発表

2A-089

保育の場で働く人々のメンタルヘルス(1)
ー役職・職種による違いー

[責任発表者] 山極 和佳:1
[連名発表者・登壇者] 藤後 悦子:1, 日向野 智子:1, 磯 友輝子:1, 髙橋 一公:1, 角山 剛:1
1:東京未来大学

 問題
 近年の喫緊の課題である保育士の不足および早期離職に関する研究で,保育士のストレス要因は職場の人間関係であることが指摘されている。早期離職者の実際をインタビューによって検討した 森本・林・東村(2013)では,退職理由の表向きは「進路変更」や「体調不良」が多いものの,その根本的な原因は職場での人間関係であったことも示されている。これらから,保育士の早期離職を防ぐためには職場の人間関係を理解することが重要と言えるが,これまでの研究では保育士のみが取り上げられたものが多い。
 そこで本研究では,保育の場で働く様々な役職,職種の人々を対象として,メンタルヘルスおよびコミュニケーションスキルについて検討することを目的とする。
 方法
調査期間:2017年6月半ば~6月末の2週間であった。
調査方法:調査票は,新潟県保育士会に所属する新潟県内の391保育施設の職員3910名を対象として配布した。319施設3234名から返送があり(返送率81.58%),有効回答者数は2767名(有効回答率85.6%,女性2628名・男性134名・不明5名),平均年齢は39.24歳(標準偏差12.17)であった。
調査内容:メンタルヘルス,コミュニケーションスキルの測定には次の尺度を用いた。
(1)フェイスシート:性別,雇用形態(正規・非正規),役職・職種(施設長・園長・副園長,主任・主査・主幹,担任,保育補助,給食担当,栄養士,看護師,保育職その他,事務等その他保育職以外),経験年数
(2)GHQ12(中川・大坊,2013):12項目4件法
(3)保育士間のコミュニケーションスキル(菊池,1998および日向野他,2016から作成):41項目5件法
(4)コミュニケーションの基礎スキル尺度(ENDE2改訂版;小川・磯,2008):15項目5件法
 結果
 役職・職種ごとの基礎統計量をTable1に示す。非保育職の内訳は,給食担当(170名),栄養士(11名),看護師(19名),事務等その他(9名)であった。これらの役職・職種を要因として,GHQ12得点,保育者間のコミュニケーション尺度,コミュニケーションの基礎スキル尺度の各因子得点について一要因分散分析を行った結果,全ての変数で役職・職種の要因の効果が有意であった(GHQ12F(4,2589)=15.57;調整F(4,2569)=79.07;親和F(4,2624)=23.45;受容F(4,2629)=11.52;解読F(4,2633)=4.27;統制F(4,2643)=4.09;記号化F(4,2636)=4.21,全てp<.01)。それぞれの多重比較の結果を次に示す。
メンタルヘルス:主任・主査・主幹(以下,主任)・担任は,保育補助等(以下,補助/t(2589)=5.16;t(2589)=6.35,ともにp<.01)・非保育職(以下,非保育/t(2589)=4.50;t(2589)=5.23,ともにp<.01)に比べ得点が高かった。また園長・副園長・施設長(以下,園長)は補助に比べ得点が高かった(t(2589)=2.68,p<.05)。
保育者間のコミュニケーションスキル:調整因子得点で,園長はその他に比べ得点が高かった(主任t(2569)=6.70;担任t(2569)=16.06;補助t(2569)=12.70;非保育t(2569)=7.53,全てp<.01)。また,主任は担任・補助に比べ得点が高かった(t(2569)=9.18;t(2569)=-5.14;t(2569)=6.37;t(2569)=-3.53,全てp<.01)。親和因子得点で,園長・主任は担任(t(2624)=6.79;t(2624)=3.77,ともにp<.01)・補助(t (2624)=6.09;t(2624)=3.40,ともにp<.01)・非保育(t(2624)=8.77;t(2624)=6.68,ともにp<.01)に比べ得点が高く,園長は主任よりも高かった(t(2624)=2.92,p<.01)。また,担任・補助は非保育に比べ高かった(t(2624)=4.91;t(2624)=4.04,ともにp<.01)。受容因子得点で,園長はその他に比べ得点が高く(主任t(2629)=4.32;担任t (2629)=5.67;補助t(2629)=4.38;非保育職t(2629)=6.46,全てp<.01),主任・担任・補助は非保育に比べ高かった(t(2629)=2.87;t(2629)=3.00;t(2629)=3.69全てp<.05)。
コミュニケーションの基礎スキル:解読因子得点で,園長,主任は担任に比べ得点が高かった(t(2633)=3.04;t(2633)=3.11,ともにp<.05)。統制因子得点で,補助は担任・非保育に比べ得点が高かった(t(2643)=-3.40,p<.01; t(2643)=2.82,p<.05)。記号因子得点で,園長は担任に比べ得点が高かった(t(2636)=3.09,p<.05)。
 考察
 メンタルヘルスについて,主任・主査・主幹と担任の精神的健康度は,保育補助等や非保育職に比べ低いことが明らかとなった。コミュニケーションのスキルについて,担任から主任・主査・主幹,園長・副園長・施設長と役職が上がるほど,保育者同士のものに加えて基礎スキルも高くなることが示された。また,保育補助・その他保育職は,担任および非保育職に比べて感情をコントロールする統制スキルが高いことが明らかとなった。
 主要な引用文献
森本美佐・林悠子・東村知子(2013). 新人保育者の早期離職に関する実態調査 奈良学園大学紀要 44, 101-109.
(本研究は,科研費18K18672の補助を受けた。)

キーワード
保育の場で働く人々/メンタルヘルス/役割


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