発表

1C-081

地震の確率的長期予測に対する人々の怖さや判断の実験的検討

[責任発表者] 広田 すみれ:1
[連名発表者・登壇者] スローマン スティーブン#:2
1:東京都市大学, 2:ブラウン大学

1.はじめに
 日本では地震の確率的長期予測が毎年発表されているが,これには震度,再現期間,確率という3要素があり,判断を困難にしている。Hirota & Oki(2016)はこの長期予測に対して人々がどのレベルで怖くて対処が必要だと感じるかを確率及び再現期間を調整する極限法で測定した結果,確率,再現期間とも,前者は減少,後者は長期化に従い怖さの程度が小さくなることを明らかにした。ただ再現期間には幾つか閾値があるが,確率では50%を除くとそれが見られず,また系列(上昇/下降)で判断が大きく異なり,「危険でない」という判断が非常に難しいことが明らかになった。
 しかし,極限法による測定は,刺激強度を一方向で増減させるという手法による影響が考えられる。そこで本研究では確率・再現期間・強度をランダムに提示した時の判断を実験的に検討した。なお学生を対象とした予備実験では,個人により確率や再現期間の判断の閾値が異なると共に,過去に経験した最も大きな地震の影響が見られた。そこで本研究では過去大地震が少なかった岡山県を対照群とし,過去に経験した地震震度の判断への影響も検討することとした。
2.方法
 Web調査による。提示した長期予測はJ-SHISの用いている再現期間や確率の区切りに従い,回答者にもし自宅についてこの予測が出た場合それをどう判断するか尋ねた。予測は確率では(3-6%,6-26%,26-100%),再現期間は(30分後,10年後,30年後),震度は(震度5弱,震度5強,震度6弱,震度6強)の組み合わせ計36通りをランダムに提示し,それに対して1)怖さの程度,2)頻度の認知,3)情報の信頼性の程度,4)対処に意味があるか,5)ダメージの大きさ,の5つを各10段階で評価してもらった。また過去に自分または家族が経験した最も大きな地震や経験した震度の大きさを尋ねると共に,ニューメラシーについても測定した。調査はクロス・マーケティング社に委託して2019年2月中旬に実施した。回答者は首都圏居住の20~60代の5層の男女合計320名,及び岡山県居住の同属性の男女合計80名の計400名である。
3.結果
 図1,2は各居住地での,提示された予測値に対する怖さの程度の平均である。予備実験とは異なり,震度や確率の増加や,再現期間の短期化で怖さは上がり,論理的に整合性があった。居住地による違いでは,岡山の居住者の場合でも大よそ整合性の取れた判断はされているものの一部で首都圏よりむしろより怖いという判断がされる場合も散見された。
 表1は両居住地を通した全体の怖さの評価の平均値を目的変数とし,震度,確率,期間を説明変数とした数量化1類の結果である。カテゴリーウェイトは震度5強,6強以外は有意であった。レンジから見ると,影響の大きさは確率>期間>震度であるが,ただし確率は26-100%のカテゴリーウェイトが0.91と大きいことが強く働いている点が注目され,一方で震度では詳細な違いでは影響がなく,5強と6弱の間に閾値がある可能性がある。
4.考察
 今回の結果から,極限法で得られた結果は一定の信頼性があることが明らかになった。数量化1類の結果では意外なことに要因としては確率が一番影響していると読み取れるが,これは一番上のカテゴリーに100%が含まれていることの影響が考えられる。また震度では5強と6弱の間に,期間では10年と30年の間に閾値がある可能性がある。ただし,地域や個人による判断の差も推測されることから,今後は地域別や,個人を判断のタイプによりクラスタリングしたうえで複数の判断のモデルを検討する予定である。
5.引用文献
Hirota, S. & Oki, S. (2016). Measuring thresholds of fear and assessing the effectiveness of color utilization in communicating probabilistic earthquake forecasting with the method of limits. Proceedings of 31th International Conference of Psychology.

キーワード
地震長期予測/確率/コミュニケーション


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