 58.59, p < .001, ωp2 [95%CI] = .31 [.25, .35]),交互作用効果(F(1, 130) = 6.99, p < .001, ωp2 [95%CI] = .04 [.02, .06])の全てが有意であった。単純主効果を確認したところ,公式Twitterと友人・知人を除いては有用性が期待を有意に下回っており,情報源では放送・係員が他の全ての情報源より有意に高い期待を寄せられていることが示された(Figure 1)。
 情報源の評定と大阪モノレールへの満足度の関連を明らかにするために,性別,年代,地震時の所在地(駅,停車中車内,走行中車内),期待,有用性,有用性-期待を独立変数とした順序プロビット分析を行った。ステップワイズ法により変数選択を行った結果,TV・ラジオの期待,および放送・係員からの案内,TV・ラジオの有用性が有意な関連を持ち放送・係員からの案内は満足度に対して概ね正の関連を持つことが示された(Somers' D [95%CI] = .48 [.36, .61])。

4.考察
 明らかになった結果を整理すると,(1)友人・知人と公式Twitterを除いた全ての情報源で期待よりも有用性の評定が低く,(2)情報源間の比較では放送・係員からの案内への期待が高く,(3)大阪モノレールへの満足度には,放送・係員からの案内が主に寄与していることが示された。
 (1)のほぼ全ての情報が期待より役立たなかったことは,事業者からの情報提供のあり方にも改善の余地があることを示唆しているといえよう。改善は,安全のためだけでなく,顧客の期待に応じるというサービス業の立場としても有益なものといえる。期待の高かった放送・係員からの案内を中心とした改善活動が有効であろう。(2)よりスマートフォンなどの情報収集手段を持っていたとしても,利用者は即時的・直接的な事業者からの情報提供を優先的に望んでいることが示唆された。一方で,その期待に有用性の認知は及ばず,自由記述設問では速やかな情報提供や情報更新の頻度を求める意見が散見された。(3)より,放送・係員からの案内の有用性はモノレールに対する日常的満足度にも寄与していることを踏まえると,事業者は放送や係員からの案内を主要な情報提供チャネルとして活用し,他を副次的なチャネルとして活用するよう従業員教育を行い,統一された情報提供体制を構築することが望ましいといえよう。

キーワード
モノレール/災害/情報取得


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