発表

2B-085

セイフティI 問題からの労働災害防止対策の批判的評価による安全意識の向上

[責任発表者] 重森 雅嘉:1
1:静岡英和学院大学短期大学部

問題と目的
 「完璧な手順を遵守すれば安全」という考え(SAFET-I)が安全施策の中心であったが,すべてを想定した手順は作れないという完璧性問題と完璧な手順は効率的に実行できないという効率性問題が含まれる。このため考案された労災対策ではない作業が行われること(Work-As-Done; WAD)がある。また,実際には不完全かつ遵守できない対策でも作業者を安心させリスク意識を低下させる可能性がある。そこで労災防止には,対策の不十分さの認識とリスク意識の向上が必要となる。本研究は,作業者に労災対策を水平展開を含む完璧性と効率性(継続性)の観点で集団評価させることにより,作業者の職場の労災対策への信頼の低下とリスク意識の向上可能性を検証する目的で実施された。

方法
 参加者 A工場の作業者80名が研修として調査に参加した。このうち74名は約20名ずつ4回に分け,研修を受けた。この研修前に,他の6名に同様の研修を実施し,4回の研修で集団評価のファシリテーターを任せた。
 手続き 1回の研修は約90分であった。参加者は自工場の労災の取組評価,労災対策の重要度順位づけ,労災対策事例の効果評定とWAD推定(3例)を個人で行なった。続いて,4〜6人の集団で個人評価と同じ労災対策事例の効果評定とWAD推定(3例)を行なった。その後,再び個人で自工場の労災の取組評価と労災対策の順位づけを行なった。
 仮説 (1)完璧性と効率性観点からの労災対策効果の見直しにより問題が明白になるため,個人より集団の労災対策効果の評価は低下する。(2)集団評価により労災対策の評価が低下すれば職場の労災取組への認識も低下すると考えられるため,集団評価後の職場の労災取組評価は下がる。(3)労災対策の効果と職場の労災取組評価の低下により,作業者の安全意識が高まり,集団評価後の安全意識対策の順位が上昇する。
結果と考察
 労災対策の効果の各集団評価と各集団の個人評価の平均の差を事例および問題の視点ごとに比較した(Figure1)。分散分析の結果,各主効果と交互作用が見られた(F(2,34)=11.72; F(2,34)=10.77; F(4,68) = 3.38,以下有意水準は.05)。単純主効果検定の結果,事例BとCで労災対策の問題の視点の効果が見られたが(F(2,34)=5.12; F(2,34)=11.29),事例Aでは見られなかった(F(2,34)=1.84)。すなわち,2つの労災対策で,仮説(1)通り水平展開と効率性の集団評価に低下が見られた。
 次に,自工場の労災取組の個人評価(5段階)を集団評価前後で比較した(Figure2)。t検定の結果,仮説(2)通り集団評価後に労災取組の個人評価の低下が見られた(t(79)=6.60)。
 最後に,作業者の安全意識指標として,各労災対策の集団評価前後の重要度順位得点を比較した(Figure3)。分散分析の結果,対策種類の主効果(F(6,474)=14.24)と交互作用(F(6,474)=9.19)が見られた。集団評価前後で各労災対策の効果について多重比較を行った結果,集団評価前では機器・道具対策の重要度順位が他の対策より低く,逆に安全意識対策の順位は他の対策より高かった。また集団評価後では,特に安全意識対策の重要度順位が作業環境対策以外の対策より高かった。すなわち安全意識対策の重要性認識は集団評価前後に関わらず高いことが明らかになった。次に重要度について各労災対策の種類の集団評価の単純主効果検定を行なった結果,手順書の使用対策と保護具着用対策の重要度の認識に低下(F(1,79)=7.32; F(1,79)=11.64),機器・道具対策と作業環境対策の重要度の認識が向上 (F(1,79)=28.0; F(1,79)=7.09)が見られたが,仮説(3)と異なり,安全意識対策などの重要度の認識に集団評価の効果が見られなかった(F(1,79)=0.22)。これは天井効果の可能性がある。

キーワード
セイフティI/労働災害防止/安全意識


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