発表

2C-067

喚呼によるつり込まれエラー防止効果(2)

[責任発表者] 佐藤 文紀:1
[連名発表者・登壇者] 小野間 統子:1, 井上 貴文:1
1:鉄道総合技術研究所


つり込まれエラーとは,視覚的または聴覚的に情報が呈示されたことを切っ掛けとして,誤った反応(行動)が生じるエラーである。つり込まれエラーの防止は鉄道分野に限らず交通分野の安全において重要である。
 佐藤(2018)はつり込まれエラー防止対策として,つり込まれてはいけないことを定期的に声に出す反復喚呼に注目し,その効果検証を行った。その検証課題では,PC画面に3×3のマトリックスが呈示され,そのいずれかのセルに矢印または数字が,緑または桃の背景色で呈示された。矢印が呈示された時はジョイスティックを矢印の指す方向に倒し,数字が呈示された場合は,対応するボタンを押すことが求められた。ただし,事前に実験者から指示される特定方向を指す矢印(特定矢印)が呈示された時は,ジョイスティックを倒さないことが求められた。この特定矢印に反応する誤りをつり込まれエラーとした。
 この課題を喚呼なし条件では喚呼せずに行うことが求められ,喚呼あり条件では,セルの背景色が桃である試行では「〇は無視(〇は特定矢印の方向)」と喚呼しながら課題を行うことが求められた。佐藤(2018)では,喚呼することで,特定矢印を無視することを意識上に保持しつづけやすくなると考え,喚呼あり条件の方がつり込まれエラー数が少なくなると予測したが,結果は,喚呼あり条件の方が多くなった。
 これは,先取喚呼あり条件の実験参加者が,喚呼のタイミングを知るためにセルの背景色を監視する必要があったため,特定の矢印のことを意識上に保持するのが困難になり,エラーが増えたと考えられる。そこで本実験では,セルの背景色の監視の必要性をなくし,実験参加者が任意のタイミングで喚呼できる状態で,喚呼のつり込まれエラー防止効果を検証した。

方法実験参加者:大学生77名が実験に参加した。平均年齢21.5歳(標準偏差1.5)であった。
 実験計画:1要因2水準(喚呼あり,喚呼なし)の実験参加者間計画であった。喚呼あり条件が35名,喚呼なし条件42名であった。
 課題:本課題は,画面に呈示される矢印又は数字に従ってジョイスティックを倒したりボタンを押したりする課題であった。矢印は上下左右の4種類あり,その方向にジョイスティックを倒すことが求められた。ただし,事前に教示された1方向の矢印(特定矢印)には,反応しないことが求められた。数字は「2」,「3」,「4」の3種類であり,対応するボタンを押すことが求められた。


画面には3×3のマトリックスが表示され,いずれかのセルに矢印か数字が呈示された。実験参加者の反応の有無にかかわらず2秒経過すると,その矢印または数字が消え,新たな矢印または数字が呈示された。矢印が2回以上連続で呈示されることはなかった。全試行のセルの背景色は緑であった。
 手続き:実験は個別実験で行われた。まず,ジョイスティックの操作に慣れるために,つり込まれエラー誘発課題の練習を行ってから本番を行った。練習では全ての方向の矢印に反応することが求められた。練習の後に,反応する必要のない矢印(特定矢印)を指示された。喚呼あり条件の被験者には,任意のタイミングで「〇は無視(〇は特定矢印の方向)」と喚呼することが求められた。
 その後,フィラー課題として,PC画面に呈示される文字列が意味を持つ単語か否かを判断する,語彙判断課題を行った。語彙判断課題の後,つり込まれエラー誘発課題の本課題を行った。つり込まれエラー誘発課題での試行数は160試行であり,その内,特定矢印は10試行であった。

結果特定矢印に反応した,つり込まれエラー数について,喚呼の有無でt検定を行った結果,喚呼あり条件のほうが喚呼なし条件よりもエラー数が少なかった(t(49)=2.06, p<.05 ,r=.28)。また,反応すべき矢印と数字に対する正答数と反応時間について同様にt検定を行った結果,有意でなかった。

考察実験参加者が任意のタイミングで喚呼できる状態で,喚呼のつり込まれエラー防止効果を検証したところ,喚呼あり条件の方がつり込まれエラーが少なくなり,喚呼のつり込まれエラー防止効果が確認された。この結果は,佐藤(2018)とは異なり,セルの背景色を監視する必要がなかった分,認知資源に余裕ができ,喚呼をすることで特定矢印のことを意識上に保持しやすくなったためと推察される。
 今回の結果から,喚呼はつり込まれエラーを防ぐ効果があり,鉄道などの交通分野への応用が考えられるが,その際には喚呼実施者が,喚呼タイミングを任意に決められるようにすることが重要であると考えられる。

文献佐藤(2018) 喚呼によるつり込まれエラー防止効果 日本心理学会第82回大会発表論文集 472.

キーワード
喚呼/つり込まれエラー


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