発表

1D-084

職場における心理的居場所感が組織コミットメントに与える影響

[責任発表者] 向日 恒喜:1
1:中京大学

1. 目的
(1) 職場における心理的居場所感
 心理的居場所感(以下「居場所感」と略す」は主に心理学の領域において研究が進められ,則定(2016)は,居場所感を「心のよりどころとなる関係性,および,安心感があり,ありのままの自分を受容される場があるとの感情」(則定, 2016, p.36)と定義している。そして青少年へのアンケート調査から,自分らしくいられる感覚である「本来感」,人の役に立っている感覚である「役割感」,人に受け入れられている感覚である「被受容感」,安心する感覚である「安心感」の4つの因子を明らかにした。さらに居場所感が抑うつ感の防御要因になることや,レジリエンスを高めることなどを明らかにした。
 一方,職場の居場所感に関する研究は中村・岡田(2016)の研究のみしかみられないが,この研究では,企業従業員へのアンケート調査から,「役割感」,「安心感」,「本来感」の因子を抽出したとともに,居場所感の規定要因を明らかにした。しかしながら,これらの居場所感がどのような影響を与えるかは明らかにされていない。
(2) 組織コミットメント
 組織コミットメントは「個人の組織への帰属意識」(高木, 2003, p.128)と定義される。このコミットメントは多次元的に捉えられることが多く,例えばAllen and Meyer(1990)は,組織への情緒的なつながりに基づく「感情的要素」,組織を辞める際のコストの知覚に基づく「存続的要素」,組織にとどまることへの義務感に基づく「規範的要素」に分けている。また,高木他(1997)は日本人を対象に検討し,感情的要素を組織への愛着に基づく「愛着要素」と,組織への一体感や同一視に基づく「内在化要素」に分けている。そして,存続的要素が従業員のモチベーションや行動にネガティブな影響を,内在化要素がポジティブな影響を与えることが示されている(高木, 2003)。さらに,職場での同僚との人間関係が愛着要素を高め,存続的要素を低めること,また上司との人間関係が内在化要素と愛着要素を高めることが明らかにされている(高木, 2003)。
(3) 目的
 上記の通り,組織コミットメントは職場における人間関係の影響を受けている。居場所の概念は,人間関係の中での「社会的居場所」とプライベートな「個人的居場所」に分けられるが(e.g., 中藤, 2018),職場での居場所感は関係の中に組み込まれた居場所感であることから,組織コミットメントに影響を与えている可能性が考えられる。しかし居場所感と組織コミットメントとの関係を検討した研究はみられないことから,本研究では職場における居場所感が組織コミットメントに与える影響について検討する。
2. 方法
(1) 調査対象者と調査方法
 調査はネットリサーチ業者に依頼し,従業員10名以上の株式会社の従業員(契約社員,パートを含む)で,直前の1か月の1週あたりの平均労働時間が30時間を越えている20代から50代の人を調査対象とした。調査時期は2019年3月で,650名からアンケートを回収し,データクリーニングの結果,581名分のデータを用いることとした。サンプルの内訳は,性別は男性(63%),年齢は40代と50代(72%),業種は製造業とサービス業(56%)が多くなっている。
(2) 調査項目と分析方法
 職場における居場所感に関する項目は,中村・岡田(2016)の尺度を一部修正したものを(向日, 2019),また,組織コミットメントは高木他(1997)のものを正木・村本(2015)が改変したものを用いる。これらはすべて「そう思う(5点)」から「そう思わない(1点)」の5件法となっている。
 居場所感の項目を因子分析し,「役割感」,「安心感」,「本来感」の因子が抽出され,組織コミットメントの項目を因子分析し,「内在化要素」,「愛着要素」,「存続的要素」の因子が抽出された。それぞれの因子に含まれる項目の平均値を各尺度得点とした。
これら居場所の3つの尺度を説明変数,組織コミットメントの3つの尺度を目的変数として重回帰分析を行う。また性別(男性:0,女性:1)と年齢をコントロール変数として加える。
3. 結果と考察
 重回帰分析の結果をTable 1に示す。内在化要素へは,居場所の3つの変数がともに正の有意な影響を与えているが,安心感の影響が最も強く,続けて役割感,本来感の順となっている。また,愛着要素へは安心感のみが強い正の有意な影響を与えている。存続的要素へは役割感のみが正の有意な影響を与えている。
 先行研究(高木, 2003)で内在化要素は従業員へポジティブな影響を与えているが,その内在化要素は居場所感の各要素の影響を受けている。つまり,従業員への内在化要素を高めて従業員のポジティブな行動を引き出すためには,居場所感の各要素を高めることを意識する必要がある。

キーワード
心理的居場所感/組織コミットメント


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